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反復する世界
リンダリンダ「ねえ、TRAIN-TRAIN」
TRAIN-TRAIN「おやおやどうしたんだい、リンダリンダ」
リンダリンダ「うちらの名前がデュラン・デュランみたいなの、なぁぜなぁぜ?」
TRAIN-TRAIN「しっ。花*花とJuice=Juiceが聞き耳を立ててるぞ」
リンダリンダ「扉の向こうにハンバート・ハンバートもいるわ。ナボコフのほうの」
TRAIN-TRAIN「きっとパンダのせいだ」
リンダリンダ「シンシン?」
TRAIN-TRAIN「全パンダだよ。つまりパンダ全般だ。ちなみに、ニシローランドゴリラの学名はGorilla gorilla gorillaだぜ」
リンダリンダ「なにそれ怖い。アブサロム、アブサロム! フォークナーのほうの」
TRAIN-TRAIN「それ以外あるのかよ。そしておまじないみたいに言うな。飛んでけ飛んでけじゃないんだよ。どのみち世界は、HUNTER×HUNTER、反復し続けているのだ」
リンダリンダ「は? ところで、タンタンに出てくる二人組の瓜二つの刑事知ってる?」
TRAIN-TRAIN「あれはデュポン『と』デュポンだよ」
リンダリンダ「彼らを見分ける特徴はたったひとつ。口髭の先が開いているほうがデュポン。残りのひとりがデュポンよ」
TRAIN-TRAIN「デュポンのほうは口髭にイランイランの精油をつけてるんだろ」
リンダリンダ「つけてねーし。だいたいどっちのデュポンだよ!」
TRAIN-TRAIN「おまえがまぎらわしたんだよ」
リンダリンダ「ところで村上春樹の」
TRAIN-TRAIN「なんだよ、ダンス・ダンス・ダンスか?」
リンダリンダ「『日々移動する腎臓のかたちをした石』っていう短編」
TRAIN-TRAIN「それがどうした」
リンダリンダ「何かに似てない?」
TRAIN-TRAIN「伊井直行の『本当の名前を捜しつづける彫刻の話』のことかな?」
リンダリンダ「そうそうそれそれ!」
TRAIN-TRAIN「それかよ。何も反復してないし。趣旨違うし」
リンダリンダ「でも、ドンドンぴしゃぴしゃ」
TRAIN-TRAIN「ドンピシャね。すげぇな逆に」
リンダリンダ「もっともっと!」
TRAIN-TRAIN「いやもうないわ。無理無理。思いつきません」
リンダリンダ「それを言うなら」
TRAIN-TRAIN「何」
リンダリンダ「やれやれ、でしょ」
TRAIN-TRAIN「あ、うん、あ、あの、そういやあ、こんどバイト決まったんだわ。バイトバイト」
リンダリンダ「そこはバイトでいいのでは? で、どこどこ?」
TRAIN-TRAIN「え、土間土間だけど」
リンダリンダ「なぁんだあ」
TRAIN-TRAIN「不服なのかよ」
リンダリンダ「タパスタパスかと思った」
TRAIN-TRAIN「&なのよ。入れてくれる? &を」
リンダリンダ「Francfrancかと思った⋯⋯」
TRAIN-TRAIN「そんな残念そうにしなくても⋯⋯」
リンダリンダ「あんたなんかマイムマイムよ」
TRAIN-TRAIN「なんなん?」
了☆了