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読書感想-BL小説-『寄せては返す波のように/六青みつみ』

こんにちは、falです。
今回は、六青みつみ先生の「寄せては返す波のように」(イラスト:藤たまき先生)の読了記録です。


前作「蒼い海に秘めた恋」の続編です。
スピンオフというより続編という印象なのでぜひこちらからお読みいただきたいです!

お察しの通り、ファンタジーであります!
ただ、完全な異世界というよりはこの世界の未来の姿なのかなと感じさせる描写が散りばめられています。

 四海暦しかいれき一二〇三年。
 陸地の九割以上が海に沈むという未曾有の大洪水から千二百年余がすぎた。
 人々は唯一残った大陸アストランと、その四方に建設された海底円蓋ドーム都市、そして世界中に点々と散らばる小さな島や辺境海底都市で新たな文明を築き、暮らしている。
 かつては星に船を飛ばし、人が人を造り、神をもしのぐと言われた科学技術は、その大部分が失われたものの、大洪水時代を生き延びた科学者や、世代を重ねるごとに出現する優れた研究者たちの不断の努力によって、少しづつだが回復しつつある。

少々文字数多くなりましたが、この世界設定を共有したく…!
ファンタジーやSFが好きな者としては、この舞台でBOYS  LOVEが繰り広げられるのかと思うと好きなものしか入ってない最高弁当いただきますという気分であります。
オラワクワクスッゾ!!

大洪水で沈んだ我々(おそらく)の文明を旧世界と呼び、研究対象としての歴史の距離感で語られるのが不思議な感覚でとても楽しかった。
わかるわかる、この同じ地球という星でかつては恐竜という生き物が暮らしていたとか、事実だって証明されてても想像できないもんね。

そしてそんな世界観の中、今回はアストラン研究所の所長エルリンク・クリシュナと清掃員として働くルースの話。

陸のエリート競走社会の中、研究所所長というトップの椅子に座るエリィは、前作でもかなり重要なポジションにいらっしゃいましたね。
前作のラストシーンでのエリィの行動の理由が今作で明らかになります。
エリィがなぜそんなことをしたのか、まさか読めるとは思っていなかったので大喜びでした。

だから人は誰かを愛するのか。怖れる必要もなく。

寂しさのあまり冷たく固まってしまっていた人が、寂しさごと受け止めてもらって温められて解けていく様子を見守るのはとても癒されるな。
ぎゅうぎゅうとなるような苦しさを伴うけれども。

ルースを見てると、海とか空とか、そういうでっけぇもんと相対した時の感情になります。
エルリンク・クリシュナ、頼んだぞ。
生きててよかったなって思う瞬間を一つでも多く味わえるようにしてください。


ファンタジー&BL好きの方はぜひ!


▼これよりネタバレあり



エルリンク・クリシュナ〜!
よかったな、アンタ、本当に…!
寂しさに喰われて愛を踏み躙って壊してしまった人よ…

ルースのことも無傷では愛せないのつらかった〜
ショアをあんなに傷つけて、その上ルースまでも…!と思ったけど、エリィも傷だらけだったのがルースにはわかっちゃったんだな。
(そしてショアにも)

寂しすぎて、自分の傷が痛すぎて、何にも見えていないエリィを愛おしく感じてしまったんだな。ルースの心では。

エリィにはほんと、ルースを一生愛してほしいし、世界で一番大事にしてほしい。
そうしてくれそうだからよかったけど!

ルースの記憶障害について、研究所の技術でなんとかしてしまうのかしらと思ったりしたけど、数時間の記憶で生きるルースのまま、生涯共に生きると誓っていたのよかったな。
自分のまるごとを受け止めてもらえるってのがどんなに幸福か、身をもって知ったからだと思うと感動しますね。
タイトルの意味を知ると胸が締めつけられる〜

ショアとグレイも好きだったから、前作とのリンクを感じる描写とか、彼らのその後が知れる描写があってたまらんかったな。

一番好きなシーンは、ルースが注意したのに、エリィがサンドウィッチをうまく食べられなくて真っ白の服を汚してしまった時、自分で大爆笑するシーンです。

末永く、幸せを分かち合いながら生きてください。

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