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今日の1冊 その5

さてさて再びマンガの回。なかなか沢山あるし、取り上げる部分も分割したので、紹介は(さらに)いくらでもできるようになっている………のだが、これもチョイスが意外と難しかったりする。 前回の「あさひなぐ」冒頭はなかなか評判高くて嬉しかったが、次となると…………

ここで「キングダム」とか「ゴールデンカムイ」ではあまりにどストレートすぎる。映画でさえ躊躇したというのに………と、ここで思い出したとてもいい作品がでてきた!タイムリーさもあるので紹介したい


今日の1冊はコチラ!


藤田和日郎
黒博物館ゴーストアンドレディ

こちら上下巻の表紙を並べたもの
2つで1つなものだと思うのであえてこちらにした


作者藤田和日郎は言わずと知れた少年漫画の大家(とか言われたくはないのだろうけど)。「うしおととら」「からくりサーカス」「月光条例」「双亡亭壊すべし」etc…とんでもなく熱い作品を届けてくれる、そんな漫画家だ。人によっては富士鷹ジュビロのほうがピンとくるかもしれないが……

島本和彦「吼えろペン」より
てかこんな風に書かれて平気な藤田先生の度量がすごい


ま、まあご本人は非常に温和で柔和な方だ


その藤田和日郎が青年誌に青年漫画を書く………これがまた珍しい。ご本人も少年漫画にこだわりがとても強いからだ。だが始まった黒博物館のシリーズは、どれもこれも大変に素晴らしいものばかり。今まで3作発表されたが、私はどれも大好きだ


ここはある程度のあらすじ(ネタバレ無し)を入れた方がいいだろう

黒博物館はロンドンヤード管理の、不可解な事件に関係する品物が揃えられている特別な博物館………そこに老紳士が訪問し、「〈灰色服の男〉のかち合い弾」を要望する。これはとある劇場の座席に落ちていた品で、そこにすむ幽霊の落し物とされたものだった

すると老紳士に隠れていたその幽霊「グレイ」が現れる。そしてかち合い弾に関連する、とある女性のことを語り始める………その名はフローレンス・ナイチンゲール。2人の波乱に満ちた物語が今!


もう最初から面白い。ナイチンゲールがどれだけの逆境の中で、どれだけの事をなし得たのか………日本人には馴染みが薄い実在の人物を使って、そしてそれをハラハラの冒険譚へと作り上げる手法は見事としかいいようがない。このロンドンでの世界観を作るために勉強した書籍の数々………作家や漫画家の勉強量は半端じゃない

こうした下支えがあってこそ、名作はできていくのだとつくづく感じる。さて、この作品は青年漫画としてひとつの完成系とも言えるだろう。ヤングジャンプの名作達とも違うし、その他の漫画とも違うが、だからこその良さがある(そういえばあさひなぐも青年漫画だった)


で、なぜこの作品なのか?ということだが………現在劇団四季によってミュージカルとなり、今四季劇場で公演中だからだ。漫画のミュージカル化、しかも藤田作品の、奥行ある物語の!となれば当然見に行くに決まってる


というわけでかなり前だが、四季劇場に行って観劇してきた。正直言って………

全私が泣いた!!

あえてポスター
中身を知りたい方は是非ネットで検索を
さらに興味ある関東圏の方は観劇してもらいたい


本格的ミュージカルは初めてだったのだが、あまりに素晴らしく、あまりに美しかった。そして中身を知っていたにもかかわらず、クライマックスでは泣きっぱなしだ………本当に見に行ってよかった………


もちろん史実上のフローレンス・ナイチンゲールに様々な捉え方があることは理解している。ただただ美徳だけで語られる人物ではないのも分かる。が、ここはそんな野暮なことはいらない。物語のフローは輝いている。それと共にいるグレイもまた魅力たっぷりだ。それだけでいい


興味を持った方は、まずはKindleでもいいので漫画を手に取って欲しい。そこはすっ飛ばしてミュージカル見たい!という方はすぐさま四季劇場の予約をとって欲しい。すでに結構埋まってるので、こちらの場合はお早めに!!

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