日本シリーズを振り返って
おはおはワンワンおはワンワン、シロちゃんです!ワワワワ~ ♪
はい、ということで、初めてnoteの記事を書いてみました。それも、デュエプレじゃなくて野球で笑。
私は、デュエプレ界屈指の野球好きだと自負しています。ハンドルネームを「腹立海苔(はらたつのり)」にするぐらいですね!
そんな著者の実績がこちら!
・2006年より巨人ファン一筋15年目
・小5~中3まで野球部、捕手以外のすべてのポジションを経験
・巨人戦は暇さえあれば観戦
・半年に1回甲子園(高校野球)旅行、高校野球、プロ野球を中心に多数生観戦
などですね(笑)。プレーは上手な方ではありませんでしたが、これまでの人生で野球の試合を数多く見てきた自負はあります。
そんな野球大好きなシロちゃんが、巨人ファン目線で2020年の日本シリーズを振り返っていろいろ書いていきたいと思います!
※非常に長くなるため、語尾に「しん」は付けずに普通に書きます。ご了承ください。
■両チームの戦力分析
2020年日本シリーズは、2年連続で「巨人ーソフトバンク」のマッチアップとなった。
巨人は、去年よりも攻守ともに層の厚さを感じさせるゲームが多く、最終的には2位と7.5ゲーム差をつけてリーグ優勝。一方のソフトバンクも抜群の投手力を中心に、後半戦は12連勝を記録するなど圧倒的な強さを誇り、2位と14ゲーム差をつけて独走優勝。クライマックスシリーズも無傷の2連勝で危なげなく突破した。
(画像はスポーツナビより)
両チームともに他球団とは圧倒的な差をつけ、満を持しての日本シリーズ出場となった。本章では両チームの戦力を詳しく分析する。
①得点力
・巨人
今年の巨人は、何といっても上位から下位まで切れ目のない打線が持ち味である。
まずは、1番セカンド吉川尚輝、2番ライト松原聖弥の1,2番コンビの台頭だ。もともとポテンシャルは高かったものの、怪我が多く1年間を通して活躍することができていなかった吉川と、足の速さがウリだったもののそれを活かす打撃力、出塁率が課題であった松原。この2人が2020年それぞれの課題を克服し、それなりに高い出塁率を残したおかげで、得点効率が大きく向上した。
去年はセカンドランナーからワンヒットでホームに帰ってこれない、いわゆる各駅停車の選手が多かったため、このように足を活かせる選手が台頭したことはチームにとって大きくプラスに働いた。
1・2番コンビの後は3番ショート坂本・4番サード岡本・5番センター丸という球界を代表する選手で構成されたクリーンナップが控える。ここは説明不要であろう。
そして下位打線に入るが、この下位打線を支えているのがキャッチャーの大城とファーストの中島である。
大城は、もともと打撃力には定評があったが、捕手能力に不安があり一塁手での起用が多い選手であった。特に2019年の盗塁阻止率は.172(基準は約.300)と、同じ年の小林誠司(.419)に比べると、かなり捕手能力には不安があったことが見て取れる。
しかし、2020年は盗塁阻止率(.340)を記録するなど、捕手能力が向上。もちろん、盗塁阻止率だけで捕手能力を測ることはできないが、今年はワンバウンドを後ろにそらす回数も減っており、捕逸数も2と非常に少なかったことからも、十分捕手を任せられる守備力がついたと見て取れる。
打力の高い大城を捕手で起用することができるようになったことで、下位打線の厚みが増した。
中島は、去年ジャイアンツに加入したものの、打率.148と、全く戦力にならなかった。しかし、2020年から巨人の野手総合コーチに就任した、元横浜の石井琢朗の指導を受けて完全復活。力感のないコンパクトなフォームに修正したことで、2020年はファーストのレギュラーに定着し、100試合に出場して打率.297と、下位打線にしては十分すぎる成績を残し、去年引退した阿部慎之助の穴を埋めた。
主にこの2人の台頭により、上位打線から下位打線まで切れ目のない打線が実現した。中軸の坂本・丸が揃って絶不調だったときにも勝利を積み重ねることができたのは、まさに打線の層の厚さによるものであろう。
その他は、今期トレードで楽天から加入した右の大砲ウィーラー、コンタクト率が非常に高い左の巧打者亀井、対左の代打の切り札石川慎吾、去年よりも確実性を上げてきた若林、田中俊太、代走の切り札で、リーグ2位の23盗塁を記録した増田大輝など、役者が揃う。
得点力に関しては、去年よりも1段階向上し、高いレベルに達しているといえる。
・ソフトバンク
続いてはソフトバンク。こちらも1番から9番まで全く気が抜けない。ファン球団である巨人ほど詳しくは見れていないため、分析内容が薄くなってしまうのはご理解願いたい。
今年のソフトバンク打線を語るうえで外せないのが、1番セカンド(またはショート)に定着した周東の存在である。去年から、足の速さに関してはずば抜けていたが、打撃力が課題であり代走の切り札としての起用が多かった。
しかし、今年は打率.270を記録するなど課題だった打力が向上し、彼を1番に置けるようになった。その結果、13試合連続盗塁を含む50盗塁を記録。さらに盗塁成功率は90%弱を誇る。つまり、出塁を許すことがそのまま得点に直結するといっても過言ではない選手であり、これほどリードオフマンに適した選手はなかなかいない。
そして、3番センターの柳田。去年は怪我もあり満足な成績を残せなかったが、今年は打率.342 29本86打点と完全復活。投高打低傾向にあるパ・リーグでこれだけの成績を残せる選手はただものではない。どこに投げてもフルスイングでスタンドまでもっていってしまうような選手である。
その他は、毎シーズン安定した打率を残す左の巧打者の中村晃、ポストシーズンの打率が非常に高い4番レフトのグラシアル、今年は満足な成績ではなかったものの球界屈指のパワーを誇る6番DHデスパイネ、怪我で離脱している今宮の穴を埋める牧原、川島、明石、打率は高くないが2桁本塁打を記録しパンチ力のある8番サード松田(13本塁打)や9番キャッチャー甲斐(11本塁打)など、こちらも上位から下位まで全く気の抜けない打線となっている。
得点力に関しては、お互い高いレベルにあり拮抗していると、評価する。
②投手力・守備力
まずは投手力。
・巨人
巨人の先発投手は、開幕から13連勝を含む14勝2敗、防御率1.97という申し分のない成績を残したエース菅野が大黒柱。常時150キロのストレート、
プロ野球100人分の1位企画の変化球部門で何度もランクインしているスライダー、さらに洗練された抜群のコントロールなど、全てにおいて完成度が高い。
2番手以降には、シーズン後半は打ち込まれたものの、高卒2年目ながら9勝を記録した右の本格派戸郷、緩いカーブやチェンジアップを駆使する、緩急を活かした投球が持ち味の技巧派左腕今村、速球が頻繁に150キロ超えを記録しメジャー水準のボールを投げ込む右の本格派サンチェス、こちらもキレのあるストレートが武器で先日プロ初完封を果たした右の本格派畠が控える。
しかし、2番手以降の投手はまずまずの数字を残しているものの、安定した投球ができていないのが現状である。
戸郷は独特の腕の振りからキレのあるボールを投げ込むが、コントロールがアバウトな部分がある。さらに、初めて1年間フル回転したこともあり、シーズン後半は疲れが垣間見える場面も多くあった。
今村は、ピンチに非常に強いものの、先頭バッターへの被出塁率が高く、その結果球数が多くなり長いイニングを稼げないことが多い。
サンチェスは、投げてるボール自体は一級品であるが、コントロールを乱してしまう場面が多くみられるため、安定して計算できる投手であるとは言えない。
畠は、調子がいい時はどの球団も打てないようなエース級のピッチングをするが、あっさりと打ち込まれ、早い段階でKOされてしまう試合も多い。
このように、ポテンシャルを持っているものの、計算できる投手が少ないといえる。
巨人の中継ぎ投手は、セットアッパーとして37試合に登板し防御率1.00の好成績を残した左の中川、クローザーで160キロ近い速球を投げ込むデラロサ、楽天からトレードで加入し、左右問わずフル回転で活躍した、左のサイドスローの高梨が軸となる。次点で、今季46試合に登板して防御率2点台の右の本格派鍵谷、右打者の内角に食い込むシュートが持ち味のベテラン、大竹、左の変則派で与四死球率が高いものの非常に低い被打率を誇る大江、先発も中継ぎもこなせる左の技巧派田口が控える。
しかし、ここにも不安要素が多い。
中川はキレのあるスライダーを中心に安定感は申し分ないが、シーズン後半は怪我をしており、実戦からかなり遠ざかっている状態である。
デラロサはクローザーとしてはそこまでいい数字ではない防御率2.56。与四死球率が高く、安心して見てられるタイプではない。
鍵谷はストレートが非常にいいが、これといった決め球に欠ける。
田口も、頼みの綱のコントロールが悪い時は打ち込まれるシーンが目立つ。
大江は、非常に打ちづらいフォームをしているのはアピールポイントだが、いかんせん与四死球率が高い。
今年の日本シリーズにおいて、比較的安心して見られるのは高梨と大竹ぐらいだろうか。先発投手にしても中継ぎ投手にしても、不安要素が多い。
・ソフトバンク
続いて、ソフトバンクの先発投手は非常に安定しているといえる。
まずは、最多勝・最優秀防御率・最多奪三振のタイトルを獲得したエース千賀。常時155キロのストレートと、「お化けフォーク」で有名な切れ味鋭いフォークを軸とした投球をする。これだけ豪快な先発投手はセ・リーグにはいない。
2番手には最多勝・最高勝率のタイトルを獲得した本格派右腕石川柊太が挙がる。球種はそれほど多くないが、何といってもパワーカーブ。130キロ弱と、カーブにしては非常に速いボールで、落差も大きく、初見でこのボールを見極めるのは難しいだろう。
この後には、速球とキレの良いチェンジアップを武器に奪三振率二桁を記録する、サウスポーのムーア、出所が見づらく、独特の軌道のボールを投げるベテランの技巧派左腕和田、ナックルカーブを武器にこちらも二桁の奪三振率を誇る左腕笠谷などが控える。
今季の開幕投手で、防御率2.34、9勝をマークした東浜を欠いても、魅力的な先発投手が揃っているといえる。
ソフトバンクの中継ぎ投手も非常に人材が豊富である。
筆頭はセットアッパーのモイネロ。球速が速く、落差が非常に大きいカーブを武器とし、奪三振率は驚異の14.44。西武、楽天以外にはほぼ打たれておらず、攻略は至難の業である。
クローザーの森唯斗は、クローザーの中では手が付けやすい部類にはなるが、常時150キロ強のキレのあるスライダー気味のストレート(まっスラ)を軸に、安定している。
その他、常時150キロ前後のボールを投げ込む本格派リリーフだけでも
右腕では松本裕樹、杉山、椎野、泉。左腕では川原が控える。変則派では、右のサイドスローで鋭く曲がるスライダーを武器とするルーキーの津森、対左専門の左の技巧派サイドスロー嘉弥真、去年は先発として活躍した右の速球派アンダースローの高橋礼など、非常に層が厚い。
去年大活躍した甲斐野、岩嵜、高橋純平などが思うような結果を残せなかったなかでも、これだけの投手陣が控えている。
投手陣に関しては先発・リリーフ共に非常に高いレベルにあり、これだけの投手力を抱えたチームは、長いプロ野球観戦歴のなかでも見たことがない。
・守備力
続いて守備力である。
巨人は、12球団で最小の失策数43を誇る。3試合に1個程度しかエラーしない計算であり、非常に安定しているといえる。去年の日本シリーズでは守備のミスが重なってしまったことがあり、この1年間で高い意識を持って守備練習を重ねていたことが伺える。特に、サード岡本、キャッチャー大城の守備力の向上には目を見張るものがある。
ソフトバンクも失策数57とリーグ2位の数字。こちらも非常に守備が安定している。特にキャッチャーの甲斐。「甲斐キャノン」で有名な強肩が持ち味であり、巨人は機動力を生かした攻撃がかなり難しくなるだろう。また、全試合DH制になったため、たびたび問題となっていたデスパイネを守備に就かせることの不安も解消される。
両チームともに、守備力は高いレベルにある。
長くなってしまったが、ここまでが両チームの戦力分析である。まとめると
得点力=互角
投手力=先発・リリーフ共にソフトバンクが大きく上回る
守備力=互角
という分析となった。
■日本シリーズの展望
日本シリーズの日程・使用球場、予想先発投手(著者の予想)は以下の通りである。
4戦先取。
11/21(土) 第一戦 京セラドーム大阪(ホーム=巨人)
予想先発 (巨) 菅野 (ソ)千賀
11/22(日) 第二戦 京セラドーム大阪(ホーム=巨人)
予想先発 (巨) 今村 (ソ)石川柊太
11/23(月) 移動日
11/24(火) 第三戦 福岡ペイペイドーム(ホーム=ソフトバンク)
予想先発 (巨) サンチェス (ソ)ムーア
11/25(水) 第四戦 福岡ペイペイドーム(ホーム=ソフトバンク)
予想先発 (巨) 戸郷 (ソ)和田
11/26(木) 第五戦 福岡ペイペイドーム(ホーム=ソフトバンク)
予想先発 (巨) 畠 (ソ)笠谷
11/27(金) 移動日
11/28(土) 第六戦 京セラドーム大阪(ホーム=巨人)
予想先発 (巨) 菅野 (ソ)千賀
11/29(日) 第七戦 京セラドーム大阪(ホーム=巨人)
予想先発 (巨) 今村 (ソ)石川柊太
前章の戦力分析でも述べたが、投手力は圧倒的にソフトバンクが上回っている。しかし、巨人とソフトバンクで投手力にそれほど差がつかない場合がある。エース菅野が先発するときだ。
菅野レベルの好投手になると、どの球団も攻略することは難しく、しかもある程度長いイニングを投げることも期待できるため、リリーフの投手層の差がゲームに反映されにくくなる。巨人が日本一になるためには、投手力の差が縮まる菅野先発時に2勝することが必須になると考える。
逆に、菅野以外が先発するときは、投手力でかなりのハンデを背負って戦うことになる。菅野で2勝することができないと、投手力にハンデを背負った状態でソフトバンク相手に勝ち越す必要がある。菅野以外の投手もポテンシャルは高いため、不可能ではないが、かなり厳しいだろう。
巨人側としては、ソフトバンクの投手陣から大量得点を獲得することは極めて難しいため、何とかロースコアのゲームに持ち込みたい。リリーフ投手の層の薄さを考えると、先発投手が長いイニングを投げることが重要なポイントになるだろう。
攻撃面では、ソフトバンクの投手陣は何かしら強力な武器を持っている投手が多いため、全ての球種・コースをケアすることが難しい。捨てる球・狙い球の明確化や、チームとしての徹底事項の作成など、工夫が必要である。
それでも、打つだけでは得点が望めない。ソフトバンクの捕手が甲斐であることを考えると、単独スチールは難しいが、ランエンドヒットなどで何とか機動力を使った攻撃をしていきたい。場合によっては送りバントやスクイズも考えられるだろう。難しい相手であるが、3~5点程度の得点を目指したい。
ソフトバンク側としては、投手力はかなり計算できるといえる。一人が崩れても、好投手はいくらでも控えている。そのため、ソフトバンクベンチが継投ミスをしない限りは大量失点することはまずないだろう。
攻撃面では周東がキーマンである。彼が先頭で出塁すればかなりの確率で得点に直結するため、特に初回の周東の打席は全試合において重要なポイントになる。
また、二遊間の選手以外は全員一発が期待できるパワーを持っている。ロースコアゲームにおいては、一発で勝負が決まってしまう場面も少なくない。甘く入った失投を積極的に狙っていきたい。
全体の展望としては、やはり、投手力が計算できるのか、計算できないのかの差は非常に大きいため、かなりの確率でソフトバンクが日本シリーズを制すると予想される。私は4勝1敗でソフトバンクと予想した。
しかし、巨人側は菅野で2勝することができれば可能性は十分にある。菅野以外の先発投手も、調子がいい時は非常にハイレベルなピッチングが期待できるため、巨人が制する可能性はあると考える。さて、次章からは第1戦から順に、1試合ずつ詳しく振り返っていく。
■第一戦
・この試合の位置づけ・ポイント
さて、いよいよ2020年の日本シリーズが開幕した。先発投手は予想されていた通り、巨人が菅野、ソフトバンクは千賀とエース対決となった。
巨人は、前章でも述べたが、菅野先発のときは絶対に落としてはいけないので、何としてでもこの初戦を取りたい。一方のソフトバンクにとってもその重要性は変わらない。菅野先発の時に勝利して初戦を取ることができれば日本一にぐっと近づく。著者はこの第一戦を、日本シリーズの行方を占う超重要な一戦と位置付ける。
この試合のポイントは先制点だろう。両投手とも球界を代表する好投手であるため、序盤から一点が非常に重い展開になることが予想される。そのため、このようなゲームでは普通以上に先制点を取った方が主導権を握り、優位にゲームを進めることができる。1点が重い展開で特に重要なのが先頭打者の出塁である。一般に、先頭打者が出塁するかしないかで、4~5倍の得点確率の差が生じると言われている。ハイレベルな投手を打ち崩すにあたっては、ヒットが続いて得点となる可能性は非常に低く、アウトカウントが少ないうちに出塁をすることが重要である。
・スターティングメンバ―
両チームのスタメンは以下の通りである。
先攻:ソフトバンク
1 (二) 周東 ▲ .270 1本27点50盗、出塁率.325
2 (一) 中村晃 ▲ .271 6本50点
3 (中) 柳田 ▲ .342 29本86点
4 (左) グラシアル .277 10本35点
5 (右) 栗原 ▲ .243 17本73点、得点圏.333
6 (指) デスパイネ .224 6本12点
7 (遊) 牧原 ▲ .241 1本8点 出塁率.256
8 (三) 松田 .228 13本46点
9 (捕) 甲斐 .211 11本33点
投手:千賀 11勝6敗 防2.16 149奪三振 最多勝、最優秀防御率、最多奪三振
後攻:巨人
1 (二) 吉川尚 ▲ .274 8本46点11盗
2 (右) 松原 ▲ .263 3本19点12盗
3 (遊) 坂本 .289 19本65点
4 (三) 岡本 .275 31本97点 本塁打王・打点王
5 (中) 丸 ▲ .284 27本77点
6 (指) 亀井 ▲ .255 2本17点得点圏.448
7 (一) 中島 .297 7本29点
8 (左) ウィーラー .247 12本36点
9 (捕) 大城 ▲ .270 9本41点
投手:菅野 14勝2敗 防1.97 最多勝、最高勝率
※▲は左打者。
両チームともに、シーズン中と大きな変化がないスタメン起用となった。
巨人のリリーフには、シーズン中先発として活躍した戸郷が待機している。
・ハイライト
ここでは、第一戦をハイライト形式で簡単に振り返る。
1回表(ソ)
先頭の周東を遊直、3番柳田を空振り三振に抑えて3者凡退。日本シリーズ初戦、巨人はこれ以上ないスタートを切る。(巨0-0ソ)
1回裏(巨)
ソフトバンクエース千賀も、1死から2番松原に四球を出したものの、こちらも初回を無得点に抑える。(巨0-0ソ)
2回表(ソ)
先頭の4番グラシアルがしぶとく1,2塁間に運びヒット。無死1塁とし、5番栗原がカウント2-0(2ボールノーストライク)から、甘く入ったスライダーを捉え、ライトスタンドへの先制ツーランホームラン。ソフトバンクには非常に大きい、巨人には非常に重い2点が入る。(巨0-2ソ)
3回裏(巨)
先頭の8番ウィーラーが、フルカウントから甘く入ったカットボールを捉え、チーム初ヒットとなるレフト前ヒット。無死一塁。9番大城がフルカウントから必死に食らいつき12球投げさせるも、最後はファーストゴロに倒れ1死2塁。後続を抑えここも無得点。(巨0-2ソ)
4回表(ソ)
2死後、今日先制ホームランの5番栗原が、カウント3-1からインコースの厳しいストレートを捉え、ライト線への2ベースヒット。続く6番デスパイネが三遊間を破るゴロを放ち、3塁コーチャーがギャンブル気味に腕を回すも、ここはレフトウィーラーの好返球で本塁タッチアウト。得点を許さない。
(巨0-2ソ)
4回裏(巨)
先頭の3番坂本に四球。続く4番岡本がフルカウントからフォークを見極め四球を選ぶ。無死1,2塁で5番の丸が、カウント2-0からアウトコース低めのボール球のストレートを打って、ショートゴロダブルプレー。後続が打ち取られ、ここもチャンス活かせず。(巨0-2ソ)
6回表(ソ)
先頭の周東を二ゴロに打ち取る。2死後、3番柳田は死球。その後4番グラシアルがしぶとくライト前に落とし、2死1,3塁。ここでバッターは今日当たっている5番栗原。カウント2-1から、甘く入った抜けたフォークボールを捉え、左中間を破る2点タイムリー2ベース。栗原は3打数3安打4打点の大暴れ。(巨0-4ソ)
7回表(ソ)
巨人はピッチャーを菅野から、シーズン中先発で活躍した戸郷に交代。しっかりと無得点に抑える。(巨0-4ソ)
8回表(ソ)
巨人は3人目の高橋優貴をマウンドへ。先頭周東への10球目に四球を与え、ノーアウト1塁。2番中村のとき、カウント2-2から盗塁成功。無死2塁とする。その後中村が、アウトローのボール球のスライダーにうまく合わせてレフト前へ。周東が生還し、ダメ押しの5点目が入る。(巨0-5ソ)。柳田、デスパイネを抑えたあと、今日大当たりの5番栗原に四球を与えてしまう。後続を抑え、なんとか1点で切り抜ける。
8回裏(巨)
ソフトバンクは千賀に代わって2番手にセットアッパーのモイネロを投入。危なげなく無失点に抑える。(巨0-5ソ)
9回裏(巨)
ソフトバンクの投手はモイネロからクローザーの森に交代。先頭の4番岡本に四球の後、5番丸が1,2塁間を破るヒット。その後7番中島に死球を与え、1死満塁とする。ここで8番ウィーラーが、3-1から甘く入ったカットボールを打つも、打ち損じのレフトフライ。これが犠牲フライとなり、1点を返す。
(巨1-5ソ)。なおも2死1,2塁から代打田中俊太がピッチャーゴロに倒れ試合終了。まずはソフトバンクが初戦を制した。
(画像はスポーツナビより)
ソ1勝 巨0勝
(勝) 千賀 (負) 菅野 (本) 栗原(2回表2ラン)
・勝敗を分けたポイント
この試合を分けたポイントはずばり3つ。
① 2回表・栗原の先制2ラン
② 4回裏・丸のゲッツー
③ 6回表・栗原の2点タイムリー
である。
① 2回表・栗原の先制2ラン
菅野、千賀という球界を代表する投手の投げ合いで投手戦が予想されること、シリーズの初戦であることを踏まえ、私はこの試合のポイントとして先制点を挙げた。初回、菅野は3者凡退とこれ以上ないスタートを切ったが、いつもよりも少しだけ球が高かった。そして無死1塁で迎えた栗原の打席。捕手大城は初球、2球目とスライダーを要求するも、いずれも抜け気味のボール。そして3球目、大城はカウントを取るスライダーを要求し、甘く入ったところを栗原が1球で仕留めた。
シリーズ初打席、菅野のファーストストライクを一球で仕留めた栗原が見事であったのは言うまでもない。しかし、抜け気味の球だったとはいえ、2球連続でスライダーを見せている中で、左打者にとって中に入ってくるスライダーをカウント球として要求するのは軽率だったのではないだろうか。著者は捕手未経験であり、配球に関してはかなり疎い方であるが、1つの一発で勝負が決まりかねない展開におけるリードとしては、不用意だったのではないかと考える。結果として、序盤から非常に重い2点を背負ってしまうことになった。
②4回裏・丸のゲッツー
4回裏(巨0-2ソ)、好投を続けていた千賀が、坂本・岡本に連続フォアボールを与える。そして丸にもボールが先行して2ボール。この回の千賀は明らかに制球を乱している。3回裏には、大城に12球粘られるも根負けせずにアウトに打ち取るなど、これといった隙を見せてこなかった千賀が、初めて与えた千載一遇の大チャンスである。
さて、この時のピッチャー心理を考えてみよう。投手としては3者連続フォアボールは絶対に出したくない。そのような状況の中、2者連続で、あまりよくない内容で四球を与え、さらに丸への最初の2球もストライクが入らなければ、多くのピッチャーは多少なりとも不安を抱えた状態での投球となる。
投手としてプロ野球に進んだ人であれば、大量得点のほとんどに四球・エラーが絡んでいることを熟知しているはずである。制球が定まらず、しかもリードしている状況で一番許してはいけない大量失点をしてしまうかもしれないという不安を誰しもが感じるだろう。
逆に、攻撃している巨人としては、向こうが隙を見せているときにできるだけ得点を取っておきたい。カウント2-0で、制球がかなり荒れている千賀の状態を考えると、はっきりしたボール球もしくは甘い球が来る確率が高い、逆に厳しいコースにストライクが決まる確率が低いため、ストライクゾーンの的を極限まで絞り、山を張っていい場面となる。しかし、丸はコースはアウトコースいっぱい、高さはボール1個分低く外れたストレートに手を出してしまった。
厳しい意見になるが、しっかりと準備し、状況を確認しておけば、コースも高さも厳しいストレートに手を出すことはなかったはずだ。ただゲッツーに打ち取られたのではなく、アウトになってはいけないカウントで、準備・確認不足により相手に2つもアウトを与え、ピッチャーを助けてしまった。千賀としては、「まずい、3-0だ。3者連続四球はさすがにあかん。」と思ったところで、巨人打線に2アウトもらったことになる。これで千賀は完全に立ち直り、7回まで見事無失点に抑えた。
相手がくれたチャンスを自分から潰してしまったこの攻撃が、試合を分けたポイントの1つとなった。
余談ではあるが、某日曜8時の番組にレギュラー出演している野球解説者が述べた「この場面はバントをすべき」という意見には、著者は全面的に反対する。理由は、大きく2つある。
まず、制球が定まらずに1死もとれずにランナーを2人出してしまった状況の中で、バントをしてアウトを与えることで投手の不安が解消されるからである。嫌な形で連続フォアボールを与え、クリーンナップである丸がバントの構えをしたらどう思うだろうか。2点差ついており、仮にバントを決められてヒットを打たれても同点どまりであり、リリーフ陣の層の厚さを考えるとまだソフトバンクに分がある状況下でのバントは全然いい。バスター警戒もあるため一概には言えないが、ヒッティングの構えをしているときよりもストライクゾーンに安心してボールを投げ込めるようになるだろう。一時的に制球を乱していても、ちょっとストライクを先行して投げれただけで、立ち直ることができる投手は少なくない。この場面でのバントはリターンが小さいうえ、千賀の立ち直りを後押しする戦術でしかないと私は考える。
もう一つは、2塁または1,2塁におけるバントは決してローリスクではないことである。これは、第3戦の箇所で後述する。
③ 6回表・栗原の2点タイムリー
最後は、6回表、栗原の第三打席で、2死1,3塁から栗原が2点タイムリーを放ち、4対0と突き放した場面である。結論から言う。巨人が与えたこの2点は不用意すぎる。個人的には、日本シリーズを通じて最も残念な場面であった。
栗原の第一打席は、①でも述べたが、3球目(ファーストストライク)のスライダーを捉え、ライトスタンドへ運んだ。そして第二打席、アウトコースへ緩いカーブを投じた次の3-1からの5球目、インコースの厳しいコースに投じた150キロのストレートを見事にライト線に2ベースを放った。外の緩い球を見せられた後では、なかなか内角の厳しい速球に反応することは難しい。菅野相手ならなおさらだ。この2打席を見て、多くの人は「栗原は菅野にタイミングが合っている」と判断するはずだ。
試合も終盤にさしかかり、巨人は未だ無得点。1点が死活問題となり得るレベルで重い展開である。今日の菅野は4番グラシアル、5番栗原以外はほぼ完ぺきに抑え込んでいる。もう1点も与えられない巨人として、栗原とまともに勝負する選択肢は無く、申告敬遠してもいいぐらいだ。
しかし、初球からカーブが甘く入り、その後は2球ボール。2-1からの4球目、大城はアウトコースの膝元あたりにフォークを要求。これが落ちずに甘く入り左中間に運ばれた。1点も与えられない場面、本来1球も甘い球を投げられない状況、全てボール球でも全く問題がない場面で、2球もチャンスボールを与えてしまった。打たれた4球目、菅野がいつもよりも少し球が上ずっていることも考え、フォークボールを要求するならミットが地面につくぐらいでもいい場面であった。
2アウトランナー無しから許した1,3塁のピンチ。1点が重くのしかかり、ここでの失点は試合を決定づけてしまうぐらい痛い失点となる。しかし、ここで投手の菅野に声をかけたのはキャプテンの坂本だけだった。内野全員を集合させる、ピッチングコーチがマウンドに向かう、あるいは監督自らマウンドへ向かうなどして、間を取るべき場面。ディフェンス面では試合の中で最も重要となりかねない場面である。捕手の大城だけの問題ではなく、ベンチ全体として、6回表の状況を軽率に見ていたのだろう。
この場面でも、もう1点も与えることができないという状況を見誤り、当たっている栗原に対して軽率なアプローチをした巨人側の準備・確認の甘さが出た。
・第一戦の総評
スコアは5対1。ソフトバンクの完勝に見える。しかし、巨人としては準備・確認の甘さによりチャンスを潰し、点を取られてしまった試合であり、十分に勝てた、あるいは接戦に持ち込むことができたゲームを落としたといえる。決して、「力負け」という3文字で済ませていいものではない。本来戦力的に劣るチームが見せるべきである、ベンチワークや意識の高さ、徹底した準備・確認。このような、戦力に関係のない部分でもソフトバンクに劣った結果の敗戦であった。
ソフトバンクとしては、先制・中押し・ダメ押しという最高の得点パターでの勝利となった。巨人としては、エース菅野で落とし、負け方としても非常に悔いが残るものとなってしまった。
■第二戦
・この試合の位置づけ・ポイント
前日の第一戦を制したのはソフトバンク。非常にいい勝ち方で、菅野から初戦を取れたこともあり、かなりリラックスしていい雰囲気で第2戦に臨むことができるのではだろうか。この試合に勝利して、2勝0敗で福岡に行ければ、9割型日本一を手にすることができるといえる。
対する巨人は嫌な負け方で初戦を落としてしまった。これからはかなり厳しい戦いになるが、切り替えて1戦1戦全力で戦うしかない。この試合もかなり分が悪いが、昨日落としてしまった分、絶対に取らなくてはならない。
先発は巨人が技巧派左腕の今村、ソフトバンクは石川柊太である。
この試合の最大のポイントは今村の出来であると考える。今村は、常時140キロ前半のストレートと、緩いカーブ、右打者にとっては若干逃げていくボールになるチェンジアップ、フォークなどを持ち球として、球を低めに集め緩急を活かした投球が持ち味である。
数字を見ると、12試合に登板して5勝2敗、防御率3.16と悪くないが、彼には課題が大きく二つある。先頭バッターへの被出塁率と、対左打者被打率だ。
先頭バッターへの出塁を多く許してしまうことで、イニングのわりに球数が多くなり、長いイニングを投げられなくなる。巨人の投手層では、先発がある程度長いイニングを投げることができないと、かなりの確率でどこかでボロが出てしまうだろう。この試合では先頭バッターに対して高い意識を持ち、シーズン中とは一味違う姿に期待したい。
次は左打者への被打率。右打者に対しては武器であるチェンジアップが有効で、被打率は.193と低い。しかし、左打者に対しては.278とかなり打たれている。ソフトバンクには50盗塁の周東、打線の大黒柱柳田、昨日大暴れの栗原という、左打者のキーマンが多く存在する。彼らをどう抑えていくのかも見どころである。
巨人側としては、彼がテンポよくソフトバンク打線を抑え、6回2失点程度にまとめるのが理想の展開である。
一方石川柊太。こちらは何といっても130km弱に迫り変化量・落差共に大きいパワーカーブが持ち味。彼が軸とするボールであり、このボールの見極めがポイントとなるだろう。実際に現場で彼のボールを体験したことがないので、攻略法を詳しく記述することはできないが、このように強力な武器がある投手は、全てのボールに対応しようとして攻略することが難しいといえるだろう。狙い球やコースを絞り、昨日は発揮されなかったベンチワークで徹底事項を明確化する必要がある。
著者なりに具体的な案を一つ出すと、敢えてベルトから下のストレートを狙うのも面白いかもしれない。石川のカーブは落差が大きいため、低めに来る時点でカーブの可能性が少ないからだ。
何にせよ攻略が非常に難しい投手であることは間違いないため、なんとか6回までに3点程度の得点をとるのが理想である。
・スターティングメンバー
両チームの第二戦のスタメンは以下の通りである。
先攻:ソフトバンク
1 (遊) 周東 ▲ .000 0本0点1盗
2 (二) 川島慶 .263 4本9点(今季成績)
3 (中) 柳田 ▲ .000 0本0点
4 (左) グラシアル .500 0本0点
5 (右) 栗原 ▲ 1.000 1本4点
6 (指) デスパイネ .250 0本0点
7 (一) 中村晃 ▲ .250 0本1点
8 (三) 松田 .000 0本0点
9 (捕) 甲斐 .000 0本0点
投手:石川柊 11勝3敗 防2.42 最多勝・最高勝率(今季成績)
後攻:巨人
1 (二) 吉川尚 ▲ .000 0本0点
2 (右) 松原 ▲ .000 0本0点
3 (遊) 坂本 .333 0本0点
4 (三) 岡本 .000 0本0点
5 (中) 丸 ▲ .250 0本0点
6 (指) 亀井 ▲ .000 0本0点
7 (一) 中島 .000 0本0点
8 (左) ウィーラー .333 0本1点
9 (捕) 大城 ▲ .333 0本0点
投手:今村▲ 5勝2敗 防3.16(今季成績)
※▲は左打者(投手の場合左投手)
※日本シリーズの成績
巨人は第一戦と全く変わらず。ソフトバンクは左投手相手とういことで、2番に右の川島慶三を起用。中村晃を7番に下げた。左打者の方が苦手としている今村にとっては追い風である。
・ハイライト
1回表(ソ)
先頭の周東を3球三振に抑え1アウト。続く2番川島に四球を与えた後、3番柳田がカウント2-1からの4球目のシュートを捉え、センターオーバーの2ベース。1塁走者が生還し、今日もソフトバンクが先制。(巨0-1ソ)。さらに4番グラシアルが二遊間に痛烈な打球を放ちこれをセカンド吉川尚が好捕するも、1塁へ悪送球(巨0-2ソ)。なおも1死1塁で昨日4打点の5番栗原が一二塁間を破るヒットで1,3塁とした後、6番デスパイネのサードゴロの間に3点目。(巨0-3ソ)。今村はいきなり3点を失う苦しい立ち上がりとなる。
1回裏(巨)
対するホークス先発石川柊太は3者凡退に抑える上々の立ち上がり。
2回表(ソ)
1死から9番甲斐がど真ん中のストレートを左中間スタンドに運ぶソロホームランを放つ(巨0-4ソ)。周東を打ち取り2死としたところで早くも継投。先発の今村をあきらめ戸郷にスイッチする。2番川島を抑え3アウト。
3回表(ソ)
先頭の3番柳田がレフト前にうまく落として出塁した後、4番グラシアルが0-1からの2球目、甘く入ったスライダーを左中間スタンドへ。2ランホームランとなりさらに2点追加。(巨0-6ソ)。
3回裏(巨)
先頭の7番中島が四球。2死後1番吉川尚がレフト前ヒットで2死1,2塁と好機を作るも、2番松原が一ゴロに倒れ無得点。(巨0-6ソ)
5回表(ソ)
巨人は戸郷に変え、3番手で左の田口を投入。1死1,3塁とされ、6番デスパイネがライトへの犠牲フライを放ち7点目が入る。(巨0-7ソ)
5回裏(巨)
1死から7番中島が四球で出塁した後、8番ウィーラーが1-1からの3球目のアウトローのストレートを捉え、ライトスタンドへの2ランホームラン。
(巨2-7ソ)。
6回裏(巨)
1死から3番坂本、4番岡本の連打で1死1,2塁。5番丸を迎えるところでソフトバンクは石川柊太から左のサイドスローの嘉弥真にスイッチ。丸に対してはすべて外のスライダーを投じ、全くタイミングが合わずに空振り三振。巨人は左の6番亀井に変えて右の代打石川慎吾を送る。ここでソフトバンクも嘉弥真から右のアンダーハンド高橋礼にスイッチ。巨人は代打の代打で左の田中俊太を送り四球を選ぶ。2死満塁でバッターは7番中島。高橋の制球が定まらずにカウント3-1とするも、最後は空振り三振に切って取り、チャンスを生かせず。(巨2-7ソ)
7回表(ソ)
巨人は田口に変え、4番手の鍵谷を投入。しかし、1死1,2塁のピンチを迎え、5番栗原との勝負。2-2からの11球目のストレートを三遊間にはじき返し、ショート内野安打。栗原は2日続けての猛打賞。その後6番デスパイネが1-0からの2球目のストレートを完ぺきにとらえ、右中間スタンドへの満塁ホームラン。二桁得点に突入する。(巨2-11ソ)
9回表(ソ)
巨人の投手は大竹。先頭の5番栗原が今日4安打目となるライト前ヒットで出塁。さらに2本のヒットで1死満塁となり、9番甲斐の投ゴロを大竹が本塁へ悪送球。これでさらに2点が加わる。(巨2-13ソ)
9回裏(巨)
無得点で試合終了。
(画像はスポーツナビより)
巨0勝 ソ2勝。
(勝)石川柊 (負)今村 (本)甲斐(2回表ソロ)、グラシアル(3回表2ラン)、ウィーラー(5回裏2ラン)、デスパイネ(7回表満塁)
・勝敗を分けたポイント
勝敗を分けた場面に限ればたった一つである。今村が全く通用せずに2回持たずに4失点で降板したことだ。
著者は第2戦は一球速報でしか試合を見ることができていないが、今村は、シーズン中のようにボールを低めに集める投球ができていたように見えた。しかし、単純に被打率が高すぎた。著者はこの試合のポイントを、先発今村がいかに長いイニング投げて試合を作れるかとしていた。序盤から4点取られ、決して層が厚くないリリーフ陣を早くから投入せざるを得ない。また、ソフトバンク投手陣から4点以上奪わないといけない展開になってしまっては、勝利を手にすることは極めて難しい。
自滅したわけではなく単純に通用しなかった(ように見えた)ので、今村を責めることはできないが、2回表で試合が決まってしまう展開となってしまった。
・第2戦の総評
今村が通用しなかったという解説だけではつまらないので、ホークスの強さを感じた場面を一つ紹介しておこう。5回裏、巨人がウィーラーの2ランホームランで反撃を開始し(巨2-7ソ)、その後6回表、ホークスは初めて3者凡退に終わった。そしてその後の6回裏、1アウトから坂本・岡本に連続ヒットを許し5番丸を迎える場面。
普通のチームであれば、まだ5点差、満塁ホームランでも追いつかれない点差があり、6回持たずにリリーフをつぎ込むのはやや苦しいため、先発の石川を続投させるだろう。しかし、ソフトバンクはこの場面で左サイドハンドの嘉弥真を投入。4球外のスライダーを続け空振り三振に切って取った。丸の見逃し方を見ると、全ての球において体が開いている。このことから、左打者にとってはインコースのボールが突然外低めに曲がってくるようなボールに見えることがわかる。この見逃し方を見た捕手の甲斐は全て外のスライダーを要求。丸は打てる気配がなく空振り三振。そして、右打者を迎えるとすかさず右のアンダーハンドの高橋礼を投入。後続を打ち取った。
5点差離れているとはいえ、流れを渡しかねない場面。投手層の厚さから、全く妥協することなく投手をつぎ込める。これがソフトバンクの強さである。
試合全体としては、2回表に早々に試合が決まってしまったゲームとなった。巨人としては後のリリーフ陣もほとんど通用せず、不安要素を多く残した。最悪の流れで福岡へ移動することになる。
■第三戦
・この試合の位置づけ・ポイント
ソフトバンク2勝巨人0勝で福岡へ。ソフトバンクとしては、巨人が本来の力を発揮できていないうちに決めてしまいたい。巨人としては、ビジターの福岡で最低限2勝1敗と勝ち越す必要があるため、この福岡での初戦を落としたらほぼ確実に敗退が決定してしまう。これ以上星を落とすわけにはいかない。
先発は巨人がサンチェス、ソフトバンクはムーアである。
サンチェスに関しては、いい時は常時150キロのストレートがいいコースまたは高さに決まり、変化球でも空振りを取ることができる。投げるボールの質はかなり高く、ソフトバンク打線も苦労するだろう。悪い時は滅多打ちされるというよりは、制球を乱し自分から崩れていくパターンが多い。球の荒れ具合。これが調子のバロメータとある。安定感はないが、彼のいい時のピッチングが出てくれれば、十分に互角な戦いができるだろう。
ムーアは、左腕ながら常時140キロ後半のストレートとブレーキの効いたチェンジアップを軸に非常に奪三振率が高い投手である。このチェンジアップは、右打者に対して特に有効で、被打率は.197と低い。一方で左打者には.254と、比較的高い被打率であり苦手としている。
このデータもあり、巨人のキーマンには初戦、2戦目と奮わなかった、左打者の吉川尚・松原・丸を挙げたい。比較的攻略しやすい左打者が活躍することで、2試合で沈黙している打線に火をつけたい。
また、先発投手は両チームとも今年から来日した新外国人。交流戦がなかったため、全ての選手が初顔合わせとなるなかで、ゲームの中でどのように対応していくのかも注目である。
・スターティングメンバ―
両チームの第三戦のスタメンは以下の通り。
先攻:巨人
1 (二) 吉川尚 ▲ .125 0本0点
2 (右) 松原 ▲ .000 0本0点
3 (遊) 坂本 .333 0本0点
4 (三) 岡本 .167 0本0点
5 (中) 丸 ▲ .125 0本0点
6 (指) ウィーラー .286 1本3点
7 (左) 亀井 ▲ .000 0本0点
8 (一) 中島 .000 0本0点
9 (捕) 大城 ▲ .167 0本0点
投手:サンチェス 8勝4敗 防3.08(今季成績)
後攻:ソフトバンク
1 (二) 周東 ▲ .000 0本0点1盗
2 (一) 中村晃 ▲ .250 0本1点
3 (中) 柳田 ▲ .333 0本1点
4 (左) グラシアル .571 1本2点
5 (右) 栗原 ▲ .875 1本4点
6 (指) デスパイネ .286 1本6点
7 (遊) 牧原 ▲ .286 0本0点
8 (三) 松田 .125 0本0点
9 (捕) 甲斐 .143 1本1点
投手:ムーア ▲ 6勝3敗 防2.65
※▲は左打者(投手の場合左投手)。
※日本シリーズの成績
巨人は、2試合でバットが振れているウィーラーを8番から6番へ上げた。6~8番で打順の入れ替えは合ったものの、レギュラーメンバー9人は変更なし。ソフトバンクは第一戦と同じオーダーとなった。第三戦の巨人のスタメン起用において注目していた点が2点ある。
1点目は、原監督が必要以上に右打者を起用するかどうか。一昨日の第2戦のソフトバンクのスタメンもそうだが、左投手が左打者を苦手にしてるにもかかわらず、原則通りに右打者を並べる起用をするケースが意外と多くみられる(その逆もそうである)。今日の第3戦を例にすると、松原ではなく石川慎吾や陽岱鋼を起用したり、吉川尚輝ではなく右打者の北村をスタメンで起用するようなことだ。今日のスタメンを見るとそのようなことはせず、これまでと大きく変わらないスタメンであった。
2点目は、捕手を誰にするかである。戦力分析の章で、「大城の捕手能力が飛躍的に向上し、大城を捕手で起用できるようになったのが大きい」と述べた。それだけ、シーズン中の捕手大城の貢献度が大きかったのは間違いない。しかし著者はこの第三戦においては炭谷を起用したほうがよいと考えた。理由は2つある。
まずは、サンチェスと炭谷の相性である。サンチェスは大城とは3試合バッテリーを組んで0勝2敗防御率4.70。一方炭谷とは7試合組んで4勝2敗防御率1.73であった。シーズン中バッテリーを組んだ回数や成績で見ても、炭谷の方が相性がよいのは明らかだろう。
もう一つは、流れを変えるためである。第一戦、第二戦はそれぞれ5失点、13失点と褒められたものではない。そこで、捕手を交代し配球パターンを変え、さらにパ・リーグの野球を知っている(2006~2018まで西武に在籍)炭谷を起用することで状況が好転する可能性がある。
できるだけ左打者を起用したいため、大城をファースト、炭谷をキャッチャーで起用しても面白いと思った。
・ハイライト
第三戦をハイライト形式で振り返る。
1回表(巨)
先頭の1番吉川尚の打球は強い当たりのショート真正面のゴロ。これを牧原が悪送球。2塁まで進塁する。続く2番松原はバントの構え。初球をフェアゾーンに転がすもキャッチャーの前で跳ね、2塁走者の吉川がニ三塁間に挟まれる。しかし、二塁のベースカバーが不足して吉川は二塁に帰塁。一二塁間に飛び出していた打者走者の松原がタッチアウト。1死2塁。その後後続が打ち取られ、チャンスを逃す。(ソ0-0巨)
1回裏(ソ)
巨人先発のサンチェスが2球で2アウトを奪う。その後3番柳田がヒットで出塁するも無得点。サンチェスは上々の立ち上がり。(ソ0-0巨)
3回裏(ソ)
8番松田、9番甲斐と2者連続三振で2アウト。1番周東の1,2塁間の打球にセカンド吉川尚が追いつき一塁送球するもこれが悪送球。周東は二塁へ。周東に待望のシリーズ初ヒットが生まれる。その後2番中村晃がカウント2-2からのインコースのスプリットをライトスタンドへ運ぶ2ランホームラン。ソフトバンクが今日も先制する。(ソ2-0巨)
5回表(巨)
この回先頭の5番丸が、3-2から外の際どいストレートを見送り四球で出塁。続くウィーラーが0-1からの2球目の甘く入ったチェンジアップを捉え打球はゴロで三遊間へ。しかし、これをサード松田が好捕し二塁フォースアウト。後続続かず無得点。(ソ2-0巨)
6回表(巨)
先頭の9番大城の、詰まったピッチャーゴロをムーアが弾きエラー。無死一塁。1番吉川尚、2番松原とストレートをうまく打つもどちらもセンターフライ。続く3番坂本は空振り三振に倒れ、この回も無得点。(ソ2-0巨)
6回裏(ソ)
先頭は先制ホームランの2番中村晃。サンチェスの制球が乱れ四球。無死1塁。さらに3番柳田が初球のインコースのカットボールを捉えライト前ヒット。無死1,3塁。ここで巨人は内野前進。4番グラシアルはアウトコース低めのカットボールにバットを当てるもショートゴロ。3塁ランナーの中村が三本間に挟まれアウト。1死2,3塁。さらに当たっている5番栗原を申告敬遠。満塁策を取る。1死満塁で6番デスパイネを見逃し三振。ここでソフトバンクは7番の牧原に代わり代打長谷川。初球のストレートを捉え一二塁間に飛ぶもこれをセカンド吉川尚がダイビングキャッチ。素早く一塁に送球してアウト。ソフトバンク、好機を活かせず。長谷川はベース上で悔しさを露わにする。(ソ2-0巨)
7回表(巨)
4番岡本からの攻撃も3者凡退。先発のムーアは7回まで被安打0、無失点の完ぺきな投球。(ソ2-0巨)
7回裏(ソ)
先頭の8番松田がレフト前ヒット。続く9番甲斐が送りバントを1球で決めて1死2塁。ここで巨人はピッチャーをサンチェスから左のサイドスロー高梨に交代。1~3番まで左が続くところだ。巨人の外野は前進せず。しかし、周東に死球を与え1死1,2塁。ここで、2番中村晃が2-2からの5球目のインコース(逆球)を捉え、ライト前ヒット。この当たりで2塁ランナーが生還。
(ソ3-0巨)1死1,3塁。柳田を見逃し三振に抑え4番グラシアルを迎えたところで高梨から大竹にスイッチ。4番グラシアルが2-1からの4球目のアウトローのスライダーにうまく合わせてライト前に落とし、追加点。(ソ4-0巨)
巨人としては痛い2失点となった。
8回表(巨)
ソフトバンクはノーヒットピッチングを続けていたムーアに変え、セットアッパーのモイネロを投入。1死から8番中島、9番の代打岸田に連続四死球を与え、1死1,2塁。ここで、1番吉川尚輝に変え、左の田中俊太を代打に起用するも、カーブに手がでず見逃し三振。さらに2番松原にも左の重信慎之介を代打に送り、空振り三振。この回も無安打無得点に終わる。(ソ4-0巨)
9回表(巨)
ソフトバンクはモイネロに変え、守護神の森を投入。初戦とは変わって簡単にツーアウトを取り、5番丸。3球目のカーブを捉えセンター前へ。ようやくチーム初ヒットが生まれる。しかし、最後は6番ウィーラーをセカンドフライに打ち取り、試合終了。ソフトバンクが3連勝で王手をかけた。
(画像はスポーツナビより)
ソ3勝、巨0勝。
(勝) ムーア (負) サンチェス (本)中村晃(3回裏2ラン)
・勝敗を分けたポイント
この試合の勝敗を分けたポイントは次の3つであると考える。
①1回表・巨人の攻撃
②3回裏・中村晃の先制2ランホームラン
③ソフトバンク先発ムーアの完璧な投球
①1回表・巨人の攻撃
1回表、先頭の吉川尚輝の平凡なショートゴロを、ショート牧原が悪送球。ノーアウトランナー2塁とした。相手のミスには一気につけ込みたい場面。続く2番松原に、原監督は送りバントを命じた。
著者が考える「無死2塁」あるいは「無死1,2塁」での送りバントの位置づけは、ハイリスクでかつローリターンな戦術である。まず、送りバント自体が、90%,100%に近い確率で決まるものではなくなってきている。その理由が、投手力の向上だ。30~40年前は、ほとんどの投手が140キロ程度のストレートとカーブ、プラスでもう1球種程度のボールしか投げれなかった。しかし、現在は140キロ後半~150キロ前半が当たり前、球種も非常に多様化している。このことから、送りバントが確実に決まるものではなくなり、送りバントのリスク自体が昔と比べてかなり増えてきているといえる。
今回の状況である「無死2塁」はなおさらハイリスクである。普通に打たせれば、ゲッツーや2塁ランナーが刺されることはまず発生せず、最低でも1死2塁の状況が作れる。左打者なら、1死3塁の状況が作れる進塁打も比較的打ちやすい。しかし、送りバントでは頻繁に2塁ランナーが刺される。送りバントが投手前、捕手前、あるいはバントシフトでダッシュしてくる一塁手の前に転がり3塁で刺されてしまうケースは多くみられる。
この確率を少なくするため、ストライクゴー(投球がストライクと判断した瞬間に2塁ランナーがスタート)をするケースがある。しかし、ここでよくあるのが打者がストライクを見逃しバットを引いてしまうパターン。そうすると、大きく飛び出していたランナーが2塁まで戻れずに捕手からの牽制で刺される。このようなシーンも多くみられる。
では、得られるリターンは何か。1点が入りやすくなることだ。それ以上もそれ以下もない。つまり、どうしても、リスク承知の上でも1点が欲しいときに考えられる戦術である。
「無死1,2塁」では、ランナーが2人いる分2点までなら入りやすくなり、2塁の時と異なり3塁で刺されても目に見えて状況は悪くならない。しかし、三塁がフォースプレーとなる無死1,2塁のバントは本当に決まりにくい。サードに取らせるような打球or勢いをうまく殺した打球でないと決まらず、かなりシビアなバントが要求される。無死2塁のケースで説明したストライクゴー時の空振りor見逃しのリスクも同様に付きまとう。
このように、ランナー2塁におけるバントはローリスクではなく、ハイリスクであると筆者は考える。
さて、話を戻す。エラーでもらったノーアウト2塁というチャンスに2番の松原は送りバントの構え。確かに、巨人は今シリーズで一度もリードを奪えていないため、ここでの1点は非常にリターンが高いと捉えることはできる。ムーアが右打者を得意にしており、坂本・岡本を迎えるにあたっては3塁の方が得点期待値が大幅に上がりそうであることを考えると、2塁からのバントは基本的に否定派の著者でも、ここでのバントのサインに一概に反対することはできない。しかし、ムーアはまだ一つもアウトを取れていないことや、松原が左打者であることを考えると、打たせた方が無難なようにも思えるが、難しい場面である。
結果的には、松原のバントは捕手の前に転がり、吉川尚輝がニ三塁間に挟まれる最悪の形となった。しかし、ここで松原を責めることは一切できない。結果的に0安打に抑えられるピッチャーのボールを、的確な位置へ転がす方が難しい。ここでうまく転がせなかった松原を責めるのはナンセンスである。
ニ三塁間に挟まれた吉川であるが、ここでソフトバンクに再び守りのミスがでる。二三塁間の挟殺プレーは、二塁と三塁の両側のベースカバーが不足しがちである。従って、カバー不足を防ぐため、ある程度時間をかけてランナーをアウトにするのがセオリーだ。しかし、2塁でボールを受け取ったショートの牧原がかなり早い段階でサードに送球してしまった。それに対して2塁ランナーの吉川尚輝は瞬時に切り返し、カバーがいない2塁ベースに帰還した。
本来、これでオールセーフ、ノーアウト1,2塁となるはずだが、ここでバッターランナーの松原が2塁ベース手前まで飛び出し、タッチアウト。これが非常に痛い。牧原が3塁に送球し、吉川尚が瞬時に切り返しをした段階で、松原は一塁ベースを少し過ぎたところにいた。切り返した時に、3塁ベースでボールを受け取ったサード松田とランナー吉川の間には距離が空いていたこと、2塁ベースががら空きだったことが見えていれば、すぐに1塁に帰塁することができたはずである。難しい判断ではあるが、この走塁ミスは非常に痛かった。
この後、坂本と岡本が連続で倒れて、守備のミス、具体的には見えるエラーと見えないエラーの2つから得られたチャンスを活かすことができなかった攻撃となった。
②3回裏・中村晃の先制2ランホームラン
ムーアの出来の良さから、結果的には勝敗を分ける場面になってしまったが、これは打った中村を褒めるべきだろう。ここまでサンチェスはほぼ完ぺきにソフトバンク打線を抑えており、中村に対して2-2から少し甘く入ったスプリットを打たれた。失投を1球で仕留めた中村晃の集中力の高さ、これを褒めるべきである。
③ムーアの完璧な投球
この日のムーアは、まずストレートの走りが違った。左腕から、常時150キロ台前半のボールを投げ込む先発投手は、セ・リーグにもパ・リーグにもなかなか存在しない。このストレートに対応するだけでも至難の業である。それに加えて、元から定評があり特に右打者に有効なチェンジアップもかなり冴えていた。さらに、この試合で調子がよかったのがカーブ。これが特に左打者に対して相当効いていた。この3球種を軸に、投げるボールが全て一級品であり、どのチームでも攻略が非常に難しい完璧な投球をしていた。
ほぼ隙のない投球をしており、これだけの投球をされると、どのチームでもなかなか攻略することは難しいだろう。
第三戦の総評
結果的にはムーアの完璧な投球と、3回の中村晃の見事なホームランが勝負を分けた。巨人としては、初回の攻撃がもったいなかった。ここで先制点をあげることができれば、また違う展開になっていたかもしれない。
ここで、直接的に勝負を分けるポイントとはなっていないが、6回裏のソフトバンクの攻撃から、7回裏のソフトバンクの攻撃までの一連の流れに触れておく。
6回裏、無死1,3塁から、巨人は内野前進守備を敷き、グラシアルをショートゴロ本塁封殺。その後1死2,3塁で栗原をしっかりと申告敬遠したあと、デスパイネを注文通りの三振。2死満塁で代打長谷川が一二塁間に強いゴロを放つも、吉川のファインプレーで無得点に終わった場面。長谷川としては打撃内容は悪くなく、普通なら苦笑いしてしまうような場面だ。しかし、長谷川は1塁ベース上で拳をたたきつけて悔しさを露わにした。2連勝したあと、この試合もリードしており、日本一はかなり固い状況。何度も日本一を経験し、もうスタメンからは退いているベテランが、普通なら苦笑いしてもいい場面でこれだけ悔しさを露わにする。この行動が球場全体の空気を変えた。
7回表巨人の攻撃。巨人としては大ピンチを凌ぎ、勢いに乗る場面だ。しかし、あっけなく3者凡退になった。先ほどの長谷川の行動が、ソフトバンクナインの気持ちをもう一度引き締めた結果である。長谷川が苦笑いをしていれば、また違う展開になっていたかもしれない。
そして7回裏、ソフトバンクの攻撃。1死1,2塁で、中村晃がライトへのタイムリーヒットを放ち、3対0と突き放す。著者がこの試合で最も残念に感じたのがこの場面である。なぜなら、外野が前進守備をしていなかったからだ。これは定かではないが、1塁ランナーを返さないようにやや深めに守っているようにも見えた。
6回裏では1,3塁でも内野が前進守備をし、1死2,3塁で栗原を迷わず申告敬遠するなど、1点も与えられないという意思が十分に見えた戦略を取ることができていた。念のため確認するが、1点まではOKなら内野が前進守備を敷く理由は全くない。
7回表も嫌な形で3者凡退に抑えられ、さらに1点の重みは大きくなるはず。なぜ、1点も与えられない守備体型を敷かなかったのか。本当に疑問である。戦力差だけでなく、このような準備・確認の段階で差がついた場面がいくつもあったのが、このシリーズを通じて本当に残念であった。
■第四戦
・この試合の位置づけ・ポイント
早くも王手をかけたソフトバンク。1勝目を与えてしまうと流れが変わる可能性があるので、去年同様に無敗で日本一を決めてしまいたい。巨人としては早くも後がない展開となってしまった。誰もが分かるが、残り4試合すべて勝つしかない。
ポイントとなるのは巨人打線。ここ3試合で放った安打はわずか10、チーム打率は.112と沈黙。投手力の差云々ではなく、この打力では勝てない。ソフトバンク投手陣を脅かすような攻撃を見せていきたい。
先発は巨人が畠、ソフトバンクは和田。
まずは、巨人打線に相対する和田から見ていく。ストレートの球速は常時140キロ台前半。制球が安定しており、さらに多彩な球種を投げるが、最大の武器はチェンジアップだろうか。これだけ見るとごく普通の投手に見えるが、彼の最大の特徴は球の出所が見づらく、独特な軌道のボールを投げることだ。そのため、初見での攻略が特に難しい投手である。
彼もまた左腕ながら、対左被打率.252、対右被打率.180と、左打者の方を苦手としている。巨人サイドとしては、できるだけ左打者、かつ和田との対戦経験がある選手を起用していきたい。
打線がポイントであるとは述べたが、投手力の差を埋めるべく、先発畠の出来ももちろん重要である。いい時は、常時150キロに迫るストレートを軸に、スライダー・カットボールを中心とした切れ味鋭い変化球で打者を手玉に取る。しかし、悪い時はストレート、変化球共にキレが落ち、早々にノックアウトしてしまうことも珍しくない。昨日のサンチェス同様の上振れに期待したい。
・スターティングメンバ―
両チームの第四戦のスタメンは以下の通り。
先攻:巨人
1 (右) 若林 △ .000 0本0点
2 (遊) 坂本 .200 0本0点
3 (中) 丸 ▲ .182 0本0点
4 (三) 岡本 .100 0本0点
5 (指) ウィーラー .200 1本3点
6 (一) 中島 .000 0本0点
7 (二) 田中俊 ▲ .333 0本0点
8 (捕) 岸田 .000 0本0点
9 (左) 増田大 .000 0本0点
投手:畠4勝4敗 防2.88(今季成績)
後攻:ソフトバンク
1 (二) 周東 ▲ .077 0本0点1盗
2 (一) 中村晃 ▲ .364 1本4点
3 (中) 柳田 ▲ .400 0本1点
4 (左) グラシアル .455 1本3点
5 (右) 栗原 ▲ .636 1本4点
6 (指) デスパイネ .182 1本6点
7 (遊) 牧原 ▲ .222 0本0点
8 (三) 松田 .167 0本0点
9 (捕) 甲斐 .222 1本1点
投手: 和田 ▲ 8勝1敗 防2.94
※▲は左打者(投手の場合左投手)。
※△は両打ち
※日本シリーズの成績
ソフトバンクは第三戦と変更なし。巨人は4番の岡本以外のすべての打順を組み替え、大幅なスタメン変更に踏み切った。2番坂本、3番丸、4番岡本と、去年のような攻撃的なオーダーに変更。そして、若林と田中俊太の起用だ。この2人は去年の日本シリーズ第四戦、和田が先発したときにスタメン起用されている。つまり、和田の球を経験している選手だ。5番ウィーラー、6番中島もパ・リーグに在籍していた経験があり、和田を経験しているかどうかを重視したスタメン起用だと取れる。捕手は大城ではなく右の岸田を起用。捕手を変えたいが、畠と炭谷は相性があまりよくない(0勝3敗 防5.95)ために、岸田を起用する形となったか。9番には右打者の増田大輝を起用。
右打者の起用が多いのは気になるが、昨年和田と対戦した経験がどのように生きるかが注目である。
・ハイライト
ここでは、第4戦をハイライトで振り返る。
1回表(巨)
今日スタメン起用の1番若林が、1-2から6球目のアウトコースのスライダーにうまく合わせ、右中間を破るツーベース。無死2塁。続く2番坂本が1-0から、インコースのスライダーをレフトオーバーのタイムリーツーベース。巨人がこのシリーズ初めての先制点を奪う。(ソ0-1巨)。その後丸、岡本が倒れ、ウィーラーは四球を選び2死1,2塁。6番中島が14球粘るも最後はチェンジアップに手が出て空振り三振。なんとか1点で切り抜ける。
1回裏(ソ)
先頭の周東をセカンドゴロに打ちとり1アウト。2番中村晃は1-2からインコース低めのストレートをライト線に運びツーベースヒット。1死2塁。その後3番の柳田が、初球の浮いたフォークボールを完璧にはじき返し、ライトスタンドへの逆転2ランホームラン。あっさりと逆転してしまう。(ソ2ー1巨)
2回表(巨)
先頭の7番田中俊太が初球のストレートをはじき返しセンター前へ。無死1塁。ここで、8番の岸田がバントの構え。送りバントをしっかりと決め、1死2塁とする。しかし後続の増田大、若林が揃って倒れ無得点。(ソ2-1巨)
2回裏(ソ)
1死後、7番牧原がライト前ヒットで1死1塁。続く松田を空振り三振に抑え2死1塁とするも、9番甲斐が1-1からの3球目のストレートをレフトスタンドへ運ぶツーランホームラン。これで4対1とする。(ソ4-1巨)。ここで巨人ベンチは畠を諦め、2番手でサイドスロー左腕の大江がマウンドへ。1番周東を抑え3アウト。
3回表(巨)
ソフトバンクは、2回で50球以上投じた和田に変え、2番手で右の本格派松本裕樹に交代。早くも継投策に出る。その松本が、見事坂本・丸・岡本を3者凡退に抑える。(ソ4-1巨)。
3回裏(ソ)
2死から、4番グラシアル、5番栗原に連続四死球を与える。ここで巨人は大江から戸郷にスイッチ。デスパイネに四球を与えるも、続く牧原をファーストゴロに抑え、ピンチを切り抜ける。(ソ4-1巨)
4回表(巨)
2死2塁の好機を作るも生かせず。(ソ4-1巨)
4回裏(ソ)
戸郷が8番松田、9番甲斐、1番周東を3者連続三振に抑える。(ソ4-1巨)
5回表(巨)
1死から1番若林がライト前ヒットで出塁。2番坂本がライトフライに倒れた3番丸を迎えるところで、ソフトバンクは好投の松本に変え、左殺しのサウスポー、嘉弥真を投入。2-2からスライダーが甘く入るも、丸はこれをとらえきれずにライトフライ。3アウト。(ソ4-1巨)
6回裏(ソ)
巨人は好投の戸郷に変え、右の速球派ビエイラが登板。日本シリーズ最速の164キロを記録するなど、気迫あふれる投球で3者凡退に切って取る。
(ソ4-1巨)
7回裏(ソ)
巨人はビエイラが続投。2死から周東に死球を与えたところでビエイラから中川に交代。2番の中村晃のカウント1-1のとき、周東が盗塁を試みるも、捕手大城が完璧な二塁送球を見せタッチアウト。周東の盗塁を刺した。
9回表(巨)
ソフトバンクは、6回から高橋礼→岩嵜→モイネロと1イニングずつ繋ぎ、いよいよ最終回、守護神の森がマウンドへ。いきなり先頭の4番岡本に四球を与え、1死から6番中島に、1,2塁間を抜けるヒットを打たれ、1死1,2塁とする。一発が出れば同点の場面。7番田中俊太にカウント3-0とするも、3-1から2球連続インローのカットボールを投げ込み、田中俊太は手がでず見逃し三振。2アウトで8番重信に、今季得点圏打率.448と驚異的な勝負強さを誇る亀井を代打に送る。しかし、最後は亀井がセカンドフライに打ち取られ、福岡ソフトバンクホークスの4年連続11回目の日本一が決定した。
(画像はスポーツナビより)
ソ4勝 巨0勝
(勝)松本裕 (負)畠 (本)柳田(1回裏2ラン)、甲斐(シリーズ2本目、2回裏2ラン)
勝敗を分けたポイント
第四戦の勝敗を分けたポイントは次の2つだと考える。
①初回、2回表の巨人の攻撃
②ソフトバンク打線の振りの鋭さ
③巨人打線の、速いストレートへの対応
①初回、2回表の巨人の攻撃
1回表、巨人は和田から2本の2ベースで幸先よく1点を先制。この後は丸、岡本が倒れ、ウィーラーが四球で繋いだ後、6番中島が14球粘るも結局空振り三振に倒れた。2回表、先頭の田中俊太が出塁した後、8番、日本シリーズ初スタメンの岸田が送りバント。その後後続が倒れ無得点に終わった。
結果論だと、和田が比較的苦しんでいるうちに複数得点を取っておきたかった。しかし、中島に14球粘られるも根負けせずに四球を与えないなど、苦しいなりに試合を崩さない投球をした和田を褒めるべきだろう。巨人としても、単純に打てなかっただけで、ここで1点しか取れなかった結果を責めることはできない。
しかし、ここで注目したいのが、8番岸田に送りバントを命じた場面だ。巨人は1点ビハインドの場面、既に先発畠がマウンドを降りている。ここで同点止まりで攻撃を終えたところで、投手層の差が歴然と出るリリーフ勝負に持ち込まなければならず、ましてやソフトバンクは後攻であるため、何もプレッシャーにならない。著者としては、すんなりと送りバントをするのではなく、ランエンドヒットやバスターエンドランといった、プレッシャーをかけられる攻撃をしてほしかったと感じている。この場面に限ったことではないが、いくらソフトバンクの捕手が甲斐であるとはいえ、シリーズを通じて盗塁を試みたことすらなかったのは非常に残念である。
②巨人先発・畠の出来
戦力分析の章で、「畠は、調子がいい時はどの球団も打てないようなエース級のピッチングをするが、あっさりと打ち込まれ、早い段階でKOされてしまう試合も多い。」と述べた。この日の畠のストレートは、150キロ超えを頻繁に計測していたが、全体的に球が浮きがちで、甘く入るボールは多かった。さらに、ソフトバンク打線が速球にうまく対応していた。結果的に、柳田、甲斐の2ランホームランにより、2回途中でマウンドを降りることとなった。柳田に対しては初球の甘く入ったフォークボールを、甲斐に対してはベルト付近の高さのストレートを運ばれた。早々に4点を失い、かなり苦しい展開となった。
③巨人打線の、速いストレートへの対応
このポイントは、第四戦に限らず、全体を通して言えることかもしれない。巨人打線は、先発の和田から幸先よく1点を先制。攻略しきることはできなかったが、2回で50球以上の球数を投げさせるなど、食らいついていた。そして、ソフトバンクは2回で和田を諦め、本格派右腕の松本裕樹を投入。巨人としては、先発をこれだけ短いイニングで降ろすことができたのは非常に大きい。しかし、松本の140キロ台後半のストレートを中心とした投球に終始対応できず、その後の岩嵜、モイネロなどの150キロを超えるストレートにも全く対応できていなかった。最後までソフトバンク投手陣に対応できず、結果的にはシリーズ最低打率(.132)、シリーズ最少安打(16)など、攻撃に関するさまざまな不名誉記録を残し、敗退となってしまった。
第四戦の総評
全体としては、巨人が幸先よく先制することができたが、結局1点止まりに終わり、畠が早々にKOされて苦しい展開になってしまった。巨人打線は第一戦から第四戦まで、ソフトバンク投手陣の速いストレートに対応できずに沈黙した。
■シリーズ全体を振り返って
ソフトバンクの4連勝で終わった2020年の日本シリーズ。もともと予想していた投手力に加え、拮抗していると予想した打力など、戦力的に大きな差を感じたシリーズであった。しかし、著者としては戦力差もそうであるが、準備・確認や、選手一人ひとりの意識といった、戦力と関係ない部分でも大きな差がついていたことが非常に残念であった。さらに、ここまでは、巨人とソフトバンクという2つのチーム間の差であるが、今回の大差での決着にはセ・リーグとパ・リーグというリーグ間の差も関係していると私は考える。
本章では、このシリーズを通じて浮き彫りになった巨人、ソフトバンクのチーム間の戦力差、戦力以外の差を、所々リーグ間の差と関連付けながら考察する。
①戦力差
・投手力
まずは投手力を見ていこう。これは、シリーズ前から目に見えていた戦力差だ。ソフトバンクの投手は、ほとんどが生え抜き(最初からソフトバンクに所属していた選手)。つまり、ソフトバンクによって育てられた投手ばかり。それでいて、ほとんどの選手がなにかしら強い武器と、150キロを超えるストレートを持っている。このコンビネーションだけで、巨人の選手を手玉に取った。この基盤があれば、なかなか崩れることはなく、安定した投球ができる。このような投手が何人もいるため、層が非常に厚い。確かな育成基盤があり、それが厚い投手層を産み出している。
巨人にも、戸郷や畠、中川といった楽しみな生え抜き選手は存在する。しかし、ソフトバンクほど多くは出てきていないのが現状であり、いいものは持っているもののどこかしらに不安要素を抱える投手が非常に多い。ソフトバンクと同じぐらい資金力はある球団なので、ソフトバンクの投手育成の良いところを吸収し、できる限りその育成に資金を投じて、投手王国を築いてほしい。それができれば、毎年突発的な補強に頼る必要はなくなるはずだ。
(補強することが悪いことだと言ってるわけではない。)
・打力
さて、次は打力である。正直、投手力に関してはシリーズ前から差が分かりきっていた部分があった。しかし、レギュラーシーズンの数字上では分かりづらかった打力の差も、この日本シリーズで顕著にみられた。なぜ、巨人は全くと言っていいほど打てず、ソフトバンクは4試合で平均6.5点の得点が取れたのだろうか。
巨人打線がソフトバンクの投手陣に全く歯が立たなかったのは、終始150キロを超える速球に対応できなかったのが大きいだろう。ストレートに対応することができないと、どの変化球にも対応することが難しくなる。つまり、変化球が生きる。巨人の選手は、基本となるストレートに対応できないことで、全く的を絞れないまま凡打の山を築かされてしまった印象であった。この原因は巨人だけではなく、リーグ間の差にもあると私は考える。
パ・リーグでは、ソフトバンク以外にも楽天の則本や、オリックスの山本、日本ハムの有原など、先発投手でも150キロの速球を常時投げ込んでくる、いわばストレートで押せる投手が多い。しかしセ・リーグの先発投手は大体が140キロ台前半。中継ぎ投手でも150キロを超えてくる投手が少ない。このような速いボールに対応できなくとも、優勝できてしまうリーグなのだ。つまり、巨人の選手はほぼぶっつけ本番で150キロ台のストレートに挑むことになる。これでは厳しい。一方でソフトバンクの選手は、150キロに迫るストレートをしっかりと捉えた場面が随所に見られた。投球の基本であるストレート。これだけを見てもリーグ間で顕著に差が生じているように私は感じてしまう。
また、全体的に巨人の選手よりもソフトバンクの選手の方が思い切りのいいスイングができていた。現に、シリーズにおける本塁打数は巨人が1本でソフトバンクは7本。私がポイントに挙げていた周東の出塁回数がかなり少なくなっても、一発で得点を取ることができていた。
巨人は、うまく合わせにいくスイングで非力な印象を与えてしまう打者が多くみられたが、ソフトバンクは9番打者の甲斐でも自分のスイングでしっかりと振れていた。この違いも、リーグ間で同じ傾向がみられる。これはそういう傾向があるだけであり、一概には言えないが、セ・リーグの選手は特に下位打線であるほどコンパクトなスイングでミートしに行く傾向が強く、パ・リーグの選手は自分のスイングを崩さずに強く振れる選手が多い(決して大振りをするという意味ではない)。
このように、数字的には互角であっても、日本シリーズで差が顕著にみられたのは、チーム間だけでなく、リーグ間での課題でもあるといえるだろう。
②戦力以外の差
私が非常に残念に感じたのがこの部分である。巨人は、第1戦の丸のゲッツーや、6回表の栗原の2点タイムリー、第3戦の3点目の中村晃のタイムリーなど、勝負所で準備・確認を怠り失点する、あるいは好機を潰す場面がいくつも見られた。
一方のソフトバンクは、シリーズを通じて少しでも流れが変わりそうになると、捕手の甲斐を中心にしっかりと間を取り、空気を落ち着かせる場面が目立った。巨人にはそのようなシーンは少なかったように思える。
第三戦、ソフトバンクはベテランの長谷川がベース上で悔しさを露わにする場面があった。これほど闘志を前面に出す選手が巨人にはいただろうか。捕手の甲斐は大きなジェスチャーを駆使し、「低く投げろ」や「腕を振ってこい」という指示を出していた。ワンバウンドを投げた投手に対して拍手する場面もあった。巨人の捕手陣にはこのような大きいジェスチャーはほとんど見られなかった。
このような、チーム全体での1球にかける意識の差。戦力に関係ない部分であり、弱いチームほど徹底するべきこと。それが逆であった。こういうところをそつなくこなすのも、ソフトバンクの強さである。第一戦、第三戦、のそれぞれの先制ホームラン。第四戦の逆転ホームラン。栗原も中村晃も失投を1球で仕留めた。少ないチャンスを見事に活かす。ここにも1球に対する高い集中力が現れたのかもしれない。
■おわりに
全てにおいて、巨人とソフトバンクに差がついてしまったシリーズとなった。巨人としては、このシリーズを通じていくつもの課題が出てきたはずである。ソフトバンクとの差がどこにあったのか、それをどう改善するのかを球団全体で考え、来年以降に生かしてほしい。これは、巨人だけでなく、ソフトバンク以外の11球団にもいえるだろう。
また、セ・リーグとパ・リーグ全体でも大きな差が生まれているという事実を受け止め、セ・リーグ全体として強い危機感を持って改革をしていくべきである。
なぜ投手力、スイングスピードにリーグ間全体で差が生じているのか。また、走塁意識においても大きく差がついている(ここ数年の盗塁数を比較すれば一目瞭然)現実を受け止め、強い危機感を持ってもらいたい。
この記事では、巨人、セ・リーグの残念なところを述べることが多かったように感じたかもしれない。しかし、確実に言えるのは、ソフトバンクは総合的に非常に強いチームであるということだ。戦力的にもここまで層が厚く、それ以外の部分でも1球に対する集中力が高いチームはこれまでのプロ野球を見てもそうそうない。しかも、突発的な補強に頼らず育成基盤ができているため、この強さはある程度持続的に続いていくだろう。
的確なチーム作りで持続的に強いチームを作り上げたソフトバンク。この球団に残りの11球団がどう食らいつくのか。来年以降も注目していきたい。
…はい、これにて記事は終わりです!ふぅ…長かったですね…。これでも結構削りましたよ。気づいたら32000字(笑)。ほんとは、セ・リーグにDH制を入れない理由がないことや、左の吉川に代打で左の田中俊太を出さなきゃいけない層の薄さだったり、もっと書きたいことはあったしんけどね~(笑)。好きなことは無限に書けるものです。
拙い文章でしたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。この記事を読んで、野球好きな人が「あーなるほどな」って思ったり、「ここはちょっと意見が違うな」って思って、日本シリーズをもう1度詳しく振り返るきっかけになってくれたら幸いです!また、野球よくわからない人でも、「野球ってこんなに難しくて、こんなに奥深いスポーツなんだな」って思ってくれたら幸いです!