ホテル花小宿について話そう
人生、面白い事や楽しい事はいっぱいある。そして腹立つことや悲しい事もいっぱいある。こんな事とってあるの?とびっくりした。M&Aの会社の広告に花小宿の画像が載せられている。いくら何でも非常識だろうと思った。そして誤解をする人もいるだろうから花小宿について話そうと思う。
花小宿について
阪神淡路大震災後有馬の旅館もあちこち具合いが悪くなるところが出て来た。花小宿の前身の旅館も人が入っていないし、しんどいんだろうなあと思っていたら閉めるという話が伝わって来た。
その時、コロナ期の今と同様、復興策を色々考えていた。震災で人々のニーズや考え方が変わるのだろうか?
その一つが高次元化、利己主義から利他主義へ、地球環境を考える時代になる。その時に地球環境を考える。障害のある人にも配慮して使いやすい宿をつくる。食べ残しが出るような旅館料理は止める。ホテルのような合理的な料金体制にする。つまり当時では泊食分離と言っていたが部屋代と食事代を分ける。その他色々な旅館の課題を解決する必要があった。
閉めた(廃業届を出していなかった)花小宿の前身の宿をつかって改修すれば前期の課題をコロンブスのタマゴの様に解決できるのではないかと考えた。
前身の旅館をやっていたのは、おとうちゃんとおかあちゃんと長女。そして次女もいた。
おとうちゃんとうちの親父は親しかったし、共通の親戚があったので閉めた旅館の話を持って行った。
改修計画
僕は購入ではなく賃借をしようと考えた。一番の理由は次女はバツイチで小学生の息子がいる。20年たったら「旅館をやりたい」というかもしれない。その時は彼がやっても良いやんかと考えた。そして僕の息子たちも旅館をやるかどうかわからない。当時の社会情勢は厳しく、旅館が生き残れるとは限らないと考えたからだ。
僕が示した賃貸額を親父は高すぎると言っていたし、知り合いは「こんなアウシュビッツの処刑場みたいな浴場をどうするの?」と言っていた。また近所の人はボロボロの塀を見て「有馬の恥だ(景観上の)」と言っていた。
でも僕には勝算があった。その話は別のnoteで書きたい。
花小宿は温泉寺に登る階段を挟んで2つの建物に分かれていた。家主さんたちが住んでいる場所は真ん中に庭がある。そこを茶店に改修する。それを娘さんたちが運営する。
うち所は道路に面した木造2階建ての部分を借りる事にした。
思惑通り、花小宿は好評を得て月日は流れ、20余年を経た現在でも多くのお客様にご愛顧いただいている。
買ってくれへんか?
ある日、おかあちゃんから茶店にしている部分を買ってくれへんか?と言ってきた。
買うという事は、買って茶店のある建物を改修して運営しなければいけない。改修費は花小宿の例も考えれば最低2億は必要だと思った。また工事車両が入る道にも面していないので工事費が高くつくだろう。やりにくい。
また庭があるのでメンテナンス費用もかかる。
建物を潰したとしても崖があるので新規に建物を建てる事は難しい。既存の建物を活かして改修するしか手はない。
もちろん路線価も調べた。
その上で最大出せる金額として5000万を提示した。
そしたら一言「一桁違う」と言われた。あちゃ~!
それ以上で買っても採算は取れるはずがないやん。
買う奴がいるんや~!
しばらくして、おかあちゃんがニコニコしてやって来た。
嫌な予感・・・
「御所さん。御所さんの好きなように改修して、御所さんに運営してもらいたいという人がいるのだけど どうだろう?」
まあ話を聞いて条件が合うなら良いよと返事をした。
見つけた購入者は中国人だった。やっぱり!・・・っと身構えた。
そこで会計士の先生を同伴で会見に臨んだ。2~3回は会ったと思う。
中国人の友達もたくさんいるし、中国人がすべて悪者ではない。まして今回中国人と呼ぶ購入者も基本的には悪者ではないと思う。思い違いをしただろうし、今は高く買って失敗したと思っているだろうと思っているだろう。
もしやるとしたら、こんなプランでどうかというのを示した。
中国人は、有名な有馬温泉に拠点を持つのだから自分たちの思いも入れたいのはわかる。それでも成り立つだろうプランを作るしかない。
おかあちゃんたちも同席しているので、借りている身としては「高く買ったらあかんよ!」とは言えなかった。
改修費に2億円はかかるよと言ったら「3000万ぐらいで出来るんじゃないか?」と言った。彼らの側に日本人の設計士がいたので、「彼に聞いてみたら?」と言ったら、設計士は「新築並みにお金はかかります。」
するとおかあちゃんが「新築並みに?」とびっくりしていた。
相場というかどれぐらいかかるか分からない状態で夢を見ているのだから話が合うわけはない。
話の中で中国人は花小宿の部分も欲しいと考えたようだ。おかあちゃんは家賃収入のある花小宿を売るという事は、将来収入もなくなるので渋っていたようだが、あわせて4億だったら売っても良いと最終的に考えたようだ。
中国人は事業費は6億かと言っていたので、改修費2億を引くと4億になる。不動産屋などが入っているので、実際いくら投資をしたか、おかあちゃんの手元にいくら入って、いくら税金を払ったかは知らないが、中国人は4億で買ったみたいだ。
中国の常識と日本の常識
ある時、所有者が変わったので家賃をどこどこに振り込んで欲しいという連絡が入った。
そしてその後、家賃を増額して欲しいという話が出始めた。
花小宿の部分を2億で買ったとすれば、最低6%の利回りは必要なのだ。つまり年間1200万の家賃収入が必要という事になる。という事は最低家賃が100万欲しいという事になる。
それよりも多かったから花小宿は2億5千万の計算をしているのかなと思った。どちらにしてもとんでもないアップだ。
でも色々な日本語が達者な中国人がやって来て「家賃をあげろ」と言ってきた。そこで中国人に日本語がわかる中国人の弁護士か中国語が話せる日本人の弁護士を付けて、弁護士同士で話をさせようと言った。
中国では地権者が自由に家賃を決められる。ある日突然倍の家賃を言われることになる。借主は撤退するか払うかの選択肢しかない。それが中国の常識なのだ。
でも日本では借地借家法があり、「貸してしまうと取られたと思え」と言われるように借主が守られている。
弁護士の戦い
弁護士同士の話し合いが始まった。弁護士にとっては結論はだいたい決まっている。落としどころ。そして調停で決着すれば弁護士はどちらも楽できる。
うちの弁護士の先生が笑って言う。向こうの弁護士と会見して、「チラッと見ると着手金200万も取っている。」
結局、日本人の方が悪で、相手が欲しがっているのに付け込んで、使い勝手の悪い土地建物と借家借地法で守られているモノを高く売って、弁護士は弁護士で普通より高い着手金を取ったんだ。
最初に調定額が示されて、僕はOKを出した。
でも先方が納得しなくで、土地の鑑定評価やなんやかんや資料を出して戦いが始まった。最終的には裁判所の鑑定評価が示された。その額は最初の調定額よりも少し安い額だ。約3年間の戦いが今年の8月に決着した。
双方がいらん金を払ったことになる。
御気の毒な中国人
中国人は複数の仲間と購入したみたいだ。めちゃくちゃの金持ちではなさそう。仲間割れをしたのかもしれない。彼らにとって高い授業料になったのだろう。
4億の6%・・・年間2400万の収入を得なければいけない。もう3年にはなるだろうから、7200万円は得なければいけない。
うちからの支払いの家賃は一部、おかあちゃん所に流れているので、中国人は今までで5000万は損した事になるだろう。所有を続けていると年間1500万以上損をすることになる。
だからか不動産屋に売却の話を持って行ったんだろう。投資物件で年間3%の利回りがあるよという内容。茶店の方は収入が無いのでいくらにしているのか分からない。
30年間で回収できる・・・・と言っても日本人はまず買わないだろう。
そして花小宿の建物があと30年もつかどうか?
うちは花小宿の賞味期限か消費期限が過ぎたと判断したら撤退するし、採算性が合わなくなってきたと思えば撤退する。
そうすると駐車場もない温泉もない。建て替えも出来ない旅館を誰が買うか借りるかという事になる。うちが払っている額以上で借りる人はいないだろう。
不動産屋に花小宿の名前が出ていたので、弁護士から文章を送り削除してもらった。
そしたら今度はM&Aの広告に花小宿の写真が掲載されている。
どんなルートでどのようになったのだろうか?興味がある。
もちろん弁護士を通じて削除依頼をしている。損害が発生していないので損害賠償は今の所無理だろうとの事。
どちらにしても中国人が焦っているのだろうと思う。毎年1500万づつ損をしているので、誰かあほな奴を見つけて売ってしまわないといけないのだから。
僕の中国人の友達は、中国の不動産バブルははじけているという。
うちはたまたま顧問弁護士がいたから戦えたが、日本のあちこちで同様の事が起こっているかもしれない。