声優レアグルーヴ ディスクガイド Part3
”声優レアグルーヴ”とは…
声優が歌う90年代〜2000年代前半の楽曲を中心とした、有名・無名、タイアップ・ノンタイアップ、個人名義・キャラクターソングの区別なく再評価するムーヴメント。和モノ(和製レアグルーヴ)、J-POP、アニソンなど様々な文脈の狭間で眠っていた数々の名曲をダンスミュージック基準+少しの思い入れで選曲したものである。
2014~2015年に公開し、一部好事家たちの間で密かに話題になった『声優レアグルーヴ ディスクガイド』が久々に復活!
今の情勢が無事収まった後にはクラブで聴きたいよね!という願いを込めて「夏」をテーマに、声優レアグルーヴcrew+ゲスト3名で20枚選盤しました。知られざる声優楽曲の魅力の一端がここに!
なお、このディスクガイド記事自体は全文無料でお楽しみいただけますが、noteの有料機能を使い、我々がいつもイベントを開催している渋谷OTOへのドネーションを1口500円で募ります。※決済手数料以外は全てOTOへお渡しします。
この記事を500円で購入いただいた方へはささやかながらお礼として、”あの3人組”オンリーのDJmix(mixed by 犬重)のDLリンクを巻末につけています。もし余裕がありましたらご協力いただけますと嬉しいです。
(500円以上支援してもいいよ!という方は下部のサポートからお願いします。こちらの分もOTOにお渡しします)
ちなみに、各紹介記事の下の駿河屋のリンクから中古CDを購入いただいた場合に入る、アフィリエイト報酬もOTOに渡します!!在庫ないものもありますが、奮ってご購入ください!
※2020.4.20 追記
駿河屋リンク先、現状8割売り切れているんですが、こちらのリンクを踏んでから駿河屋で他のものを購入いただいてもサポートになるようなので、もし気が向いたらご協力ください・・・モノ自体はAmazonマケプレなどで購入できるものも多いです
※2020.9.20 さらに追記
たくさんの方のご協力により、¥42,000のご支援が集まりました。ここから手数料を除いた¥35,000を渋谷OTOにお渡しさせていただきました!本当にありがとうございます。
引き続き、頂いた分については渋谷OTOにお渡しする予定です。
手塚ちはる / DIVE INTO CARNIVAL(1998)
ビーイング系ラテンJ-POPの系譜
東海ラジオ『カーニバルだよ、ちはる組』オープニング・テーマ。声優の好盤を数多く排出したユーメックス FUTURE LANDレーベルからのリリース。 ランバダをカーニバル風にしたようなアレンジで、明るすぎない曲調が日本の蒸し暑い夏を連想させる。
作編曲を手掛けた大堀薫はベーシストとしてビーイング所属アーティストのレコーディングに多数参加している。歌メロがMi-Ke『想い出の九十九里浜』に似ているのもその縁からか。
カップリングには番組アシスタントを務めていた平田宏美とのデュエット曲を収録。(ISHII)
'86グランプリ オールスターオンステージ アニメトピア歌謡音楽祭(1986)
元祖"アニラジの曲はいい曲"
元祖アニラジと言われるラジオ大阪の人気番組『アニメトピア』の、初代から4代目までのパーソナリティーが集合した企画アルバム。 初代の麻上洋子&吉田理保子、2代目・田中真弓&島津冴子ら、芸達者なパーソナリティー陣が世代を跨いで組んだデュエット曲が楽しい。
4代目・冨永みーながソロで歌うM2『渚のリトル・ラブ・ストーリー』は、作詞作曲を務める古田喜昭の代表曲、太田貴子『デリケートに好きして』を彷彿とさせるメロディーラインがチャーミングな良曲。 他の作家陣もマクロス楽曲の阿佐茜・羽田健太郎コンビや久石譲など豪華で一曲一曲のクオリティが高い。
音楽面のセンスの良さは97年に復活した「アニメトピアR」にも引き継がれ、パーソナリティーの坂本真綾、樋口智恵子によるユニット、Whoops!!も松井寛ら名作家の手による名盤を残した。(ISHII)
ウェディングピーチ Summer Carnival(1996)
ジャケットがまず良い
FURILの歌うOVA『ウェディングピーチDX』のOP・EDに氷上恭子の歌う同アニメの挿入歌と三石琴乃が歌うキャラクターソング、録り下ろしのラジオドラマを収録したアルバム。タイトルがSummer Carnivalだけあってか、ジャケットはわたせせいぞうを彷彿させる青空、雲、スーツ姿のキャラクターとなっている。OVAでは大人向けの要素がプラスされていたので、こちらのラジオドラマも少し大人向け?な印象。
アニメに使用された楽曲のアルバムであるが、全体的に小気味好いバンドサウンドでまとまりがよいため、ステレオでループにして聴いても良い意味で耳に残らない。 しかしラジオドラマは大変耳に残る。(犬重)
佐藤聡美 / 恋のメロンソーダ(2014)
7inch限定の爽やかなサーフロック
けいおんの田井中律役などで知られる佐藤聡美の1stライブツアーに併せ作成された会場限定7inchレコードの一曲。エンドウ.(GEEKS)作詞、作曲、編曲の乙女の恋心を歌った爽やかなサーフロック調の楽曲。同ツアーのグッズのデザインも手がけた中山敦支による80年代のアイドルイメージしたジャケットも雰囲気が出ていて良い。メロンソーダを飲みながらレコードや映画の話に聞き入ってくれる彼女がいたらと思うと少し悲しくなる。
ツアーDVDにはリミックスverのCDが同封されたがこちらは打ち込み系になっており断然原曲がおすすめ。ただ現状7inchの購入かDVDの映像でのみでしか聴くことができないのが難点。(犬重)
田村ゆかり / summer melody(2001)
リゾートに来たのに雨天でゲンナリ...みたいな
2001年リリースのEP。夏をテーマにしたこの盤でオススメしたいのが3曲目に収録されている『青空にあいたい』田村ゆかりさんの楽曲郡の中では珍しくダブ、レゲエに寄った楽曲である。現在だとサブベースと言えるほど特徴的な超低音ベースは是非大きなスピーカーで鳴らして頂きたい。
ちなみに、作詞でクレジットされてる『花梨』は田村ゆかりさんと構成作家の伊福部崇さんの共作ペンネーム。(ぐり)
金月真美 / 夏に、まだ少し・・・(1996)
真夏の残響音祭り
1996年リリースのシングル。発売日当日の最高気温は31.6℃。歌詞、アレンジと共に夏を思わせる要素を全部乗せした極濃夏感の1枚。当時のミックス処理におけるリバーブ(残響音を加える音響処理)の質感が存分に楽しめる1枚。サックスは最高。(ぐり)
望月久代 / 静夏 -Silent Summer-(2002)
超音波声優の割と真面目な夏の音楽
シスプリとワるきゅーレでオタク脳に周波数を刻み込んだ望月久代の1st。リリース日からか全体を通して夏がテーマになっていて、開放的で爽やかな夏の印象を覚える。この頃一般化してきた電波系の曲は声質に反して少なく、むしろその他の曲の出来がとても良い。この部分の作編曲は全て桑原和男という方で、ボーカルハウスからチルなバラードまで幅も広い。現在はエンジニアとしての活動がメインとのことで AV Watch の記事に興味深いインタビューが掲載されている。チープなシンセリードとスラップの効いたベースが心地よいラグジュアリーな DoYo-NaMi は必聴。ぜひ-6%で再生してほしい。(una)
潘恵子 / 裸足のフローネ(OP)フローネの夢(ED)
家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ(1981)
日差しと海風 砂浜と子供
潘恵子の声は、声優として魅力的な声と伸びがあり歌唱に優れた声の両方がほぼ同じ雰囲気で、どちらを聞いても あぁ潘恵子だな とわかる所が本当に素晴らしい。夏のことを考えた時、潘恵子の歌うフローネの主題歌が頭から離れなくなってしまった。マリンバやフルートで彩られゆったりとしながら軽快な曲調は、突然に先の見えない無人島生活を強いられながら絶望に取り込まれずに波打ち際を笑いながら駆けるフローネと作品そのもである。島民達は紆余曲折ありつつ変化する状況の判断/施策/実施の末、島を脱出し無事オーストラリアに自力でたどり着くのだ。(una)
三石琴乃 / Cotton Colour(1994)
一曲目イントロの”せーのっ”感
94年リリースの3rd。アップテンポな曲は音色に時代感を感じてしまうのですが、ウォールオブサウンドメイカー岩崎元是が作編曲した『My Dolphin Boy』や小泉今日子『Fade Out』を彷彿とさせるクールなディープ・ハウス曲『La Lune Rouge』など良曲が多数入っています。(coffee_and_tv)
緒方恵美 / Marine Legend (1995)
ラッセンの世界観っぽい
95年リリースの1st。ニューエイジ・ヒーリング風な雰囲気を載せたデジタルリゾートポップスが大半です。打ち込みレゲエの『ボートに乗った日』が特にいい。曲の世界観に合わせて少年声・少女声を使い分けていて本当に同じ人が歌っているのかと驚くはず。男八段な緒方恵美しか知らない人は是非聴いてほしい。(coffee_and_tv)
フレイア,レイナ,マキナ(鈴木みのり,東山奈央,西田望見)/ クラゲ音頭 『マクロスΔ オリジナルサウンドトラック1』(2016)
酷暑に聴きたいクラゲ目線のチルアウト楽曲
“夏”をテーマにとの発注で、2016年に発売されたアニメ『マクロスΔ』のサウンドトラックからチョイス。劇中歌としてなんでもないシーンで使用された不思議な塩梅の小品で、自分のDJでかけるタイミングをうかがってた楽曲だったのですが、なかなかプレイできなかったのでこの場で供養いたします。
肝はレイドバックしたスチールギターの音色とアンニュイな歌詞。クラゲの死生観を絶妙なニュアンスで歌っていて、完全に虚脱します。“飲んで食って産んで、あとは死ぬだけさ〜”という考えさせるようで一切の思考を受け付けないリリックに、思いっきり脱力させられることうけあい。聴きようによってはザ・フォーク・クルセダーズ『帰って来たヨッパライ』を彷彿ともさせますが、この曲を聴いた思考停止の脳みそではゆら〜りゆらゆらする以外の手段がございません……。好きなようにやって、そんでおさらばさ〜(shakke)
イカ娘(金元寿子) / INVADER(2012)
世界の夏音楽を凝縮したエンドレスサマーレコード
μ's、ミルキィホームズなど10年代ランティスを支えたコンポーザー鈴木裕明・高田暁両氏がそれらが本格化する前に参加した「侵略!イカ娘」のイカ娘キャラソンのみ13曲の12年のアルバム。
日常系夏作品らしく西海岸パンク~サーフロックを基本に、祭囃子、ソカ、カリプソ…と各人の考える世界中の夏要素が各曲に凝縮されていて、キャリア初期のコンポーザーの情熱と夏を純粋抽出した快楽性がカキ氷シロップのような濃厚な味わいで広がります。(DJ声優パラダイス)
草尾毅 / '90s -NINETY'S-(1990)
猛暑の午後に滴り落ちるアシッドフォーク
鎧伝サムライトルーパーのキャラクターソング5曲・新曲6曲をアルバムとして再構成した90年の企画アルバム。ムーンライダーズの岡田徹がプロデュースを務め、シド・バレット的な奇妙な浮遊感のあるアシッドフォークを展開しています。以降の彼の作品にはないナーバスな危うさが充満していて、猛暑に照りつける陽射しが作るような湿った陰影が描き出されます。(DJ声優パラダイス)
玉川紗己子 / あなたがここにいてほしい(1994)
夕暮れノスタルジックドリームポップ
「逮捕しちゃうぞ」のイメージが強い玉川紗己子さんですが、このアルバムでは一転してアンビエントポップをやっています。高音を張りすぎず空間を広げたトラックに伸びやかなボーカルがマッチしてます。冬にもいいですが、夏のチルアウトとしても最高の1枚です。(ナーディウス)
高橋美佳子 / 超プラドル(2000)
超・プライベートアイドル
平井堅やMISHA等を手がけた松原憲が全編通して作編曲をしています。夏らしい活発な曲を中心に幅広くアレンジが加えられたサウンドに、ド直球なボーカルが良いアクセントとなっています。いかにも夏!なジャケット。(ナーディウス)
岩男潤子 / FESTAZINHO(2001)
声優×ラテンミュージックの1つの到達点
キャリアを通じて様々な音楽ジャンルに意欲的な姿勢をみせる岩男だが、本作ではスタイリッシュなラテンに挑戦しており、当時の配偶者である山本はるきちも作曲で参加。醸し出されるアダルトな機微にゆるりと身を委ねたい。3曲入りのマキシながら初夏の浮き立ち、盛夏の騒々しさ、晩夏の気怠さといった時季の移ろいが見事に表現された傑作。(キュアにゃんにゃんパラダイス)
水谷優子 / VIBIT(1994)
ビーチリゾートの潮風に煌めくガールポップ
90年代前後にアニメ関連曲の作編曲を無数に手掛けた藤原いくろうがプロダクションと全編曲を担当。アイドルソング風味の疾走感を包み込むトロピカルな音作りが堪らない。ツボを押さえたコーラスワークが印象に残る鮮烈なガールポップ「花束がラインに乗って」、アーバンちっくなOLポップス「朝模様」が特にオススメ。突き抜けて陽気なこんなサウンドを今こそ聴きたい。『声優レアグルーヴ』ディスクガイドpart2でも選盤されていた彼女だが、2016年に急逝したことが惜しまれる。(キュアにゃんにゃんパラダイス)
アンジェ (CV. 古賀 葵)、プリンセス (CV. 関根明良)、ドロシー (CV. 大地 葉)、ベアトリス (CV. 影山 灯)、ちせ (CV. 古木のぞみ) / Nowhere Land(2020)
間奏で口笛の入るギターポップは名曲
コロナ感染症の影響で残念ながら公開延期となってしまったプリンセス・プリンシパル劇場版EDテーマ収録シングル。表題曲もメロトロン使いの英国味(作品世界観が"英国”をベースとしているのでニヤリ)溢れる名曲ですが、推薦はC/W曲「Gratitude」。メインキャスト5人が歌唱する全英語歌詞(!)のギターポップ。美しい歌詞、湿ったベース、口笛、そしてちょっと哀しいメロディ。The La’s、Belle & Sebastian、The Cardigans、、、レコ屋へ通っていたあの頃を思い出します。作・編曲は劇伴も担当している高橋諒氏。(氏はCorneliusのリミックスコンテストで最優秀作品賞を受賞したアキシブ的琴線にふれるエピソードも) 無事の公開を祈っています。悲しみの中でも喜びが続きますように。。。(とりでたくみ)
浅野真澄 / happyend(2005)
海に行くつもりになるギターポップ
2005年リリースのアルバム。浅野真澄本人曰く「子供時代の夏休みを思わせる」、疾走感溢れるギターポップ「夏休み」を収録。楽曲はアキシブ系を知る上で最も重要なアーティストの一人、橋本由香利の手によるもので、Maybelle時代のネオアコ作品との連続性も興味深い。(BJ)
坂部剛 / We are the 夏
『聖剣使いの禁呪詠唱<ワールドブレイク>Blu-ray&DVD Vol.1(初回生産版特典)サウンドトラックCD Vol.1』(2015)
海の家で聞きたいサンバフュージョン
番外編として、「聖剣使いの禁呪詠唱<ワールドブレイク>」劇伴に収録のサンバフュージョン「We are the 夏」を紹介したい。第5話のサブタイトルと同名で、夏合宿の海水浴シーンで使用されている。坂部剛といえば、声優作品では伊藤美来1stアルバムのオープニング&クロージングトラックが記憶に新しい。劇伴作品では、モータウン&スウィンギンに展開する「オオカミ少女と黒王子」のメインテーマが特に重要だ。(BJ)
<執筆者>
声優レアグルーヴcrew
犬重
ぐり
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DJ声優パラダイス
ナーディウス
ISHII
ゲスト寄稿
BJ
とりでたくみ
キュアにゃんにゃんパラダイス
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