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元彼が結婚した話

久々にインスタグラムを開いたら、元彼が結婚していた。

私は、SNSと言えばもっぱらⅩ(旧Twitterって書くのも、もういいかな)なのだけど、結婚指輪を探すため、久々にインスタグラムを開いたら、元彼と共通の知人の投稿で、彼が結婚したことを知った。
半年以上も開いてなかったのに、何でこのタイミングで開いてしまったのか。しかも、自分の「結婚指輪」を探している時に。

自分の悪運を呪うと同時に、今まで思い出すこともなかった元彼の「結婚」という言葉がぐわーっと心に入り込んできた。
その投稿を見て以来、無意識に元彼について考えるようになってしまった。



元彼という言葉があまり好きではないので、仮にTとしたい。

Tとは大学2年生から社会人まで、約5年間付き合った。
初めての彼氏で、大学時代は喧嘩しつつも仲良く過ごしていたが、私が社会人、彼が大学院生となり、すれ違いや将来に対する漠然とした不安から、私が別れを切り出した。

漠然とした不安とは、本当に小さいことで、例えば一緒に飲み会に行った帰り、具合が悪くなり朝までファミレスとかで一緒にいてほしい(お互いに実家暮らしだった)と言うわたしに「大丈夫」という言葉で、ひとり電車に乗せて、案の定途中で具合が悪くなり下車して、終電がなくなったことを連絡したら、彼は既に家に帰って寝ていたり、会う約束をしていたのに、お金がないという理由でファミレスにすら来てくれなかったり(私が奢るよと言っても、聞き入れられなかった)。

今思えば、わたしの独りよがりで構ってほしい気持ちが出まくった結果なのだけど、彼が一人暮らしを始める時も、私に相談してくれたことを別の人にも相談して、私に何も言わずそっちの案に決めてしまったり、「私って彼の何なんだろう」と思うことが多かった。
私はまだ幼く、彼の気持ちを尊重してあげられなかったし、彼も私の「構って」に対応できるほど余裕はなかったのだと思う。

別れた後、わたしはとても我儘で、別の人とお付き合いしてたのに、Tと連絡を取ったりすることもあった。
他の人を知って、彼の優しさが身に沁みて、やり直したいと思ったこともあったけど、徐々に連絡を取らなくなり、遠い存在となっていった。



もし、別れずにあのまま付き合っていたら、きっと27歳くらいで結婚して、20代のうちに子供ができていたかもしれない。
共通の集まり(大学のサークルの同期だった)にも、ずっと顔を出し続けていられたかもしれない。
そういう風に考えたことは、一度や二度ではない。自分の人生が上手く進まない度に、「あの時別れていなかったら…」と思うことは多かった。

それでも幸運なことに、4年前、今の彼と出会い、ゆっくり時間をかけてお互いを想い合える関係になることができた。
今の関係に、不満があるわけではない(あるとしたら、入籍が伸びてしまっていることくらいだけど、理由もあって、仕方のないことだ)。
穏やかに過ごしてきたし、Tとは見た目も中身も全く違う彼のことを、比較したりすることもなかった。
それなのに、今になってどうしてこんなにも心が揺れ動くのだろう。

動揺する理由を考えてみたけれど、もしかしたらTと別れる選択をしたことを、悔いている自分がいるのかもしれない。
昔の自分が幼かった、今だったらTの、私だけを大事にしない、みんなを大事にする優しさも、もっとわかったはずなのに。
別れなかった未来があったなら、隣にいるのは私だったのに。

いや、違う。そうじゃない。
別れず、付き合い続けられたとしても、きっと私はその関係を壊してしまっただろう。
他人を思いやること、一度すれ違ったら、元通りの関係には戻れないことを知ったのは、Tと別れたからなのだ。
一度も別れる経験をしなかったら、人を大事にする大切さを、身をもって知ることはなかった。
一度壊れたら二度と戻ることはないからこそ、今の彼を大事にし続けようと感覚的に思うことができるのだ。

わたしの中のこの、何とも言えない侘しさは、単純に、昔一番近くにいた相手が、全く交わらない周線上にいるということなのではないか。
私は、Tから直接報告を受けることはないし、どの節目にも関係することはない。
Tの奥さんからしたら、私は「元彼女」だし、会いたくない存在で、私側だって、今の彼も元交際相手と会うことは、きっといい顔をしない。

ここでデミロマ的考えになるのだけど、Tは「友達」から大きくなった存在だからこそ、一人の人としてはきっと今でも好きなのだ。
一人の人として、「おめでとう」を言いたいし、私が結婚するときも「おめでとう」と言ってほしい。
でも、Tは友達と恋人は違うという考えの人だし、世間的にはそれがマジョリティであることは、私もわかっている。

そんなことを言っても、別れてから長い月日が経っているのだから、全く違う人になってるだろうし、会ったら会ったで「この人のこと全然理解できない」となって、パッと冷めてしまう気もしている。
私が大好きだった彼はもういないし、心が通じ合うことはもうない。
会えばきっと、懐かしさだけが込み上げる、私の淡い青春の想い出としての存在なのだ。

そんなことを考えている中で、今の彼のことを思い浮かべた。
自分以上に私のことを大事にしてくれていることが、言葉がなくても伝わる彼。
ただ、計画性がなくて、結婚とかそういうイベントが全く進まないけど。
私は、わたしの幸せのために、昔に思いを馳せるのは、これっきりにしようと思っている。


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