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第1回:企業系VTuberはこうして生まれる
2021年の3月。
まだまだ世の中はコロナ禍ではあったものの停滞していた経済活動は制限こそありながらも動き始めていた頃。自分は企業系VTuberの制作・ディレクターの仕事が増えていた。
VTuber業界の時の流れは本当に早い。この企業系VTuberという言葉のコンテクストも、企業が商品をPRする目的で活動する燦鳥ノムや根羽清ココロのようなVTuberから、ホロライブやにじさんじといった企業の事務所に所属するVTuberという意味合いに変わっていった。自分のような経歴を持っている身としては、前者の意味合いの方が今でも強い。
さかのぼってみると、Googleカレンダーの予定では、2021年の3月5日に最初の打ち合わせが入っていた。
事前に聞いていた話としては、飲むあんこという商品を手がけている会社がVTuberを運営したいので、知り合いのツテから当時自分が所属していた制作会社にアポイントを取ったという流れだったはずだ。
当時の自分は、VTuberを立ち上げする生み出すところから関わることはなかったものの、すでに3つの企業系VTuberの制作・ディレクションまわりの仕事に関わっていた(同時期に関わり始めたものも含め)。
前職ではゼロからキャラクターを生み出すことも経験していたので、自分の経歴を活かしつつ挑戦ができる魅力的な仕事になるのでは? という心持ちだったような気がする。
実際に飲むあんこを手がけるUNDERWATER社の平子社長と出会ったのも、この打ち合わせのときだったと記憶している。やりたい方向性の話を聞きつつ、印象的だったのは売上や利益が出るということよりもやってみてどうなるのか試してみたいという平子さんの考え方だだった。
そこからの付き合いの中で、この平子社長というユニークな人格と人を引っ張る胆力には驚きや困惑もありつつ接していくことになるのだが、それはのちのち。
経験上、コンテンツビジネスは投資というよりも投機に近い。そんな投資ないし投機ができるのは別に利益を出している何かしらかのビックタイトルや別事業があるからが多く、それでもビジネス上のシビアな目線でみれば結果が出ないコンテンツは容赦なく消えていく運命から逃れられない。
ただこだわって作るだけでは人目につかず、ロジカルな戦略だけでは真に人の心を打つようなコンテンツは作れない。その両方と運しだいだ。アニメやゲーム、そしてVTuberが「仕事」としてコモディティ化したのは周知だが、やはり「仕事」としてやっていくだけでは難しい領域なのである。
とはいえ、利益を出すということよりもどう面白く作り上げていけるか? ということが優位であるということは、制作側の人間である自分にとっても非常にやりやすいのは事実だ。
shiroANプロジェクトは予算規模として現在に至るまで多くはないが、オリジナルの曲とMV、そしてキャラクターデザインを作ってプロジェクトをスタートしていこうということになり、楽曲まわりは平子さんが、そしてキャラクターデザインまわりを自分が担当するということになった。
方針ははっきりと見えた、そして報酬としては小さいながらもやりたいようにやれる範囲が広い案件というところから、自分にとってのshiroANプロジェクトはスタートした。
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