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西野名菜のミュージカル『DREAM AGAIN』を観て、純粋が最後に勝つ世界になって欲しいと願った。

昨日、ボーカリストでダンサーの西野名菜さんが出演するミュージカル『DREAM AGAIN』を観てきました。

ドリームアゲイン、夢をふたたび。
どんな夢をふたたびなのかと言うと、「一度芸能の道で挫折した人たちの夢」なのですね。

エンタメ愛は強いが弱小芸能プロダクションの元にスター発掘の為の人気ドキュメンタリー番組の企画が持ち込まれる。高額な放送料はかかるが、プロダクションが注目してもらう大きなチャンス!これに乗るしかないっ!そこで、全財産を投げ出してドキュメンタリー番組制作に向けて動き出す。

が、今所属しているのは、落ちこぼれの練習生ばかり。
一度夢に挫折した練習生たちに密着取材するその番組のサブタイトルは『DREAM AGAINプロジェクト』
後に引けない社長は、アメリカで活動しているカリスマ歌手を呼び戻し、ボーカルコーチとして落ちこぼれ練習生たちを成長させ、番組を成功させようと奮闘する。

公式サイト・ストーリー解説より

名菜さんには昨年stand.fm上でインタビューをさせていただき(その時に書いた記事はこちら)、そこで苦しかった時代のことも少し伺っていたので、これは現実とリンクしたリアルな話かな…と想像しながら観に行きました。

名菜さんは、極上の歌声を聴かせてくれる本物のエンターテイナーです。
何度かシェアしましたが、ここにも貼りますね。


実際に、名菜さんの「ドリームアゲイン」公演なのかな、と思えるような熱いメッセージも公式サイトの中に見つけたので、きっと間違いない。


エンターテイメントって、素晴らしいけれど大変ですよね。
実力だけではどうにもならないことがたくさんあるのだろうと、才能がたっぷりあっても世に出ていない人々に会うたび想像します。

劇はとてもコミカルで完全なフィクションでしたが、各々の役が発するセリフの中にはおそらく現実を絡ませた話が多くあり。
もしかしてこの劇は、「ドリームアゲイン」したいシンガー達を集めて世の中にお披露目する見本市のような意図もあるのかな?などと背景を知りたくなるような演出でした。

出演者は、GOWさん、西野名菜さん、山本偉地位さん、い〜ちゃん(B.M.H)、米野賢道さん、岩田知樹さん、江副貴紀さん、たかさきあやなさん、AOIさん(元Ange et Folletta)、和美珠世さん。

私にとっては名菜さん以外の方は初めて観る方々ばかりでしたが、親に反対されて…とか事務所の都合で…アメリカで心折れて…と、各々すごくリアルなドリームのへし折れ方が表現されていました。

⚫︎GOWさんの歌声がすごかった

やっぱりこの公演での一番の収穫は、GOWさんの歌声ですね。
GOWさん、特徴的な名前なのですぐに「5時に夢中!の黒船特派員の人だ」と思い浮かんだのですが…
彼女がシンガーだとは全く知りませんでした。

その彼女の歌声が、とにかくすごい。
劇は彼女のセリフに展開を任せて進んでいくので、ほぼステージに立ち続け、そしてソロ歌唱曲もどの出演者よりも多かったのですが…
ラスト曲、バラードでしたが、2時間ステージに立った人がこの歌声が出せるんだ!という、ものすごいエネルギーがこもっていました。

GOWさんの美しくパワフルな歌声を堪能できる良い動画を探し中ですが、ひとまず玉置浩二さんの「行かないで」カバーはいかがでしょうか。

非常に器用な方なんだろうと想像します。周りを引っ張り、明るくし、舞台の中心を支えるGOWさん。
ともすれば負に引っ張られてしまうテーマを常に明るく進めていったのは、彼女のオーラが非常に大きかったと思います。

そんな彼女の「ドリームアゲイン」の目指すところはラストシーンで語られていましたが、実際のところはどうなのか気になってしまうほど、惹き込まれる存在感でした。


⚫︎エンタメと優しさは両立するのか?

笑いあり、興奮ありとあっという間の2時間ではありましたが、この劇から総じて感じていたのは、優しい空気で。
それはきっと西野名菜さんそのものを表すんだろうなと、言葉にすると陳腐ではあるけれど、帰り道にはずっと考え込んでいました。

名菜さんはパッと見ただけで華があり、しかもダンスやボーカルの技術は超一流。
彼女に触れると誰もが「何かやってくれるんじゃないか?!」という期待を抱いてしまいそう。
そして真ん中に立つよう運命づけられた人には、同時に嫉妬など負の感情も向かいがちなわけで。
その期待を逸らすために「使えない人物」を演じている…というワンシーンがあって、ちょっとしたシーンでしたが妙に胸に残りました。

エンターテイメントは、芯の強い人…ほとんど我の強い人と同意義かもしれない、そんな人達こそが勝ち上がっていく世界のような気がしています。

観客は、人のきれいで優しく正しい面だけでなく、内側に秘めたエゴイスティックな部分も含めて感じ取りたい欲がある。
惹き込まれるエンターテイメントは、おそらくそんな要素があるのだと思ったりで。

私は縁あってボーカリストの方々と接する機会が多いのですが、どの方を見ても、「歌」という身体を楽器にする表現は、心が純粋でなければちゃんと届かないものだと思うんですよね。
歌を歌ってちゃんと届けられる人は、心がものすごくピュアで柔らかい方が多いです。

その純粋さをしっかり持ちつつ、エゴイスティックな部分もチラ見せして人を魅了し、さらにビジネスとして勝ち上がっていくことまで全部一人でやる…
これ、もう無理ゲーでしょ!
と思う。

名菜さんの舞台は、意図してかどうかわかりませんが、そこを表現者同士の「連帯」で乗り越えることを表現されたのかなぁと…これは私の勝手な推測ではありますが。


帰宅してから出演者の方々のサーチをしてみたのですが、ほとんど公式サイトのような情報がないのですよね。

実力をつけることに集中されていて、PRを自分からしていない演者さんが世の中にはなんて多いことか。
もったいない…とは思いますが、自分で自分をPRするのってエネルギーが取られますしね。フリーで活動されていれば、ますますそうなると思います。そういう方々が集まった舞台だということを追って知ったことも、非常に印象的でした。

「知らない=力がない」ではないんですよね。情報量と実力はまったく比例しないことに、エンタメを消費する側は気づくことができないという構造が世の中にはあります。


昨日の名菜さんの歌とダンスのパフォーマンスはとても素晴らしく、なぜこの比重をもっと大きくしないのか、という欲張りな感情も湧きました。
けれどきっと劇の全体を作った名菜さんは、自分が前に出るよりも、連帯というバランスを選んだのだろうなと。
それが名菜さんなんだろうなと、最後には納得へと辿り着きました。

純粋が勝つ世界であって欲しい。
本当に名菜さんのドリームアゲイン、ここからとんとん拍子に最速で実現して欲しい……切に願います。


⚫︎残り二日公演、夢をふたたび見上げている人はぜひ

『DREAM AGAIN』は8月20日まで、中目黒のキンケロシアターで上演されています。
おすすめな人は…やっぱり一度は夢に向けて足掻き、挫折したことのある人でしょうか。
私も今「ドリームアゲイン」している真っ最中なので、胸に残るシーンがいくつもありました。
ストーリーそのものは非常に明るくコミカルですが、観終わった後に胸に引っ掛かるものが残り、自分がこれから選んでいく道への示唆をくれるはずです。

チケット、まだあるそうなので、思い立った方はぜひ!


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