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婚活戦記|「いいね」が増えていけば増えていくほど好きな人と出会えない

 マッチングアプリ歴は通算1年半ほどの33歳である。
 しかし、一度も長いお付き合いをできていない。
 マッチングアプリではpairsであれば500いいね+であるくらいに、「いいね」はもらえてしまう。ただ、どうしてもしっくりと来る人に会えないのだ。

 お前の希望が高すぎておかしくなってるんじゃないか?
 この質問にはYESともNOとも言える。

 体感ではあるが、2017年くらいまで、マッチングアプリは「出会い系」と呼ばれ、何か後ろ暗いイメージであった気がする。だから、出会いといえば、①部活や職場といった日常の中で人となりを知り付き合うといったものか、もしくは、②合コンや友人からの紹介といった出会いの場から恋愛関係になり付き合うといった、おおよそ二択であったと思う。
 私の歴代の彼氏たちを考えると長く続いた人は①しかいない。
 ②はどうしても続かないことが多かった。相手のイメージする理想の女性像と異なっていると言われ断られるか、逆に相手の理想の女性像になろうとして著しくメンタルに悪い状態になって、私の方からギブアップとなってしまうのだ。

 ③マッチングアプリは、私にとっては②より相性が悪い。
 まず、②であれば、その場でなんとなく話すことはする。なので、最初はイケメンがいい!とか思っていても、いやあのイケメンなんか合わない、となって、恒例の席替えタイムやなんやで最初は互いにないな、と思っていたが話してみれば、同じ世界の廃墟が大好きニッチな同志を発見!から次のデートにつながることもあった。
 そう、とりあえず話してみる、ということをしていたからこそ、①ではないにせよその人のことを知って興味を持つといった工程があった。

 しかし時はマッチングアプリ時代である。
 合コンであれば、まあ多くて6対6くらいであり、全員となんとなく会話ができる。
いや、会話が出来なくても、この人は魚の骨の避け方が抜群にうまい食べ方をする、とか、カラオケで盛り上げるために手を真っ赤にないながらタンバリンを叩いているとか見ることが出来るのだ。
 一方で、マッチングアプリは、そういった「人となりの良さ」を知る前に、「ふるいにかける」という工程が必要だ。
 初めてpairsをインストールしたとき、確か金曜の夜だったと思うが、まあ酒に酔っていたのと、なんとなくマッチングアプリ怖いと思って、通知オフにして朝起きたら「いいね」が500を超えていた。
 由々しき事態である。
 当時、30歳であった私は、日本の男の人は若い女の子をちやほやすると思っていて若干自暴自棄な気分でいた。これについてはまた別の機会で話す。
 兎にも角にも、そこまでいいねが来ると思っていなかったので焦った。
 なんなら、俺の考えた理想の女性像にならないよう、プロフィール文で、自分のとがった部分をオブラートに包みこもうとして破れかぶれになりながら書いていたため、特に「いいね」が来るとは思わなかったのだ。

 時は土曜の朝である。
 動揺しながらも、一番上に来た男性のプロフィールを読んだ。所属しているコミュニティや、写真をしっかりと見る。「いいね」を返さなくても、あとでその気になればまた「いいね」できるといったpairsの仕組みをぐぐって、申し訳ないがお見送りした。そして次の人を読み、次の次の人を読んだあたりで気づいた。
 もう15分経ってるじゃないか。
 5分×500人=2500分、40時間を超えている。
私の知っている限り一日は24時間であるし、今この瞬間にもさらに追い「いいね」がきている。

 その瞬間の気持ちはどちらかというと、マイルドな絶望だった。
 どうしたらよいのだ、と思って一つの解決策を選んだ。
 そう「容姿」「年収」を二軸として、自分の中に基準を決めて機械的にマッチングすることにしたのだ。心の中で「申し訳ない」「同じ職場で関わっていたら好きになっていたかもしれない」と思いながらひとりひとりにお断りを入れていた。
 そして悪戦苦闘すること2時間、それでも50人くらいとマッチングしてしまっていた。

 私は長い文章をこうやって書くことは好きだが、中々の面倒くさがりなので、同時に50人となんてメッセージは続かなかった。いや中々器用な人でも、仕事以外全部マッチングアプリに時間を使う、とかでもなければ50人とメッセージなんてできないだろう。
 そして実際に会ってもないから、メッセージだけでこの人の意外な一面にきゅん、とかそんなことはなく、なんとなくメッセージの量と頻度が合う人の中で、いわゆる条件が良い5人くらい(5人でも個人的には頑張っていた)に落ち着いた。

 私はモデル並みに外見の容姿が整っている人を求めているわけでもないし、石油王と付き合いたいわけでもない。いや、石油王なら何度か会ってみてワンチャン小さい油田が欲しいとおねだりするかもしれない。
 兎にも角にも、私はいわゆる三高と言われる人に食指が動いていた側ではないのに、そもそもの時点でどんなに素敵な人、合う人かもしれないのにはじいていたし、どうせなら収入が多い方がいいし目の保養的にイケメンに絞ってしまう。
 もちろん、人としてどうなんだろう、といった質問を投げかける人はブロックしたし、なんだか合わないなと思ったり思われたりしたら自然消滅もしていた。
 しかし、イケメンでお金があってなんかメッセージが適度に進む人が残ってしまうのだ。そしてそのメッセージも、一日二、三往復であるから本当にそれが「楽しい」とかはわからずに表面のカードだけで選ぶことになる。

 けっ、自慢かよ。と思われるかもしれないが、もしいいねが20人、一日につき1人か2人であればじっくりプロフィールを見ると思う。しかし、この仮想世界でモテてしまうと何かで線引きしなければいけなくなる。それが「条件」となってしまう。
 「条件」といっても「ドラゴンズファンでトマト料理が大好きで、トマト缶といったらカゴメのトマト缶じゃないとダメ」みたいな線引きもあるだろうが、私にはなかった。いや、上記の条件には当てはまっているかもしれないが、実はオリックスファンでセリーグはドラゴンズが好きかなくらいのファンだと交流戦はつらいことになるかもしれないし、トマト料理は生が最高派と火を通すことが最高派など細かい分類はあるだろうし、それは時を重ねていかなければわからないのではないだろうか。

 好きな人と付き合いたい。
 しかし、その好きな人は、私の中で容姿や年収といったくくりではなく、フィーリングや物事に対する価値観だから、マッチングアプリの膨大な海の中で探すことは難しい。価値観や人となりなんて実際に会わないとわからないし会ってもいつまでもわからないこともある。
 かといって全員と会うことは不可能であるからこそ、マッチングアプリは、まず会う前の候補者探しから底なし沼なのである。

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