【白4企画】いぬいゆうたさんに朗読してもらいました。
note4周年の節目に、白鉛筆が今までやってこなかったあれこれに取り組んでみる『白4企画』。
第二弾として、人気noterであるいぬいゆうたさんとコラボレーションし、白鉛筆の作品を朗読していただきました。
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いぬいゆうたさんと初めてお会いしたのは、2022年11月の文学フリマ東京。
当時何も交流が無かった中で、ありがたいことに自分のブースにお立ち寄りいただき、ご挨拶をさせていただきました。
「朗読の御用命があれば、是非」
素敵なお声でそうおっしゃっていただいたものの、大変お恥ずかしい話、それまでいぬいさんの記事や朗読に触れたことがなく、その時はただ「ありがとうございます」とお返事をするだけでした。
帰宅し、その日のうちにいぬいさんの朗読を聴きました。
プロ顔負けのクオリティに驚き、これはすごい方にお声かけをいただいた、と高揚する一方で、一抹の不安が過ぎりました。
果たして、自分の作品はこの人の朗読に合うのだろうか。
クオリティが見合うか、という点もさることながら、単純にマッチングという観点から、いぬいさんにお願いすることはハードルが高いように思えたのです。
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白鉛筆も執筆の過程で、自分の作品を声に出して読み上げることがあります。
烏滸がましいとは百も承知で、あえて対比をさせていただくと、白鉛筆の声質・読み方が軽く、速いものであるとしたら、お聴きしたいぬいさんのお声は太く重量感があり、読み方も丁寧でゆっくりしたものであると感じました。
例えば、今回のコラボレーション作品の一文目。
この一文を、事前に息を吸わず、2秒で読み切るのが白鉛筆。
対して、しっかりと息を吐きながら、3秒かけて読むのがいぬいゆうたさん。
これは単なる個性の違いではなく、知識や技量、その差の表れでもあるのでしょう。
朗読とは単なるお芝居でなく、聴き手に状況説明も行う、ナレーションとしての要素を含むもの。
小声で早口で読まれては、頭がついていかず、ストーリーの筋が入ってこない可能性がございます。
おそらくいぬいさんもその辺りを考慮され、元来よく響くお声にさらに抑揚を利かせ、かつ聴き手を置き去りにしないよう、意図的にスピードを抑え朗読されているものと想像します。
ただ、こうしたいぬいさんの声質・読み方では、どうしても安心感や説得力が出てしまう。ご本人のお人柄もあるのでしょう。聴くだけで、どこか優しく包まれているような錯覚を覚える。
どちらかと言えば、優しく包みこむよりは、冷たく突き放すような白鉛筆の作品は、いぬいさんの朗読に馴染まないのではないか。
そのように感じ、余計に朗読を依頼することに気後れが生じました。
「いぬいさんのイケボに耐え得る作品を書けるよう、精進いたします」
note上でそのようなコメントをお返しし、いつかその時が来ることを夢見ながら、その後も執筆活動を続けておりました。
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2023年の春。ピリカグランプリを受賞させていただいた『ダストテイル、朧げ。』をいぬいさんに朗読いただく幸運に恵まれました。
あの橘鶫さんに選んでいただいた本作。クオリティの面では、それなりの強度を備えているはずのところ、やはりいぬいさんのお声の良さを活かせてはいないように感じました。
凄腕のイタリアンシェフに、おにぎりを握っていただいたような感覚。
もちろん丹精を込め、賞までいただいた自慢のお米ではあるところ、作って欲しいのはおにぎりじゃない。
それでいておにぎりも美味しく握ってくださったものだから、「自分にイタリアンの食材が用意できたら」と、なお悔しい思いをしました。
「朗読の御用命があれば、是非」
なんといぬいさんは同年秋の文学フリマでもブースにお越しいただき、同じお言葉をくださいました。しかし、このときも「ありがとうございます」としかお返事ができず、そんな自分を不甲斐なく感じました。
転機が訪れたのは、最近のこと。
2024年の春。突然いぬいさんからメールをいただきました。
メールには音声ファイルがついており、それは白鉛筆が書いた『スピン』という作品をいぬいさんのお声で朗読いただいたものでした。
信じられないくらいかっこよくて、これは本当に自分の作品か、と耳を疑うものでした。
安心感や誠実さが漂ういぬいさんのお声に、どこか胡散臭さやミステリアスを感じる。
エフェクトも効果的で、エッジの効いた音声作品となっていました。
『スピン』は先述の2023年に開催された文学フリマにて、白鉛筆が新刊に収録した書き下ろし作品です。
note上で皆様から一定のご評価をいただいた作品が集った新刊。書き下ろしぐらいは意欲作を入れ込んでみよう、と新たな作風にチャレンジしたものでもありました。
その意欲作が、いぬいさんのお声にここまでマッチするとは。
驚いた直後、「いや、違う」と思い直しました。
これは従来のいぬいさんの朗読ではない。きっと自分の作品をきっかけに、いぬいさんが新たな扉を開けてくださったものだ。
安心感や優しさが個性? 誰が決めた。
マッチしないから申し訳ない? 未熟な書き手が何様だ。
いぬいゆうたを舐めるな。
あの人はクリエイター。才能を原資に創る人だ。個性を武器に進化する人だ。
遠慮なんかいらない。あの人の新しい扉を、全身全霊でノックしろ。
「近いうちに必ず、いぬいゆうたさんに朗読いただくための作品を仕上げます」
朗読の御礼もそこそこに、そんな決意表明を返信し、作品の製作に取り掛かりました。
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そして今回、朗読いただいたコラボレーション作品。
これは、いぬいゆうたさんに朗読いただくために書いた作品であり、いぬいさんのお声があってこそ生まれた作品です。
ご本人曰く、『自動でインストールされる』というお声で、頭の中、何度も文章を再生し。
「ここはこう読んでくださるのでは」、「ここはどう読んでくださるかな」と、予想と期待を織り交ぜながら。
いぬいさんのお声で再生されることで、より価値が高まるものを目指し、執筆しました。
出来上がった作品を携え、朗読をお願いする際は、どれだけ緊張したかわかりません。
いぬいさんの新しい扉。それをノックするに相応しい食材か。
確たる自信は持てぬまま、それでも、最後はいぬいさんに委ねるような思いで、作品をお送りしました。
最後に自分の背中を押したのは勇気ではなく、クリエイター・いぬいゆうたさんへの尊敬と信頼に他なりません。
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仕上げていただいたいぬいさんの朗読は、こちら。
内容については、多くを語りません。
百聞は一見に如かず。否。百読は一聴に如かず。『白4企画』の大目玉。
いや、これ以上はもう五月蝿いですね。
百でも一でもどうでもいい。四の五の言わずに、聴いてくれ。
圧巻です。
いぬいゆうたさん、本当にありがとうございました。
また遊んでください。
白鉛筆でした。
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白鉛筆が執筆した小説はこちらです。
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