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【#マイピリ】都忘れデストロイヤーズ

贔屓だ、と思った。
こんなことがゆるされるのか、と。

2024年のピリカ文庫。大トリを務めるお二人の登場に、胸躍った方は多いであろう。個性が光る人気者、才気溢れる有名人。自分もまた、期待と歓喜を覚えつつ、作品を読み始めた。

が。

長い。
もしやと思い、途中で手を止め、もうひと方の作品へジャンプする。
こっちも長い。

え、これ朗読されるんだよね。二人ともよくよくご存知の筈だよね。暗黙知としてそのあたりを踏まえた長さで書き上げるのがピリカ文庫だよね。

いいの!?

一体どれだけの寵愛をピリカさんから受ければこんな暴挙が許されるのか。お中元でも贈ったのだろうか。しかもテーマは『東京』。なんとも調理の甲斐がありそうな。『コインランドリー』で苦戦したこちらとの格差よ。こいつら都民か。何線使って通勤してんだ。

人気者はいいよな。有名人はずるいな。
ひとしきり悪態をついて作品に戻り、読了を経て、考えを改める。

人気者の所以たる、光る個性。
有名人の所以たる、溢れる才能。
贔屓されて然るべきだ。VIP待遇がお似合いだ。
グランドフィナーレを任されるからには、それ相応の理由がある。

前置きが長くなった。

シーズンの終わり、暫しの別れとなるピリカ文庫において、読者に十分な満腹感を与えた二作。否。満腹感の二乗により読者の胃袋を破壊した、デストロイヤーたちの作品をご紹介する。

高尚なものを書くつもりはない。ただ熱に任せ、筆を走らせた駄文だ。
どうか贔屓目に見ていただきたい。

● 小説/2枚目のメッセージ《#ピリカ文庫》/豆島 圭

『東京』『ヲ爆』『破する。』

一行目から長編を予感づける冒頭ですが、実のところそこまで長くないのが、この作品のすごいところです(先述の通り、ピリカ文庫としては長い)。約8,700字でここまでのドラマを展開し、収束させる手腕は圧巻。一体どうしたらこんなことができるのでしょうか。

ストーリー、文章、キャラクター、主題。
作品を構成する要素のうち、どこで魅せるか。そのメリハリが、しっかりと効いているためと思われます。この『2枚目のメッセージ』ではおそらくストーリーがメインディッシュであり、目まぐるしい場面転換や展開の意外性、それらをハラハラどきどき楽しむことが醍醐味となっている。キャラクターの個性、主題から漂うメッセージ性は、それを引き立てる程度の分量とされており、結果、トータルとして無理ないボリュームにおさまっているのだと思います。

もちろん読み手がどこに食いつくかはまた別の問題であり、例えば副菜である、キャラクターの要素に楽しみを見出す方もいらっしゃるでしょう。特にこの作品は豆島さんの人気作『残夢』のスピンオフということもあり、お馴染みである鳩巻署の面々の登場に、歓喜した方も多いはず。一方、未読の方にも彼ら彼女らの魅力が十分伝わる内容となっており、そのあたりの塩梅には手練れの風格を感じます。

ロケ地の多彩さとカメラワークの豊かさにも学ぶことが大変多く、この作品のような骨太ミステリーに挑戦する際は、意識したいポイントだと感じました。

note小説界、豆島 圭が君臨しているこの分野に、いつかお邪魔できるものを書くことが、今の密かな目標です。

豆島さん、素敵な作品をありがとうございました。


●【ピリカ文庫】東京のおじさん/めろ

コンチャース!!オイラです!!!٩(•̀ω•́

……うん、辞めよう。めろさん風に語ってやろうかと思ったけど、一行目でもうしんどいや。
よくこれで何千文字の記事書けるな、あの人。

小説を書く上で「視点をどこに据えるか」という選択は否応なしに訪れるものであり、そこへの意識の向け方で作品の色合いは大きく変わってきます。

中でも今作のように、視点を頻繁にスイッチして多角的に物語を描いていく手法は、作品を立体的に見せることができるというメリットがある分、語り部全員から見て整合性ある展開とする必要があり、難易度の高いものだと感じます。

早い話、誤魔化しが効かない。
それを難なく、しかもこの文字数でやってのける手技に感嘆する一方で、「めろさんならさもありなん」と大いに納得もしました。

日頃、好き放題ふざけ倒しエキセントリックな振る舞いを見せておきながらも、めろさんが実はとても真面目で優しい方であることは、全読者に余すことなくバレている事実です(むしろこんなに真面目で優しい方がどうしてあそこまで破天荒にぶっ飛ばせるのか、意味がわかりません)。

この『東京のおじさん』で用いられた多角的な視点。それを可能としているのは、ひとえにめろさんのお優しさではないか、と推測します。キャラクターへの愛、と言い換えてよいかもしれません。なるほどあなたはこう考えたのね、そのとき君はどういう気持ちだったかな。登場人物一人一人と正面から向き合い、対話し、思いを聞き出し。決して物語を優先させるでなく、それらの思い、思いからくる行動の集合体としてストーリーを捉えている。方々への目配り気配りを欠かさない、そんなめろさんだからこそできる描き方なのだろうと思えます。

めろさん。勝手に人となりを理解し、わかった風な口を利いて申し訳ございません。ですが、これまでの触れ合いから感じるところを素直に書かせていただきました。

さぞむず痒かろう。( ●´ސު`●)

素敵な作品をありがとうございました。

最後に。
今回、ご紹介記事を書かせていただくにあたり、白鉛筆は作品を読み返してはおりません。

だって長いから。

というのはもちろん冗談で、読後、時間を経て記憶に残ったもの、心に居座り続けているものをベースに書き上げたい、という思いがありました。

今作品たちを思い返したこのとき、自分の中にあるものこそが、作品を通じて受け取ったもの。私だけのピリカ文庫、『 #マイピリ 』の本質だと感じるからです。

読ませていただいてから半年近くが経とうという、今。こうした記事をフリーハンドで書けるほどの熱がまだ、自分の中には残っていました。
こうした熱に知らず温められながら、心凍らず生きていけているような気もします。

あたたかいです。ピリカ文庫。
寒くなったらまた来よう。

白鉛筆でした。

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この記事は、こちらの企画に参加しています。

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