【掌編】火花
無数の火花が空から降ってきました。
一筋の光が伸びてきたかと思うと、宙空でそれは炸裂し、全方位に火の粉を撒き散らします。一回きりではありません。何度も、何度も繰り返し。闇夜に沈みかけた街中、突如として起こったそれに、人々はパニックに陥りました。
爆撃機でも飛んでいるのか。そう思い目を凝らしても、それらしい影は見当たりません。轟音と共に飛び散る火花に照らされた、雲の姿が映るだけ。そもそも、爆撃なら地面を直接狙うはず。降り注ぐ火の雨は確かに危険であるものの、攻撃とみなすにはあまりに半端な代物です。
「じゃあ、一体これはなんなんだ」
憤りに叫ぶ群衆の中、ぽつりと老人が呟きます。
「空の住人の仕業じゃな」
「空の住人?」
隣に居合わせた少年が訪ね返すと、老人は節くれだった指を伸ばし、上へ向けました。
「耳を澄ましてごらんなさい」
半信半疑ながら、少年は言われた通りにします。火花の轟音、それに恐怖する人のざわめきに紛れ、かすかに無邪気な歓声が聞き取れました。
”……たーまやー……”
はっとした顔の少年に、老人は「そう」と頷きます。
「やつらにとっては、こちらが空じゃ」
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