3時間後にイオンに行くワニ

年末である。のんびり、漫然と過ごしている。

子どもたちが使っていない間に、ニンテンドーSwitchの「あつまれ動物の森」で海の幸を採集するくらいしかやることがない。

ひたすら海の中に潜り、カニや貝などを集めて、それをタヌキの商店に売って、ゲーム上で買ったマイホームのローンを返し続けている。

高い海の幸が採れると嬉しい。これでローン完済に一歩近付いたとテンションが上がる。

ただ、冷静になって考えると、これは普段の生活とまるで変わらないということに気が付く。

現実でも働きに出て、10年くらい前に買ったマンションのローンを払い続ける。

ゲームでも現実でもローン返済に追われる。
人生の滑稽さを感じる瞬間である。


どうせゲームをするなら、最近リメイクされたドラクエIIIでも買って、魔王を倒しに行った方がまだ建設的なのではないかという考えも浮かぶ。

ただ、虚構の中で、世界を救っても満足だろうかと自問自答してしまう上に、新しいゲームを買いに行き、そしてそれを始めるというめんどくささを考えると躊躇してしまう。

子どもの頃は新しいゲームを買って、それを始めるとワクワクして、すぐその世界観に入り込めたものだが、歳を重ねると新しいゲームに慣れるまでがめんどくさくなり、それならやらなくていいやと思うようになった。

これは、ゲームから卒業しつつあるという成長なのかと考えつつも、新しいことにチャレンジするのが億劫になるという老化現象ではなかろうかと怖くなるところもある。

こんなことを考え始めたのは、今日は特にめんどくさいという感情が強いからだと思われる。

普段から、めんどくさい協同組合の埼玉支部エリアリーダーを自認する私だ。

「ああ、めんどくい」と思わない日はないといっても過言ではない。自分で書いておいてあれだが「◯◯しない日はないといっても過言ではない」というまわりくどい表現を使うのもめんどくさいと思う私である。

それならこんな文章を書かなくていいのではないか、とも思うが、こんなめんどくさい日にnoteを更新しないとなると、寝る前に今日は「めんどくさい」に支配されて、あつまれ動物の森以外には何もない一日だったと強い自己嫌悪に陥ることが目に見えている。
きっと眠りにつこうとしても、目を閉じればあつまれ動物の森のアバターが、海産物を取っている光景が想起されて、なかなか寝付けないだろう。

現実世界で、アワビを密猟して捕まるよりは、あつまれ動物の森で海の幸が枯渇するくらい取り尽くした方がマシではあるが、あつまれ動物の森のアバターを真冬の海に3時間も4時間も潜らせ続けることで、強い罪悪感を抱いてしまう。

そんな状態になるのは、それこそ非常にめんどくさいことなので、せめてそれを回避するためにこうしてnoteで文章を書いているのである。

この文章が完成すれば、今日の成果として動物の森でアバターを酷使した以外にも、noteを更新できたという達成感が得られる。

人生とは小さな満足感の積み重ねである。

思い立ったらすぐ行動自己肯定感マシマシ協同組合の武蔵村山支部の代表もそう言っていたはずだ。

さあ、今こそめんどくさいから解放される時である。
めんどくさいの支配から解放されて新しい自分を発見しよう。
めんどくさい大魔王の凍てつく波動やメラゾーマにも耐えて、全世界が前向きに生きられる世界を作っていこうではないか。
めんどくさい禁止令を出して、めんどくさい協同組合は発展的解消させよう。そして、めんどくさいことなんてこの世の中にはないんだよ協同組合を立ち上げよう。

この世の中の森羅万象は輝きに満ち溢れていて、それを享受しないなんてもったいなさすぎる。

そういえば、妻から近所の今日はイオンで年末年始に必要なものを買い出しに行くように頼まれていた。

妻と息子（5歳）は朝から出かけて、私と娘（小1）は留守番している。

妻と息子は出かけていて忙しいので、暇な私と娘に買い物をするという役割がまわってきた。

イオンに行くのめんどくさいなと思っていたさっきまでの私はもういない。
いざゆかんイオン。待ってろよイオン。敵はイオンにあり。イオンお前もか。
自分自身を奮い立たせ、イオンに行く準備はできた。

そこで娘に「さあ、そろそろイオンに行こうではないか！ママに頼まれたものを一つ残らず買い揃えてこよう！イオンに出陣じゃ！」と声をかけた。

娘は「えーめんどくさいからお昼ご飯食べてからにしよう。あと3時間くらいしたらいけばいいんじゃない？」と言う。

この娘の言葉により、めんどくさい協同組合埼玉支部は存続が決まった。
娘が言うことに抵抗して、無理にイオンに連れて行くことは私にはできない。なぜなら娘がかわいいからである。

イオンに行くのは3時間後にしよう。

こうして、私と娘はめんどくさい協同組合埼玉支部の誇りを取り戻し、少なくともあと3時間は家の中で無為に過ごすという、休日の最高の使い方をする覚悟が固まった。

ただ、この調子でダラダラし続けると、めんどくさい大魔王は確実に復活するので、3時間後にほんとうにイオンに行けるか怪しいが、3時間後にはもう一度、ポジティブなメンタルを取り戻したい。

おしまい