【国際恋愛】「日本人だから君が好き」元彼の不愉快な言動から学んだこと
今の彼氏と付き合う前のことである。
私にはドイツ人の彼氏がいた。
彼は日本の文化に興味があり、熱心に日本語を勉強していた。そして春になったら日本を旅行するのだと何度も言っていた。
彼と出会ったのは私がちょうどドイツに来たばかりの頃だった。私はドイツ語を、彼は日本語を勉強したくて、お互いにお互いの言語を教え合っていた。
彼に恋をしていたかと聞かれれば、正直そうではなかった。
当時は頼れる友人もおらず、”彼氏でも作っておけば寂しくないか、悪い人じゃなさそうだし”という感じで告白にOKした。
彼は私と同い年。
女性経験はなく、いわゆる口説くとか、カップルならではのイチャイチャすら出来なかった。
そういうところも私はあまり好きになれなかった。
私はセックスだけじゃなくて、日々のスキンシップも大切にしたかった。でも彼は奥手だったし、そういうことをするのが難しい性格らしかった。まあそんなことはどうでもいいのだが。
最も大きな別れの要因は、彼の価値観に違和感があったこと。
彼が私を紹介する時の第一声は「Japanese girl」だった。いつ、どんな時も。
私に対しても、普段から「君は日本人だから髪の毛が綺麗だね」「日本人だから日曜日でもしっかり化粧をするんだね」とか言ってきた。
彼の同僚の前でも「彼女は日本人だから日曜日でも化粧をするんだ」と話す始末。
言われる度にイライラした。
本当は、”あなたは私のことが好きなの?それとも日本人である私が好きなの?” と聞きたかった。でも聞けなかった。この質問ってすごく奇妙だと思ったから。
だって、”私”という人間を構成しているものの一つに”日本人である”ということが含まれている。つまり、この質問は「A」かそれとも「(Aを含む)B」かと問うている。極めて愚問に思える。
多くの人たちはきっと私と同意見であると思う。日本人だから君のことが好きなんだと言われて、手放しで喜べる人なんていないんじゃないか。これはAかBかみたいな2択の問題ではなくて、比重の問題である。
「僕が君を選んだのは、君が日本人だから」という彼の考えは別に構わない。モラル的な話は置いておいて、それは彼の意見として尊重されるべきである。個人的には、「日本人だから好き」というのも「彼女の顔が良いから好き」というのも、なんら変わりはないと思う。
確かに日本人であることに私は誇りを持っている。ただ、日本人であるということは、私のアイデンティティの大部分を占めている訳ではない。それはほんの破片に過ぎない。
じゃあ、一体何がより多くの比重を占めているのか。それは人種ではなく、私がこれまで培ってきた人間性であったり、趣味や嗜好、価値観といったものだ。これらは私という人物をよく示していると思うし、他者と私の間にしっかりと境界線を引くことができるものだと思っている。
実体のないものだけれど、ボーイフレンドであった彼には私という人間の中からそれらを掴み取って欲しかった。交際するというのは、ある種この実体のないものをお互いに掴み合い、掴んだものを各々が自分の中に受け入れることだと思う。
彼がより好んで掴み取ったものは、私という人間のほんの破片に過ぎない。そして、それは比較的容易に代替可能なものである。つまり、唯一無二の私ではなくなるのである。
彼といると、他者との間にきっかり引かれた境界線はぼやけて見えなくなり、私はその他多勢の中の一人になってしまう。
そんなのは嫌だ。大量生産された人形みたいで、ほんとに嫌。だから私は見切りをつけた。
悪口チックになってしまったけれど、別に彼を批判したい訳でもない。そもそも、好きでもないのに付き合った自分が悪い。ただ、彼の言動は非常に不愉快だった。どうして不愉快だったのか、明確にしたくて書いてみた次第である。