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知床の「人」紹介vol.4~「10年後に思い出して、何かに気付いてくれたら嬉しい」。未来に向けて種まきをする知床の高校教諭

※こちらの記事は2021年8月2日のInstagramより引用・再編集したものです。

斜里町で唯一の高校・北海道斜里高等学校で理科を教えながら3年生を受け持っている梅木菜月さん。「知床学」の授業にも力を入れている斜里高校ですが、その現場に立つ先生の素顔や思いを知るべくお話を聞いてきましたので、ご紹介いたします。

梅木さんは生まれも育ちも札幌市。高校の頃に生物や化学の授業が楽しいと感じたのを機に食品や薬品の研究、植物の改良などに興味を持つようになり、札幌市内の大学の農学部に進学しました。

大学でも、食品に携わる仕事がしたいと考えながら小麦の研究に取り組んでいたそうですが、大学3年生のときに塾講師のアルバイトをしたのをきっかけに人生が大きく変わります。
塾で小・中学生に勉強を教えるうち、そのお仕事がとてもやりがいがあって楽しい!と感じている自分がいることに気付き、教員という道に進むことを決めたといいます。

「周りには大学院に進んで研究を続けるという人が多くて、いきなり教師だなんて変わってると思われたかもしれません。4歳の頃からモダンダンスを続けてるんですが、高校生にもなると、習い始めの小さな子にダンスを教えるようになるんです。それもすごく楽しくて。教えることが性に合っていたのかな。今も私、勉強よりダンスを教える方が上手いですよ」

と、朗らかに楽しそうに話す姿が印象的です。

教員免許を取得し、最初に配属された函館市の高校で4年を過ごしたのち斜里高校に配属となった梅木さん。斜里町での生活も、2021年で4年目となります。
斜里高校の生徒たちの印象を伺ってみたところ、

「人懐っこさが強い反面、見る目がとても大人というか。先生というより、一人の大人として見られているなあって感じます。どきっとしますよ。勉強を教えるのが上手い下手じゃなく、人として信頼できるか?というのを大切にしているというか。皆とても素直で、生きる力がとても強いと思います」

とのこと。
知床という土地が、そうさせるのでしょうか。

また、斜里高校では近年、生徒自身が地域のことを学び、地域の人と交流しながら地域の課題解決に向けて様々な提案をしていく「知床学」という授業もおこなっているのですが、この授業に取り組む梅木さんの思いも、とても素敵です。

「初めての取り組みで、最初は教員も手探りで、うまくいかないことも多っかったです。今やっと少しずつ動き始めていて、町内外のいろんな方に講師として来ていただいたりしてます。でも実は、生徒より私たち教員の方が学んでいるのかもしれないですね。町内にこんなことをしてる人がいるんだ!って。楽しいですよ。生徒にとっては難しい部分も多いと思います。なんでこんなことやるの?って感じる子もいるだろうし。そういうときは一緒に知床について調べたりして、いろんな人がいるねって、まずは知るだけでもいいと思ってやっています。1月末におこなう学習成果発表会で発表はしますが、見栄えのいいものは求めていないです。こんなことを感じた!とか、主体性が身につくと嬉しいなとは思いますけど、どちらかというと、10年後とかに知床学で地域のことを学んだなって思い出して、何か気付いてもらえれば十分。そのための種まきをしてる感じです」

また、教師として大切にしていることは何か?を聞いてみたところ、

「いいところを見つけて伸ばす、というのがずっとベースにあって、私はそのために教師をやっていると思っています」

と力強く即答してくれた梅木さん。
つい自分のだめなところに目が行きがちですが、こうやって言ってくれる人が近くにいるとどれだけ心強いだろう…と、私まで励まされる思いでした。

私も同じく北海道内出身ではありますが、知床についてはまだまだ知らないことだらけなので、知床学の授業に一緒に参加したいくらい興味津々です!
これからも斜里高校の活動や先生方の思いなどをお伝えしていきますので、楽しみにしていてくださいね。

斜里高校の校訓「凌げ斜里岳」。
斜里町が誇る名山「斜里岳」を凌ぐような人間形成を目指し、人間や自然を思いやり、自他の生命の尊さを自覚し、健康でたくましい人間に成長することを願って生まれた校訓です。
斜里岳はいつもそっと佇み、まちを見守っています。


▼2022年6月20日追記
梅木さんは2022年3月をもって斜里高校から離れられましたが、今も北海道内の高校で活躍されています。きっと変わらず、様々な人やものごとと真摯に向き合いながら過ごされていることでしょう。またいつかお会いできる日がくることを、心から願っています☺