草刈りを通じて学ぶ「知床で生きる」ということ
こんにちは!スタッフの平野です。
知床の宿泊施設・北こぶしリゾートグループが取り組む「クマ活」の一環で5~6月にかけてウトロエリアの草刈り活動が数回おこなわれたのですが、弊社スタッフも各回に分散して参加させていただきました。
クマ活とはどんな取り組みなのか?
何のためにおこなっているのか?
具体的にどんなことをしているのか?
今回は、そんなことをお伝えいたします。
(難しい話や専門的な話はまったくありませんので、気楽にお読みください☺)
クマ活って?
一言でいうと「ヒグマとの共存を目指す活動」。
知床半島は狭い範囲内に多くのヒグマが生息しており、これは世界的に見ても非常に珍しい環境であると言われています。
一方で、知床国立公園の玄関口でもあるウトロエリアには斜里町の人口約11,000人のうち1,000人ほどが住んでおり、学校や役場支所といった「人の暮らし」があるエリアでもあります。
ヒグマと人との境界線として、まちをぐるりと囲むように電気柵が張り巡らされていますが、ヒグマの接近を100%防ぐことができるわけではありません。なんらかのきっかけでヒグマがその境界線を越えてしまった場合、道路脇や海岸沿いにある背の高い草藪は、ヒグマが身を潜めるいわば隠れ家のようなスポットになってしまいます。
気付いたときにはすでに民家や学校のそばまで来てしまっている…という事態を招きかねません。
こういった草を刈り倒し見通しをよくすることで、万が一ヒグマが市街地に接近したときも、ある程度の距離を保った段階で発見しやすくなり、迅速に対応することができるようになります。
野生動物と人間が適切な距離を保ちながら共存するためには、人間側からのなんらかの行動が必要、ということですね。
草刈り当日
私が参加したのは6月9日の午前におこなわれた活動。
ウトロ市街地への出入口にあるウトロトンネル脇にあるチャシコツ岬(通称・カメ岩)の周辺道路沿いに生い茂った草藪を刈っていくのが、この日のミッションです。
この日は北こぶしリゾートグループのスタッフさんをはじめ、知床財団や環境省の方々など、普段からこの地域で生活をしている住民中心のメンバーが参加し、約25人ほどで作業開始。
カメ岩のちょうどお尻のあたりに電気柵の端っこがあるそうなのですが、このように道路や海のそばなど電気柵を張ることができない場所というのはどうしても存在し、ヒグマの通り道となりやすいため、こうしたところは特に草刈りをしておくと安心です。
レクチャーをしてくださった知床財団の方は「人間の生活圏周辺を、ヒグマにとって居心地の悪い場所にしてあげることが大切」と表現していたのですが、実際に深い藪を目の当たりにして、その言葉が自分の中にすっと入ってくるのを感じました。
道路から海岸にかけては、なかなかの斜面。
足もとに十分気を付けながら少しずつ刈り進んでいきます。
この日は少し霧がかかっており、作業開始時は少し肌寒さを感じましたが、少し動いているうちにあっという間に体があたたまってきました。
また、草やぶを刈ることで、足もとに隠れていたこんなものたちも、姿を現します。
風で飛んでしまったもの、海から流れ着いたもの、人が捨てたであろうもの…。ちょっと暗い気持ちになってしまいますが、その一方で、花を見つけたり、普段は国道から眺めるだけのカメ岩を近くでまじまじと観察して「本当にカメの形だなあ…」と感心してみたり。
合間で休憩を挟みながら、黙々と作業を続けること約2時間。
短時間の作業でしたが、皆で集中的におこなったおかげであっという間に景色が変わりました!
草刈りを終えて
この作業によって実際にどんな効果がもたらされるのかは、この瞬間に目に見えてわかるわけではないのですが、知床の人びとはこうやってひとつひとつの行動を地道に積み重ねながら様々な生命とともに暮らし、今につながっているのだな、ということを実感することができました。
同じ知床・斜里町内でも、弊社事務所があるのは斜里市街エリア。ウトロとは40kmほどの距離があります。もちろん野生動物と遭遇する可能性があるというのは同じですが、地形も異なり、ウトロでは山や森との距離がぐっと縮まるため、より日常的にヒグマの存在を意識させられます。
私は今回のクマ活の取り組みを通じて初めて知ったこともたくさんあり、今後はぜひ、観光でお越しいただいた方はもちろん、斜里市街エリアの住民の方々にも参加いただける機会を設けられるといいなと思いました。
住んでいるからこそ気付いていなかったことや見落としてしまっていたことを、新たに発見するきっかけになるかもしれません☺
今後も地域の様々な活動に参加したり、地域の個性豊かな皆さんと連携しながら、まだまだ知られていない知床の魅力をお伝えしていきます。どうぞお楽しみに!
*北こぶしリゾートのクマ活については、北こぶしリゾートの公式サイトからもご覧いただくことができます。