知床に永久凍土はあるか?
※こちらの記事は2020年9月21日のブログから移行したものです。
スタッフの寺山です。
今年の知床は暑い日が多く、ふもとから眺める知床連山の残雪も早々と消えていました。
山好きな寺山ですが、主に冬しか登らないので、夏山に登るのは年に数回。
今年は縁あって、8月末に北見工業大学の永久凍土調査に同行して、知床連山に行ってきました。
永久凍土とは
みなさん「永久凍土」ってご存知ですか?
極地に広がる、凍てついた不毛な風景をイメージされるかもしれませんが、学術的な定義は「2年間以上にわたり継続して温度0℃以下をとる地盤のこと」だそうです。夏は表面が溶けて植物も生えているが、地下1mくらいは凍ったまま、という場所も該当するそうで、北海道だと大雪山でも確認されています。
知床は、地の果てのイメージはありますが、豊かな自然を誇り、生き物にあふれています。訪れたことのある方なら、知床に永久凍土? と意外に思われるでしょう。しかし、知床連山最高峰の羅臼岳の標高は1661m。気温データから推定される標高1600mの年平均気温は-3.7~-1.6°Cであり、大雪山における永久凍土の下限高度の年平均気温に相当します。つまり、永久凍土の可能性は大いにあるのです。
実は、永久凍土は、世界遺産・知床にとって重要な意味を持ちます。ユネスコは、知床が温暖化に脆弱な世界自然遺産だと指摘しており、長期的なモニタリング(環境変化の健康診断)を求めています。温暖化の影響を調べるのは非常に難しいのですが、永久凍土は世界中で使われている指標のひとつなので、もし知床で見つかれば、その変化を長期的に調べることによって、世界各地の温暖化の影響と比較することができます。
ここに注目した北見工業大学のチームが、3年計画の調査プロジェクトを昨年立ち上げてくれました。地元の大学ならではの、息の長い地域貢献活動と言えます。
しかし調査地は知床連山の山頂付近です。山を歩き、機材を運び、3泊4日テントで生活し、調査をすすめるのは一般の学生さんにはかなりハード。そんなわけで、山岳地域での生活&活動サポートをするフィールドアシスタントが必要となります。寺山が調査に同行したのはこの役割です。
今年は、昨年設置した30個以上の地表面温度計のデータを回収し、新たに稜線2箇所に通信機能を持つ気象計を設置しました。学生たちは、機材の荷揚げ、キャンプの運営、調査と、慣れない環境でよく働きました。
私にとっても、三峰、二ツ池、第一火口と、三つのキャンプ地に泊まる久々の山尽くし。知床連山の素晴らしさを再認識する4日間でした。
回収したデータを解析し、可能性が確認されれば、来年以降に地面を数m掘削して温度計を設置するそうです。
はたして、知床に永久凍土はあるのか?
これからも随時、皆さんにもお知らせしますので、楽しみにお待ちください!