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シカの角研ぎとヒグマの爪痕、こんなに違う! ♯020
おはようございます。
私は道東を活動拠点に、野生動物対策に取り組んでいます。
先日、Facebookのあるコミュニティで、シカの角研ぎ痕がクマの爪痕として紹介されている記事を見かけました。
このような違いが意外と知られていないのだと改めて実感しました。
今回は、樹皮に残る痕跡―シカの角研ぎ痕とヒグマの爪痕の違い―について説明します。
ちなみにヒグマの爪痕は木に登るときよりも、木を降りるときにつきやすいものです。木を降りる際、体重を支えながらブレーキをかけるようにして降りるため、樹皮にブレーキ痕のような爪痕がつくのです。
シカの角研ぎとヒグマの爪痕
シカの角研ぎ痕とヒグマの爪痕は、見た目に明確な違いがあります。
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シカは、角を木の幹にこすりつける「角研ぎ」という行動をします。
シカの角は春先に落角(らっかく)し、春から夏にかけて新しい角が徐々に成長します。成長中の角は表皮(いわゆる「血皮」)に覆われていますが、秋になるとこの表皮を剥ぐために木にこすりつけるのです。
シカの角研ぎ痕には、平行ではないバラバラな筋の傷が残ります。
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平行な筋の傷がつく、樹上にはヤマブドウの蔓(つる)が巻き付いていた
一方、ヒグマの爪痕は、木の登り降りしたときときにつきます。
木を登り降りする際は、自分の体重を支えるため爪を立てます。その際に滑るので樹皮に傷がつきます。樹皮に平行な筋の傷が複数つくのが特徴です。筋は1本ではなく、3~5本が平行に並びます。
木を登るときよりも降りるときのほうが爪痕がはっきりと残ることが多い印象です。登るときは爪をしっかり樹皮に食い込ませながら、グリップを効かせて登るのであまり滑りません。いっぽう降りるときは爪でブレーキをかけながら、スピードを抑えながら降りていきます。爪を立てながら滑るように降りてくる、このときに出来るブレーキ痕が爪痕です。
あの大きな体にもかかわらず、ヒグマはかなりのスピードで木を登り降りします。見ていていつも驚嘆します。
ヒグマの背こすり痕
樹皮に残る痕跡としては、ヒグマが木に背中をこすりつける「背こすり痕」もあります。ヒグマは同じ木を何度も利用して背中をこすります。
この「背こすり木」は、樹皮が大きく剥げていてヤニがたくさん出ており、そのヤニにクマの毛がびっしりと付着します。
同時に爪痕もつくことが多いです。
背こすり木として利用されやすいのは、道東だとトドマツやアカエゾマツです。
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樹皮がやや黒くなっているのは体をこすりつけた痕、樹皮がやや剥がれはじめている
(よっぽどこの木が気に入ったのだろう)
背こすり痕は知られていなかった
今から約20年前、アメリカの著名なクマ研究者ケイト・ケンドールさんをアテンドした際のことです。彼女はUSGS(米国地質調査所)やNPS(米国国立公園局)でクマの研究に携わってきた専門家でした。
そのとき、知床にはヒグマの背こすり木がないのかと質問されました。私は「知床では背こすり木は見られない」と答えましたが、その後意識して観察すると、実際には知床にも背こすり木が存在していたのです!
この経験から、「知ったつもりになってはいけない」「常に新しい情報を学び、アップデートしていく姿勢が大切だ」と痛感しました。また、エキスパートとの交流が知識を広げる大きなきっかけになることも実感しました。
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背こすり痕の認識がまだなかった頃、ここから約20年が経過したことに驚く!
執筆の励み、新たな気付きにつながりますので、ぜひ「いいね」と「コメント」をお待ちしております。
本日もお読みいただきありがとうございました。
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