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キンモクセイ盗賊団の池

「愚かな奴らだ、毎年毎年。
罪が軽いのをいいことに。」

「そうですね、警部。
罪も罰も可愛すぎますね。
どうでしょう、今年から、
市中引き回しの上獄門で。」

「バカか、君は!」

ある男女は言った。

その盗賊団は、姉妹で結成され、
秋、天高いころ、活動をする。

「今年もこの時期だね。」

「そうだね、いい香りだね。」

姉妹は、大切にとっていたおいたジャム瓶を手に、
お目当ての獲物の場所に急ぐ。

満足そうににんまりと笑う、二人。

「いい?できるだけ、開いていないものをねらうのよ。
その方が香りが長持ちなの。」
と、姉。
「わかっているわ、おねぇちゃん。
私、もう子供じゃないのよ?」
と、10歳の妹。

公園の片隅、樹の下で、
せっせと、杏色の花をつまむ。
出来るだけ、砂利が入らないように、
きれいなものを。

ある晩、
姉妹は集めた『おたから』を、
お風呂に入れた。
甘い香りと、小さな花が広がる。

「今年も最高ね。」
と姉。
「来年も必ずよ。おねぇちゃん。」
と妹。
うっとりと今年の獲物とお湯にひたる。


30分後、母にこっぴどく叱られ、
罰が下される。
「明日、学校から帰ったら、
二人でお風呂掃除をすること!!」

二人はくすくす笑い、
母はあきれる。
が、母は思う。

この遊びもせいぜい後一度くらいだろう。
姉は来年、中学生だ。

冷えたお湯に浮かぶ金木犀。
陶酔のお風呂の翌日、
二人は、キンモクセイの池掃除をする。


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