『ショートショート?』唐揚げ死なず
夜。
女は一人、ビル1階の居酒屋のカウンターに座る。
まずはビールを頼み、ゆっくりと飲みはじめる。
まだ表情はかたく、緊張感がある。
『大将、今夜は月がきれいですよ。』
『、、、そうですね。いい月が出ていますね。』
(よし!)
女は心の中でつぶやく。
今夜は、『ある』日だ。
適当に二品選び、注文する。
今夜は、枝豆と、切り干し大根の煮つけ。
決して満腹にならないチョイスだ。
『お会計を、お願いします。』
『、、、はい。○○円です。』
女は、言われた金額を支払う。
もちろん、現金でだ。
20xx年、冬。
日本政府は、唐揚げの製造販売、
飲食店での提供、家庭で作ることを禁止した。
一時は、唐揚げを食べて、健康に!と推奨したにも関わらず、
今度は、全面禁止令だ。
全く、家にいろと言ったり、旅行に行けと言ったり、
どうしようもない国である。
女は、店を出る。
視線だけで、あたりを警戒し、
ビルの地下1階へと続く、階段を降りる。
元々は倉庫として使われていたスペースだ。
冷たい鉄製の扉の前に立つ。
ドアノブには触れない。
1分後、ドアが内側から開く。
素早く、中に入る。
中では、すでに数名が、唐揚げを楽しんでいた。
ここは、お忍びで禁止された唐揚げが食べられる場所だ。
じゅわじゅわと油の音、ひっそりと会話する人々。
女は、もう一度、カウンターに座る。
ビールだ。もちろん。
待ちに待った、わが愛しの唐揚げ。
女の表情がやっと緩む。
隣で、二人組の男性が、ひそひそと話している。
『まったく、おかしな日本になってしまった。』
『そうですな。おかげで、うかうかレモンも買えやしない。』
唐揚げ禁止法が出来てから、レモンを買う時は、
レジにこう表示される。
【このレモンは、唐揚げ用ですか?】
【はい】 【いいえ】
『まさに、唐揚げ狩りですな。』
『そうですね。、、、あ!買占めはダメですぞ。』
『、、、はいはい。食べすぎもね。さ、レモンをかけて。』
どんなに禁止されようと、
美味しいものは、生き残る。
☆読んでくださり、ありがとうございます💓
ショートショートにしては長いけど、
ま、いっか(´・ω・)
書くにあたり、スーパーのお惣菜コーナーで買ってきた。
(∩´∀`)∩💕
美味しいなぁ~。
もう、バレンタインとか、これ贈ればよいのでは?
(´・ω・)??