精神病よりずっとマシ
風邪をひいた。熱が出た。喉も体の節々もめっちゃ痛い、身体中しんどい。
近所の病院の発熱外来はどこも予約がいっぱいで、少し遠めの病院まで歩いて行く。案の定ぶっ倒れて点滴をくらう。アホすぎる。看護師さんとても優しくてかっこよかったな。ありがとうございます。
当然誰もお迎えなんて来てくれないので、歩いて帰る。
帰りにポカリやら栄養ドリンクやらを買う。重い。
自分の介抱をする。当然、寝込んでいても生活は続く。
溜まった洗い物も洗濯物も私以外に片付ける人はいない。風邪ひいた時くらいパートナーが居たらなぁって気持ちが過ぎるけど、結局なんとかなる(そうせざるを得ない)のでいらないなと落ち着く。
こうして分かりやすい病人期間を過ごす。流行りのウイルス病含め風邪を引いたり、怪我をして外科にお世話になったりする度に思う、精神病よりずっとマシ、と。
まず、世間体。風邪や怪我で予定をキャンセルしたり、休みの連絡をするのは比較的理解されやすい。「お大事に」で終わる。明確な理由もなく、どうしても今日は出かけられないという鬱の症状を周りに説明するのは心底難しい。分かりやすく言おうとするとなんか嘘臭くなる。それも1回だけじゃないから、単に急にバックれるやつとか、サボり癖のあるやつになっていく。
そして、自分自身。風邪のときだって身体はしんどいけど、やはり毎日の鬱の方がずっとしんどい。分かりやすい痛みより、見えない痛みの方がずっと辛い。幸い、大病や大怪我をした事がないからそれと比較はできないけど、治る骨折よりは死にたくてたまらない時の方がずっと辛い。障害やうつ病による苦痛に終わりは無いけど、風邪は大抵の場合治る。風邪に苦しんで1日を過ごすより、なんか今日は動けないと思っていたら夜になる日々の方がずっとつらい。大きな虚無感や無力感が伴う。
これは、本当に言ってはいけないことなんだけど、時々、癌などのわかりやすい病気の人が羨ましいと思ってしまう。本当にごめんなさい。本人が1番しんどいし、誰かのしんどさと自分のしんどさを比較することなんてできないのだから、この感覚が間違ってるのは知ってる。そういった病気で苦しんだ人が身近にいるから、余計に。
癌はみんな心配する。仕事を休んだり退職する理由も、その後の復帰も分かりやすい。みんなどんなサポートをすればいいか分かりやすい。治ったり、定期通院するだけになってくると、よかったね〜ってなる。少なくとも心は健康だったりする。扱いにくさはない。それに、鬱病を克服して○○に!より、癌を克服して○○に!の方が、かっこいい。前者を掲げて活動しているひと、なんか胡散臭く感じちゃう。
みんなが心配しやすい癌になれた方が、変に気を使ったり露骨に嫌悪される鬱病になるよりマシなんじゃないかって思ってしまう。鬱病で一度社会からドロップアウトすると、めちゃくちゃ戻るのが難しい。周りも扱いにくそうにしてるのがわかる。そんでもって、寛解に至る人は少ない。治ることはほぼ無い。一度壊れてしまうと、どうやっても普通のあっち側にはいけないことが感覚的にわかる。一度死にたい気持ちを味わうと、死にたいと思ったことがない人間の世界には行けなくなる。精神病は基本的に不可逆で、どっちかと言うと戻るんじゃなく、それを受容して上手いことやっていくのがだいたいの方針だ。頭では分かりつつも、やっぱりあっち側に行きたいと思ってしまう。死にたいと思わない、生きてるのが当たり前、そんな初歩的なことを考えることもない人間の世界に行きたい。
人には人の地獄がある。だから比べちゃいけない。羨ましくなんて思うのは筋違いだ。今病気で苦しんでいる方、その周りの方、本当にすみません。
私の中では、日常が地獄で、風邪は健常者と同じ体験ができるボーナスタイムだ。それだけだ。
ボーナスタイム、楽しむぞ〜!!!!