『ハロウィンの花嫁』で学ぶロシア語(その16)
渋谷ハチ公前。「ナーダ・ウニチトージティ」の3人。プラーミャに照準を定めるエレニカ。飛び出すコナン。
ハロ嫁関連の前後の記事は、下記マガジンを参照されたい。
『ハロウィンの花嫁』で学ぶロシア語
※ 以下、ネタバレになるので、未視聴の方は先に映画をご覧ください。
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2022年4月15日に公開されたTVCM映像。
劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』TVCM 集結編
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ヘリでの脱出をはかるプラーミャ。
屋上ヘリポートで待ち構えるコナン。
コナンの詰問に、爆弾魔は犯行目的・手法を懇切丁寧に説明。
余裕綽々で、渋谷の高低差を利用した液体爆弾の設置箇所まで明かす。
(重要エピソード:プラーミャの右肩に残る弾丸、警察学校組の消息、パイロットに扮しプラーミャの急所を的確に狙う降谷、肩脱臼を自己整復するプラーミャ、シニヨンに収納された手榴弾、手榴弾を無効化する花火ボール、首輪爆弾の解除、離陸後のヘリに高層ビル屋上から飛び移る降谷、落下炎上するヘリ内で素手タイマンするプラーミャと降谷・・・などなど。コナンくんも降谷さんもプラーミャも、みんな人間をやめているので、筆者にはうまくまとめきれない。でも、ドキドキハラハラで、めちゃめちゃ面白い場面)
屋上、およびヘリコプター機内でのすったもんだの末、ヘリはハチ公前広場に墜落。
プラーミャと降谷の乗ったヘリは、たまたま(!)ハチ公前広場に設置されていたハロウィン巨大バルーンアートに衝突し(衝撃が緩和され)、二人は奇跡的に一命をとりとめる。
怒髪天を衝いたプラーミャが降谷に襲いかかるも、居合わせた婚約者・村中の延髄チョップで気絶。村中は降谷が公安であることを見抜き、現場を立ち去るよう促す。
これら一部始終を「ナーダ・ウニチトージティ」の3人がハチ公像の奥から見ていた。
「ナーダ・ウニチトージティ」の面々にとって、仇敵プラーミャの息の根を止める千載一遇のチャンスである。
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グリゴーリー
Пристре́лим её здесь и сейча́с.
「・・・・・・今ならヤツを殺れる」
(発音)
エレニカ
Кири́лл... Я отомщу́ за тебя́, сыно́к...
「キリル・・・・・・ママが仇をとるよ・・・・・・」
(発音)
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気絶するプラーミャにエレニカが照準を定めた瞬間、コナンが止めに入る。
立ちはだかるコナンに銃口を向けながら、エレニカは家族の業死と復讐を訴える(政治家の関与とプラーミャによる爆殺がほのめかされる)。
コナンは、銃を構えるエレニカの手に小さな両手を添え、少年の姿で静かに抱きしめる。
事情を聞いていた村中がエレニカたちに近づき、プラーミャへの厳罰を約束する。
この間も、渋谷の街にプラーミャの液体爆弾が広がり続けていた。
コナンは、「ナーダ・ウニチトージティ」のリーダーであるエレニカに、援助(人手の提供)を依頼する。
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コナン
На́до уничто́жить.
「止めようプラーミャの爆弾を」
(発音)
ここまで、エレニカたちの組織名ともなっている「ナーダ・ウニチトージティ На́до уничто́жить」というロシア語は、徹頭徹尾、「プラーミャを始末・抹殺しなければならない」という意味で用いられていた。
組織名の由来は、地下貯水槽でエレニカがコナンに向けて言った言葉「На́до уничто́жить Пла́мя!(字幕:プラーミャの息の根を! / 逐語訳:プラーミャを始末しなければならない!=プラーミャの息の根を止めねばならない!)」により、明示される。
ここでの動詞「ウニチトージティ уничто́жить(敵を始末・抹殺する)」の目的語は、プラーミャである。
(詳しくは、その7を参照)
しかし、エレニカがプラーミャの射殺を断念し、爆弾魔の身柄が警察に委ねられた今、動詞「ウニチトージティ уничто́жить」は緩やかに意味を転じ、「(兵器・爆弾などを)無効化する」という意味で用いられる。
本来は「На́до уничто́жить бо́мбу (взрывча́тку) Пла́мени(プラーミャの爆弾を無効化しなければならない)」など、目的語(プラーミャの爆弾)を明示した方が良いのだろうが、ここではセリフ(=直前の「エレニカさん、協力して。これ以上、悲劇を増やさないためにも、あなたたちの助けが必要だ」というコナンのセリフ)の文脈の助けを借りて、「ウニチトージティ уничто́жить」する対象(=悲劇を増やさないために皆で協力して無効化するもの=プラーミャの液体爆弾)が暗示されている。
このようにして、プラーミャを抹殺するために集結した「ナーダ・ウニチトージティ」は、物語の終盤で、プラーミャの爆弾を無効化するために多大な貢献をする組織に変貌を遂げるのである。