見出し画像

『ハロウィンの花嫁』で学ぶロシア語(その9)

10月31日、ハロウィン。村中とクリスティーヌの結婚式当日。厳戒態勢。エレニカとラザレフ兄弟(ロシアの対プラーミャ民間組織「ナーダ・ウニチトージティ」幹部)は、渋谷マークシティのカフェから、式場のヒカリエを注視。



ハロ嫁関連の前後の記事は、下記マガジンを参照されたい。

『ハロウィンの花嫁』で学ぶロシア語



※ 以下、ネタバレになるので、未視聴の方は先に映画をご覧ください。


*   *   *   *   *




*   *   *   *   *


2021年12月23日に公開された予告動画。


劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』予告【2022年4月15日公開】
東宝MOVIEチャンネル


*   *   *   *   *


10月31日のハロウィン当日は、村中とクリスティーヌの挙式日。
厳戒態勢の中、2人だけの結婚式が渋谷ヒカリエで執り行われる。

同じころ、「ナーダ・ウニチトージティ」のリーダー・エレニカと側近のラザレフ兄弟は、ヒカリエを臨むマークシティのカフェで頃合いを見ていた。


*   *   *   *   *


ドミトリー 
Пора́. Пла́мя обяза́тельно поя́вится в том зда́нии. 
「いよいよだ プラーミャは必ずあのビルに現れる」

(発音)

IPA(国際音声記号、ロシア語ではМФА)での表記
[pɔˈra   plɑmʲjə  ɐbjɐˈzatʲɪlʲnə   pɐˈjævʲit͡sə   f‿tom  zdɐˈnʲiɪ̯ɪ]

発音のカタカナ表記
パラー / プラーミャ アビザーチリナ パヤーヴィッツァ フトム ズダーニイ

(文法・語彙)

пора́ (無人称述語) ~すべき時だ、~する頃合いだ

Пла́мя プラーミャ(爆弾犯の通り名、語義は「炎」詳しくは、その1を参照)

обяза́тельно (副) かならず、きっと

поя́вится < появи́ться (完)(現れる、姿を見せる)の三人称単数現在変化(未来完了)。主語Пла́мя = оно́(中性名詞)に合わせて人称変化する。

в +(前)(内部空間) ~の中で、~の中に

том < то (指示代名詞тот「あの」「その」の中性形)の前置格。

зда́нии < зда́ние (中)(ビル、建物)の前置格。

Пора́.「時が来た」「時機到来だ」
Пла́мя обяза́тельно поя́вится в том зда́нии.
「プラーミャは必ずあのビルに現れる」


通常、人間が主語の場合、述語は он(男性)、она(女性)、они(複数)のいずれかの性・数に合わせて人称変化する。

しかし、プラーミャは性別不詳なので、映画の前半(正体不明)と後半(正体判明)で、文法上の性が男性から女性に移行しているのも興味深い。

以下に、該当箇所を引用する。

(その5より)
Я хочу́ пойма́ть его́ со́бственными рука́ми.
「私はを(ヤツ=プラーミャを)自分の両手で捕まえたいんだ」

(その9より。この記事の次項を参照)
На́до уничто́жить его́, несмотря́ ни на что.
「何があってもヤツ(=プラーミャ)を始末しなければならない」

(その16[今後、記事を投稿予定]より。プラーミャの正体判明後)
Пристре́лим её здесь и сейча́с.
「この場で今すぐヤツ(彼女=プラーミャ)を射殺しよう」



グリゴーリー 
На́до уничто́жить его́, несмотря́ ни на что. 
「何としても奴は仕留める」

(発音)

IPA表記
[nɐˈdo  uˈnʲiʧtuˈʒɪtʲ  ɪˈvo  nʲɪsmɐˈtrʲa  nʲɪ   na   ʂto]

発音のカタカナ表記
ナーダ ウニチトージチ イヴォー ニスマトリャー ニナシトー

(文法・語彙)

на́до (無人称述語) +(不定形) ~せねばならない、~する必要がある

уничто́жить (完) 滅ぼす、(敵などを)殲滅する、(兵器・爆弾などを)廃棄・無効化する

его́ < он (人称代名詞)(三人称単数)(彼=プラーミャ)の対格。

несмотря́ (前) на +(対) ~にもかかわらず

ни… (接頭)(疑問詞に付して、完全否定を表わす)  ⇒ ни на что は ничто́ (何も~ない) の ни… と что の間に前置詞 на を挿入した形。на は несмотря́ на の на

несмотря́ ни на что 「どんなことがあっても必ず」「何があっても、それにかかわらず」

На́до уничто́жить его́, несмотря́ ни на что.
「何があってもヤツ(彼=プラーミャ)を始末しなければならない」

※ На́до уничто́жить については、その7を参照。



グリゴーリー 
Возмо́жно, э́то наш после́дний шанс. 
「これが最後の機会になるかもしれないからな」

(発音)

IPA表記
[vəzˈmoʐnətʲ  ˈɛtə  nɐʂ  pəsˈlʲɛdʲnʲij  ʂans]

発音のカタカナ表記
ヴァズモージナ エータ ナーシ パスリェードニイ シャーンス

(文法・語彙)

возмо́жно (挿入語) もしかしたら…かもしれない

э́то (指示代名詞)(中) これ

наш (所有代名詞・男性形) 私たちの、俺たちの

после́дний (形) 最後の

шанс (男) チャンス、機会

Возмо́жно, э́то наш после́дний шанс.
「もしかしたら、これが俺たちの最後の機会かもしれないからな」



グリゴーリー 
Вот поэ́тому, мы, все чле́ны «На́до уничто́жить» прие́хали в Япо́нию.  
「だからこそ俺たち『ナーダ・ウニチトージティ』のメンバー全員が日本にやって来たんだ」

(発音)

IPA表記
[vot  pɐɛ'tomʲu  mɨ  fsʲɛ   ʧlʲɪnɨ  nɐdə  ʊnʲɪʧtu'ʒɨtʲʊ  prʲɪɛ'xalʲɪ   v   jɐpɔ'nʲɪʊ]

発音のカタカナ表記
ヴォット パエータムー ムゥィ フシェー チリェーヌィ ナーダ ウニチトージチ プリイェーハリ ヴイポーニユ

(文法・語彙)

вот (助)(強調) ほら

поэ́тому (副) そのため、だから

вот поэ́тому「これこそが理由だ」「だからこそ~だ」

мы (人称代名詞)(一人称複数) 私たち、俺たち

все < весь (定代名詞) の複数形。все「みんな」「全員」

чле́ны < член (男)(メンバー) の複数形。

«На́до уничто́жить» (固有名詞)「ナーダ・ウニチトージティ」
(「抹殺・始末しなければならない」「無効化しなければならない」の意)

прие́хали < прие́хать (完)(乗物でやって来る) の複数過去形。

в +(対)(内部空間への運動) ~の中へ

Япо́нию < Япо́ния (女)(日本) の対格。

Вот поэ́тому, мы, все чле́ны «На́до уничто́жить» прие́хали в Япо́нию.
「だからこそ、俺たち『ナーダ・ウニチトージティ』のメンバー全員が日本に(乗物で=おそらく飛行機で)やって来たんだ」

※ На́до уничто́жить について、詳しくはその7、その8を参照。