『ハロウィンの花嫁』で学ぶロシア語(その11)
渋谷マークシティのつづき。激昂したエレニカの喉輪を食らうドミトリー。慌ててエレニカをなだめるグリゴーリー。
ハロ嫁関連の前後の記事は、下記マガジンを参照されたい。
『ハロウィンの花嫁』で学ぶロシア語
※ 以下、ネタバレになるので、未視聴の方は先に映画をご覧ください。
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2022年2月14日に公開された特報第2弾。
劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』特報2【2022年4月15日公開】
東宝MOVIEチャンネル
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引き続き、渋谷マークシティのカフェ。
ドミトリーは、不用意な発言でエレニカの逆鱗に触れてしまう。
強烈な喉輪でドミトリーを黙らせるエレニカ。
居合わせたグリゴーリーは、弟の代わりに謝罪し、エレニカをなだめる。
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エレニカ
...Замолчи́. 「・・・・・・だまれ」
(発音)
ドミトリーの息の根を止めそうな、エレニカの強烈な喉輪。
玉鷲関や阿炎関を彷彿とさせる(隙あらば相撲)。
グリゴーリー
И...извини́, Эле́ника.
「わ 悪かった エレニカ」
(発音)
グリゴーリー
Прое́хали. 「この話はよそう」
(発音)
グリゴーリー
Дава́й, успоко́йся, ты же всегда́ споко́йна.
「いつもの冷静な君に戻ってくれ」
(発音)
グリゴーリー
Ты в поря́дке? Дми́трий?
「大丈夫か!ドミトリー!?」
(発音)
ロシア語ロシア文化のレアリアを考慮すると、通常、兄弟同士ならは、ドミトリーはジーマ Ди́ма かミーチャ Ми́тя、グリゴーリーはグリーシャ Гри́ша 辺りの愛称で呼び合うのが定番だろう(派生の愛称ならば、無数にある)。
しかし、ロシア語のセリフに愛称を交えるとカオスになるので、ハロ嫁では愛称呼びを割愛したのだろう。
(※ 2024年6月17日追記)
ラザレフ兄弟が互いに愛称呼びをしない点について、あまり深く考えずに「ロシア語のセリフが煩雑になるから、愛称を省略したのだろう」と単純に結論付け、上記のように記載した。 ↑
しかし、後からよくよく考えてみると、この「兄弟なのに、あえて愛称呼びをしない」行為にも、意味があるような気がしてきた。
『ナーダ・ウニチトージティ』は、対プラーミャで被害者が一致団結した組織である。
時に死と隣り合わせの活動(エレニカの兄オレグの場合など)もあり得る組織の中では、一定の緊張感や覚悟が求められるだろう。
そのような組織の中枢にあって、ラザレフ兄弟はきちんと公私を使い分けていたのではないか。
活動中の言動も、他のメンバーを意識したパブリックなものだったのではないか。
私たちも、社会生活でTPOに合わせて、同一の相手に対して異なる呼称を使い分けることは日常的に行っている。
気心の知れた同期・近しい先輩後輩に対して、内輪であれば「○○ちゃん」などと互いに呼び合う。
しかし、ひとたび公的な場に出ると、同じ相手について「○○さん」「○○氏」「○○部長」「○○社長」「○○先生」等、正式に称するよう心がける。
ラザレフ兄弟も、2人きりの時は家族のうちとけた会話だとしても、対プラーミャの活動中には公のふるまいを徹底していたのかもしれない。
『ナーダ・ウニチトージティ』は被害者組織なので、ラザレフ兄弟以外にも兄弟・姉妹・親子(片方の親や子供を奪われたり)等で参加しているメンバーもいるだろう。
身内の馴れ合いムード、なあなあの関係を排除するために、組織内部ではある程度の緊張が保たれていたのかもしれない、などと想像(妄想)した。
(※ あくまで筆者の勝手な感想・想像です)
炭治郎並みに咳き込むドミトリー。
ロシア語(おそらくネイティヴ話者)の声優さん、迫真の演技。
やるなぁ。