『ハロウィンの花嫁』で学ぶロシア語(その12)
小五郎が入院する渋谷中央病院。コナンは蘭のメモ「nynя」「nne40」を目撃。
ハロ嫁関連の前後の記事は、下記マガジンを参照されたい。
『ハロウィンの花嫁』で学ぶロシア語
※ 以下、ネタバレになるので、未視聴の方は先に映画をご覧ください。
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警視庁前でエレニカの兄オレグが亡くなった、タブレット爆発事件。
小五郎、コナン、少年探偵団とともに現場に居合わせた蘭は、燃えながら落下して来たオレグのメモを偶然にも目撃し、記憶していた。
小五郎が入院する渋谷中央病院を訪れたコナンは、蘭の再現メモを見て、プラーミャの正体を確信する。
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nynя ←?
пу́ля 銃弾
(発音)
nne40
плечо́ 肩
(発音)
この場面は、ロシア語学習者ならば(おそらくロシア語話者も)すぐに察しがついて読み解けるだろう部分。
映画では、序盤からあたかも必修外国語のようにロシア語が飛び交う。
その流れで、後半で nynя と来れば「пупя? いや、пуля だな」と即座にわかるし、nne40 も「ппе40? いや… плечо だな」と推察可能だと思われる。
まあ、ロシア語学習者でなくとも、犯人の目星はすぐに付きそう。
そもそも怪しい登場人物が限られている上に、声優さんの声を聞いただけで犯人がわかったという観客・視聴者も多かったようだ。
確かに、犯人の声、すごく良かった。
特に豹変後の悪態演技。突き抜けてて凄い。
それにしても、蘭ねえちゃんの動体視力はいったいどうなっているのだろう。
一般に、静止視力は鍛えられないけれど、動体視力は鍛えられるらしいので、よほど日々修行を積んでいるのだろうか。
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あと、オレグぐらいの年齢なら、ロシア語は筆記体で書くだろうなあ・・・とか思ったりして。
若い世代のロシア語話者は、ブロック体で文字を綴る人も増えているようだが、筆記体の方が速く書けて遥かに効率が良い。
でも、さすがのコナンくんも、ハワイで親父によるロシア語2ケ月特訓だけでは、筆記体の解読まではきついよなあ。
筆記体じゃ、蘭ねえちゃんの超人的な動体視力にも、負荷がかかり過ぎるしなあ。
オレグは、外国人であるマツダ・ジンペイに見せるために(生前の松田刑事はロシア語を話せないし、おそらく読めないけれど)、ブロック体のキーワードだけ書いて、わかりやすくしてくれたのかなあ。
何なら、キーワードだけのメモというのも、気になると言えば気になる。
現実問題、「弾丸」「肩」だけでは言葉足らずなので、せめて「右肩に銃弾(が残っている)」ぐらいは伝えそうではある。
でも、そうすると、キーワードが格変化して余計にややこしくなるのが悩ましいところ。
なんやかやと想像力(妄想力?)を逞しくして、筆記体の例文を作成してみた(完全に蛇足、余談です)。
あともう一つ。
пу́ля(プーリャ=銃弾)も、плечо́(プリチョー=肩)も、Пла́мя(プラーミャ)も、すべて п の文字で始まることも興味深い。
何なら右肩を意味する пра́вое плечо́(プラーヴァエ・プリチョー)も п はじまり。п だらけ。
(意図的ではないだろうが)まるで頭韻を踏んでいるみたいで、とてもいい(玉壺風に)。
また、п は破裂音なので、何となく破裂・爆発を連想させる音であることも指摘しておきたい。
破裂音は、ロシア語で взрывны́е согла́сные といい、взрыв は「爆発・破裂」を意味する。
同語根の взрывча́тка は「爆発物」の意で、プラーミャのスマホ画面(遠隔起爆操作の画面)に表示される бо́мба「爆弾」の類義語である。
まあ、さすがに爆弾魔の通り名や、犯人推理のキーワードにそこまでの意味(頭韻、破裂音)を込めてはいないだろうが、偶然だとしても連想が広がるのは興味深い。