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『ハロウィンの花嫁』で学ぶロシア語(その12)

小五郎が入院する渋谷中央病院。コナンは蘭のメモ「nynя」「nne40」を目撃。



ハロ嫁関連の前後の記事は、下記マガジンを参照されたい。

『ハロウィンの花嫁』で学ぶロシア語



※ 以下、ネタバレになるので、未視聴の方は先に映画をご覧ください。


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2022年3月25日に公開されたスペシャル映像。


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警視庁前でエレニカの兄オレグが亡くなった、タブレット爆発事件。

小五郎、コナン、少年探偵団とともに現場に居合わせた蘭は、燃えながら落下して来たオレグのメモを偶然にも目撃し、記憶していた。

小五郎が入院する渋谷中央病院を訪れたコナンは、蘭の再現メモを見て、プラーミャの正体を確信する。


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nynя ←? 
пу́ля 銃弾

(発音)

IPA(国際音声記号、ロシア語ではМФА)での表記
[ˈpulʲə]

発音のカタカナ表記
プーリャ

(文法・語彙)

пу́ля (女) 銃弾、弾丸



nne40 
плечо́ 肩

(発音)

IPA表記
[plʲɪˈt͡ɕɵ]

発音のカタカナ表記
プリチョー

(文法・語彙)

плечо́ (中) 肩


この場面は、ロシア語学習者ならば(おそらくロシア語話者も)すぐに察しがついて読み解けるだろう部分。

映画では、序盤からあたかも必修外国語のようにロシア語が飛び交う。
その流れで、後半で nynя と来れば「пупя? いや、пуля だな」と即座にわかるし、nne40 も「ппе40? いや… плечо だな」と推察可能だと思われる。


まあ、ロシア語学習者でなくとも、犯人の目星はすぐに付きそう。

そもそも怪しい登場人物が限られている上に、声優さんの声を聞いただけで犯人がわかったという観客・視聴者も多かったようだ。

確かに、犯人の声、すごく良かった。
特に豹変後の悪態演技。突き抜けてて凄い。

それにしても、蘭ねえちゃんの動体視力はいったいどうなっているのだろう。

一般に、静止視力は鍛えられないけれど、動体視力は鍛えられるらしいので、よほど日々修行を積んでいるのだろうか。


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あと、オレグぐらいの年齢なら、ロシア語は筆記体で書くだろうなあ・・・とか思ったりして。

若い世代のロシア語話者は、ブロック体で文字を綴る人も増えているようだが、筆記体の方が速く書けて遥かに効率が良い。


でも、さすがのコナンくんも、ハワイで親父によるロシア語2ケ月特訓だけでは、筆記体の解読まではきついよなあ。

筆記体じゃ、蘭ねえちゃんの超人的な動体視力にも、負荷がかかり過ぎるしなあ。

オレグは、外国人であるマツダ・ジンペイに見せるために(生前の松田刑事はロシア語を話せないし、おそらく読めないけれど)、ブロック体のキーワードだけ書いて、わかりやすくしてくれたのかなあ。


何なら、キーワードだけのメモというのも、気になると言えば気になる。

現実問題、「弾丸」「肩」だけでは言葉足らずなので、せめて「右肩に銃弾(が残っている)」ぐらいは伝えそうではある。

でも、そうすると、キーワードが格変化して余計にややこしくなるのが悩ましいところ。


なんやかやと想像力(妄想力?)を逞しくして、筆記体の例文を作成してみた(完全に蛇足、余談です)。


あともう一つ。

пу́ля(プーリャ=銃弾)も、плечо́(プリチョー=肩)も、Пла́мя(プラーミャ)も、すべて п の文字で始まることも興味深い。
何なら右肩を意味する пра́вое плечо́(プラーヴァエ・プリチョー)も п はじまり。п だらけ。

(意図的ではないだろうが)まるで頭韻を踏んでいるみたいで、とてもいい(玉壺風に)。


また、п は破裂音なので、何となく破裂・爆発を連想させる音であることも指摘しておきたい。

破裂音は、ロシア語で взрывны́е согла́сные といい、взрыв は「爆発・破裂」を意味する。
同語根の взрывча́тка は「爆発物」の意で、プラーミャのスマホ画面(遠隔起爆操作の画面)に表示される бо́мба「爆弾」の類義語である。


まあ、さすがに爆弾魔の通り名や、犯人推理のキーワードにそこまでの意味(頭韻、破裂音)を込めてはいないだろうが、偶然だとしても連想が広がるのは興味深い。