「昔の人の焦りがもたらした異端を、のちに革命と呼ぶ」オリエンタルラジオの新ネタを見て感じたこと。
つい先日のこと、六本木にある新国立美術館で最終日を迎えた「文化庁メディア芸術祭」へと足を運んだ。閉館の1時間前に飛び込んだものだからすごいバタバタと気になる作品をチェックして慌ただしく会場を後にした。そんな中で、わたしが釘付けになった映像作品があった。
「Gill & Gill」という16分21秒の映像作品で、作者は英国のLouis-Jack HORTON-STEPHENSという作家だった。詳しくは本サイトを是非見て欲しい。(http://festival.j-mediaarts.jp/award/art/gill-gill)
この作品は題材も作品のクオリティーの高さや演出もとにかく素晴らしかったが、その中でも酷く頭に残るフレーズがあった。
「昔の人の焦りがもたらした異端を、のちに革命と呼ぶ」
興奮した状態でメモしたものだから細かい言い回しは置いておいて、おおよそこんなセリフが作中に出てきた。しかしその言葉が頭にすっと入り込んで、どうにもこうにも忘れられなくなってしまった。まさに、時代が変わる時の流れを的確に表していると思ったからだ。
お笑いとオリエンタルラジオの新ネタ「PERFECT HUMAN」を見て
先日土曜夜に放送されたフジテレビ系列のお笑い番組「ENGEI グランドスラム」で目に飛び込んできたのはオリエンタルラジオがやってのけたぶっ飛び系の新ネタ「PERFECT HUMAN」だ。
実家にちょうど帰省していたわたしだったが久しぶりにテレビで声をあげて笑った。なにが面白いって、もうなんでだろう、ツボすぎてなにも言えないんだけどとにかく彼らのことが一瞬で大好きになってしまった。
どのSNSを見ても「オリラジやべーwww」と賞賛の声がタイムラインを埋め尽くす。翌日にはネットニュースになるほどの騒ぎだった。とにかく世間が彼らに共鳴し、歓喜し、このコンビの新しい道が見えたようにさえ思った。
しかし、わたしが一番ハッとさせられたのは彼らのネタが終わったあとに発せられた司会のナインティナインのお二人の言葉だった。
「あいつら何やっとんねん!!!」
「歌って踊ってただけやないかー!笑」
半分笑いながらだったが、もう半分は言葉の通りだったとわたしには感じた。そしてその言葉が、笑いきったわたしの頭をスーッと冷めさせた。そう、彼らのやったことは恐らく今のお笑い界では「ネタ」でも「お笑い」でもなかったということだ。ナインティナインの二人もそんな悪気はなかったと思うが「お笑いで、そんなのありかよ!笑」というちょっとした若手の飛躍に対する羨ましさが見えたようにも思う。
この光景がまさに、メディア芸術祭のあのフレーズ "昔の人の焦りがもたらした異端を、のちに革命と呼ぶ" のシーンで、これはまさに、先日のオリラジがやってのけたことそのものだと強烈に頭の中をフラッシュバックした。
オリラジのお二人は、ずっと焦って焦ってきっとこの業界で生き抜いてきたのだろう。芸能人と呼ばれる職業の人は皆そうだと思うが、いつ、誰に蹴落とされるかわからない業界。一発屋なんて言葉が忍び寄り、ゆっくりとオファーが減り、自分のレギュラー番組が消え、古いと世間からぽい捨てされるんじゃないかと肝を冷やしながら彼らは今もあのステージで輝いている。実際にオリラジというコンビも一時期テレビから消えた時期はあったし、そのあとに藤森さんの「チャラ男」という新しい立ち位置や中田さんの「インテリ」を武器に各々で必死に、業界での居場所と価値を作り続けようと必死に必死に、それはもう焦りの塊だったのかもしれない。それがあったからこそ、伝統的な「コント」や「漫才」で勝負するのではなく、新しいエンターテインメントを武器に彼らはまた一歩を踏み出したのかもしれない。それが世間に受け入られらた瞬間は、面白いだけでなくわたしにとっては酷く感動的だったのだ。
もちろんどの文化にも、技術にも、セオリーがありやり方というものがあって然るべきだと思う。全てはやはり基本から始めるべきだと思うし、基本を身につける前に自己流にアレンジしたり、挑戦的なことをしても大抵うまく行かないからだ。それをしっかり踏まえた上で、オリラジのように次の刃を研ぐのは時代を切り開く大きな武器になるだろう。
最後に。そのあとの司会のコメントもまた象徴的で、
矢部「でも、悔しいけどリズム取ってる自分がいた。笑」
岡田「正直、俺もあのステージやりたい」
と二人の素直な言葉のようにも聞こえた。岡田さんはダンス特訓をしてアイドルグループに乱入する企画をいくつもやっているから余計に興味があったのかもしれないが(笑)にしても、その芽が出始めている時代の変化を彼らは純粋に受け止めようとする姿勢が、お笑いの先輩として客観的にとても素敵だった。まだまだ、テレビもお笑いも捨てたもんじゃないと思わせてくれた、そんな週末だった。
読んでいただいただけで十分なのですが、いただいたサポートでまた誰かのnoteをサポートしようと思います。 言葉にする楽しさ、気持ちよさがもっと広まりますように🙃