朗読台本 月見兎に狐の嫁入り @試作中
朗読台本が欲しい~というリクエストいくつか届いていたので、試作段階のものをUPしておきます。
これから尺を長くするのか、内容をどうするか考えて調整する予定。
#しらたまの台本 タグをつけていただければ読み上げも問題ありませんが、後程修正される可能性があるのでご注意ください。
試作版 月見兎に狐の嫁入り
夕立が小雨にかわり、雲の切れ間から夕陽が差し込んだ
風に混じった秋の気配を感じながら、物思いにふける
このまま晴れれば、月が見えるだろうか
ただ、秋の空に期待しすぎるのもどうかとは思う
季節の変わり目は、どうしても空が荒れやすくなる
美しい満月が見えるのも半分くらいの確率だろうか
予想が外れた時に気が沈まないよう、心に一本線を引く
それでも希望を捨てきれず、改めて空を見上げた
晴れ間は広がり、頭上は茜色に染まっていく
それでも風に流された雨粒は落ち続ける
空の茜は深くなり、やがて藍へと変わりはじめる
最期まで空の隅を隠していた雲がはれ、まん丸の月が姿を見せた
小雨はまだ降り続いていたので、その姿につい笑ってしまった
月のウサギに、狐の嫁入り
なんともにぎやかだ
そして、笑ってから、胸がズキズキと痛むことに気付いた
隣にあの人がいたら……
どんな顔をしただろうか
なぜ笑うのか聞いてきただろうか?
それとも、得意顔で月にまつわる話でもしただろうか
わからない
なにも
ついさっきまで、唐突に訪れた別れの衝撃で、頭の芯がぼんやりとしたままだった
ただ、一つ思う
隣にあの人がいたら……
そんな想像がめぐるくらいには、回復はしているらしい
スマホを取り出して、月にカメラを向ける
あちらでは、月はどう見えているだろうか?
時差や、地域の違いを考えながら、四角い画面に切り取られた空を見る
重くたまった空気を吐き出し、冷え始めた空気を吸い込むと、頭の靄が晴れた気がした
自然と指が動き、シャッターが切れた
どんなふうに撮れたか確認もせずに、しばらく使っていない連絡先を呼び出していた
まずは、どうするべきだろう?
そのまま画像を送るべきか、何か言葉を添えるべきか
一緒にいた時はどうだったかを思い出そうとして、また少し笑ってしまった