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さよなら青春のその先に

あこがれの国プ体験から三ヶ月、PRODUCE 101 JAPANのせいでいつも寝不足だった週末ともようやくお別れだ。緊張がとけてほっとした気持ちと、ずっと応援してきた練習生たちの姿をもう見ることのできない寂しさが、いま、こころのなかを行ったり来たりしている。

はじめて国プになれる!国民投票に参加できる!!と浮き足立ちながら見始めた日本版プデュだった。練習生たちの紹介やレベル分け審査など、本国版とほぼおなじ演出でスタートした初回。見慣れた101脚の透明な椅子に初々しい練習生たちの表情を見て、高鳴る胸のときめきを抑えられないまま、わたしは晴れて国プデビューをむかえた。
ただひとつ本国版と違ったのは、出演する練習生たちがほとんどみんな素人だったことだ。おきまりの名前入りゼッケンに、いつものように事務所名ではなく、それぞれの出身地が書かれていたのが新鮮だった。事務所の知名度をどうしても意識してしまうかつてのプデュシリーズとは違って、どこか素朴でリラックスした彼らの関係性が、見ていてとても気持ちよかった。

事務所での修練経験がほとんどないせいか、初回のレベル分け審査で見せた練習生たちのパフォーマンスが、驚くほどぎこちなく見えたのもリアルだ。彼らのステージはイメージしていたそれとはだいぶかけ離れていて、お世辞にも上手とは言えなかった。
この子たち、ほんとうにプロになれるのかな…。不安と落胆の入り混じる気持ちで審査風景を淡々と流すように見ていたはずなのに、気づくといつのまにか画面にくぎづけになっていた。
彼らのパフォーマンスはつたないけれど、その声から、そのまなざしから、それぞれの思いが伝わってきて、ふしぎと胸にせまるものがあった。
そこにいる誰もが必死で、あたりまえに真剣で、うそみたいに真面目だったから。

さっきまでふわふわ風船みたいに浮かれていた気持ちが、こんどは重くずしりとのしかかってきた。
彼らのまなざしの重さに対して、自分の視線は軽すぎてはいないだろうか。簡単に批評して、気軽に投票して、ひとときを楽しめればいい。そんなふうにすこしでも思ってはいなかっただろうか。
人生をかけてこの場に出てきた彼らの挑戦はぜんぜん簡単なんかじゃないのに。
世界中の人の前で自分をさらけだすのはどれだけ怖いだろう。いま彼らが見せてる勇気を、ぜったいに笑ってはいけないと思った。

たどたどしいステージを見せる練習生が多いなか、はじめからすでに目を引く練習生たちがいた。もって生まれた華なのか、川尻蓮くんや豆原一成くん、鶴房汐恩くん、川西拓実くんみたいに才能そのものが歩いているような人たちを見ると、この世界で生き抜く厳しさをひしひしと感じてしまう。彼らは立っているだけでまわりの空気がちょっとちがって見える、そういうタイプの人だった。一目見ただけで、こういう人がアーティストやアイドルになるんだろうなと直感で思わせる、全身から強力な電波がずっと流れ出ているようなそんな人だ。

彼らのように強い電波でないけれど、まとっている色が独特で、あざやかにきらめいて見えるような人もいる。わたしにとってそれは上原潤くんやhicoくん、そして、宮島優心くんだった。彼らはみんなカラフルな個性にあふれていて、なにをしても目立っていた。色が強くてまわりと調和しきれないところも、となり合う色によってはとてつもなく美しい色合いに変わるところも、ほんとうに素敵だった。
わたしは彼らのことが大好きだったから、みんなこぞってデビュー組に入らなかったことがたまらなく悔しかったけれど、彼らならきっとどんな場所にいても輝くはずだ。たくさんの群れのなかでもけっして埋もれることのない、唯一無二の羽をもったきれいな鳥みたいに。

わたしの1pickは宮島優心くんだった。優心くんは、それだけでじゅうぶん戦えるくらい可愛いらしいのに、その可愛さを必要以上に武器にしないところがとにかく潔くてかっこいい。耳に残る歌声も、小柄なからだから繰り出されるダイナミックなダンスも、どれも彼だけがもつ特別な個性だ。パフォーマンスの精度を高めるために努力をいっさい惜しまない姿から、まわりに流されない芯の強さみたいなものがいつもほんのりにじみでていて、ただ魅力的だった。
うまくいかないこともたくさんあったはずなのに、こころが揺れて崩れてしまうことは一度もなかったし、どんなときも焦点がぴたっと定まっていて、ぼやっとしたところがひとつもなかった。小さいけれど根のしっかりした頑丈な木のようで、すべてにおいて信頼できる人だった。

練習中のささいなことをきっかけに、優心くんの順位がどんどん落ちていって、SNSや動画サイトのコメント欄にこころない言葉をたくさん書かれているのを見たときは、ほんとうにやるせない気持ちだった。彼のなにがいけなくて、なにが気に障ったのか、わたしには彼に投げられた批判的な言葉の真意がどれもわからなくて、長いあいだ釈然としなかった。
あらゆる言葉を彼もきっと目にしていただろう。気をゆるしたらぽきんと折れてしまうような強い向かい風に、目をつむりたくなる瞬間もあったはずだ。
それでも結局、彼は不機嫌な顔ひとつせずにしっかり目を開いて、自分のやるべきことをまっすぐやり通した。最後の最後までステージで見事なパフォーマンスを披露しつづけた優心くんを、わたしはこころの底から立派だと思う。

最終回のステージを見ているあいだ、いろんなことを思い出していた。
どんなときも真摯な姿を見せてくれたHALOの三人のことや、運命をたぐりよせることができるのは、他でもない自分自身だと教えてくれた磨田くんのこと。指先まで美しく洗練されていた佐野くんとプライドを全身で表現していた本田くんのダンス、ひたむきにがんばっていた練習生たちひとりひとりのことを。
いつか彼らがみんな有名になって、この日々のことを話すことがなくなったとしても、きっと覚えていたい。

ありがとう。三ヶ月間、すてきな夢をたくさん見させてくれた101人の練習生に、そしてJO1の11人に、どうか素敵な未来が待っていますように。


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