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◾️橘ちひろ×shiratama Camera×Talk Session

写真家・橘ちひろーーー普段から写真撮影を生業としつつ、福岡ではライブ写真家としてもお馴染みの彼女。音楽や芸術表現をしている人間であれば、一度は彼女のレンズに収まった人も多いはず。
そんな彼女が、何故写真を始めたのか。

『ー出来たらあなたの拠点でー』

積極的に新たな人間を撮る事、新たな出会いに向かう事、その人物を知る事。
それらに貪欲な彼女をSNS越しに見つめながら、そもそもの"橘ちひろ"という人間の人となりにとても興味が湧いた。
以前から何度か「写真撮ろーよ!」と声を掛けて頂いていたので、これを機に、被写体が撮り手にインタビューするという『Camera×Talk Session』という企画を振ってみた。

「やろーよ!撮る側がインタビューされるの新しいね!」

二つ返事で了承をもらい、思い立ってからあっという間に実現となったトークセッション企画。
とはいえ、仲を深めたいのが目的でもあったので、結果的には終始気軽な会話でお互いの事を喋り合った。

Phase1 - バルコニーで

ーshiratamaの暮らす部屋。ルーフバルコニー付き物件で、このバルコニーが部屋探しの決め手でもあった。

橘ちひろ(以下C): うわぁー、広いねー!

しらたま(以下S): そうなんですよー、広いでしょう?コレが良すぎて(部屋探しで)見つけてソッコー決めちゃいました。前にちひろさんのインスタの投稿で、ベランダが好きってのを見て、これはここで撮ってもらわねば!と思って。

C: いやぁ、めっちゃ良いよー!いーねぇー… 空広ーっ!

S: でしょー。自然も近いし、校区だから環境も良くて。向かいの棟が見える感じとかも、本当にお気に入りです。

C: やー、本当だよー… あ、空撮ろうっと。(シャッター)

S: まあ今日はインタビューって言ってますけど、とりあえず私がちひろさんとお喋りしたい目的なんです(笑)実際、1:1でちゃんと話すの初じゃないですか?

C: そー!ねー、意外とね。でもあれかな、ヒメピク(=ヒメノピクニック:Bar Amonマスター姫野氏が定期的に開催するDJイベント)の時にちょっと話したよね。

S: しかもヒメピク野外だから、ちょうど明るい時間だったし。ライブハウスとかって基本暗いし音大きいからあんまり喋れないじゃないですか。
あの時と、その前も一度写真撮ろう!って声掛けてもらったんですが、その頃浮き沈みが酷くて、全然写真に写れる気持ちじゃなくなっちゃって… アーティストや俳優だったら、そういう陰や闇の瞬間がかえって良かったりもするんですけど(笑)

C: 確かにあるよね。でも今回こうやって呼んでもらえて嬉しい!

カメラを持っても行ける範囲は自転車、
とにかくアクティブ!

S: そもそもちひろさんって、ライブ写真も撮ってるから周りの認知度も高いと思うんですけど、私がちひろさんの存在を知ったのがラウンジサウンズ(=バンドnontroppoのフロントマン・福岡のイベントオーガナイザーでもあるボギー氏が開催するレギュラーイベント)の『キン肉マンナイト』なんですよね。
ちひろさんあの時ナツコ(記者のキャラクター)のコスプレで撮影されてて、まさに適役じゃないですか。それが凄く印象的でよく覚えています。撮影もしながら、イベントの趣旨理解してしっかり楽しんでるなあって。

C: あれー?もっと前から知ってたような気がしてたけど、そんなもんか(笑)でもあのイベントも長いもんね。この間が4回目とかだもんね。

S: ああいうアンダーグラウンドのライブに足を運ぶようなきっかけって何だったんです?

C: ずっと若い頃からボギーさんの存在は気になってしょうがなくって、mixiとかもこっそり見てて(笑)まだ西新JAJA(=西新にあった主要ライブハウスで、現在は閉店)とかがあった頃かな。天神で面白いライブがあるって知って。
私ジョン・ウォーターズとか、新旧のホラー映画とかが好きで。ボギーさんその辺好きじゃない?だから凄い気になってたんだけど、なんか天神の方って遠く感じて。しかも凄い賑やかだし、気後れしちゃって。そうこうして、子ども産んでからかな、足を運ぶようになったのは。
何年か前のチンロック(=ヨコチンロックフェスティバル:ラウンジサウンズの年一フェス)に行って、色んな濃い人達がいて凄い楽しくて。それからだねー。
しらたまちゃんはよく行くハコはUteroが多い?

S: うーん、最近はライブよりDJの方が多いかな。ちひろさんも最近そっちにいらっしゃるから、幅広いなーって。

C: 最近はさ、nobody(=DJ ashira氏らによるインディーロックDJイベント)とかAmonとか、そっち系で会うようになったよね。なんかこう、DJイベントはライトで居心地良いよね。

S: 年齢重ねてくると、体力的にもライトにふらっと行けるイベントの方が良かったりもして、そっちが増えてますね。たまに全力で踊ってへとへとになったりもするけど(笑)
ライブは「誰かを見に行く」って目的があったりするじゃないですか。でもDJって、予期せぬ曲が聴けるっていうワクワクもあって。ライブの臨場感、DJのランダム感、それぞれの良さがありますよね。

PØRTAL presents: Zack Zack Zack JAPAN TOURにて

S: 話は戻りますが、ライブ写真を撮るようになったのも遊びに行き始めて徐々にって感じですか?

C: そうだねー、2人産んでからかな。まあその後コロナとかもあったりしたけど。最近またぼちぼちって感じ。

S: なるほど、お子さん2人かあ… そういえば私、ちひろさんのご飯写真がめっちゃ好きなんですよ。ちゃんとしたご飯なのに、時短でパパッと作ってて、でもちゃんと華やかさがあって。
いわゆる"映えご飯"みたいな嫌味さがなくて、日々のご飯、って感じで。私の中では100点ご飯です(笑)

C: あはは(笑)続けたいから、なるべくカッコつけずにとは思うけど、カメラマンって結構記録マニアな所もあるから。そういう満足感もあるかも。一応ね、どんだけ遊んでてもあれ上げてたら安心してもらえるかなって。

S: 確かに。ちひろさんって、活動が多いじゃないですか。だからよくあんだけちゃんとできるなって(笑)そういう意味で安心というか、ちゃんと主婦業もしてて凄いなってシンプルに思います。

S: そもそもちひろさんがカメラを始めたきっかけって何だったんですか?

C: カメラはねー、大学が写真学科なんよね。だから写真を始めたのは大学入ってからなんだけど、その時にカメラを買ってもらって。
でもその時はいわゆる“カメラマン育成コース”みたいなのじゃなくて、その当時にしては微妙な… 新しい分野でPhotoshopとかを使いこなせるようにとか、その前の時代の感覚で印刷の勉強とか、ちょうど移行期で。デジタルとフィルムの。
だから本当は、ちゃんとしたカメラマンコースで自分の作品をどうこう言ってもらえるような環境が良かったんだけど、コースを変える勇気もなくて。

S: 結果的に色々身に付いたものはあると思いますけど、技術の移行期だとなおさら難しいですよね。
そういえば、先日友達と遊んだ時にちょうどカメラの話になって。今若い子の間でデジカメブームが再燃してるらしいんですよ。それも昔のデジカメブームの時のやつらしいです。ノリ的にはちょっと前のトイカメラに近いのかな?
当然、何万画素ってあるからちゃんとした写真だけど、今見るとちょっとガジャガジャっとして粗いじゃないですか。だからスマホのデータも逼迫させないし、その粗いのがエモいみたいな。

C: なるほどねー。そういえばHBK!さん(=福岡でライブ写真・アーティスト写真等を撮影するカメラマン)がね、亡くなったガロリンズのよしえさんが昔使ってたデジカメが片付けの時に出てきて、それをHBK!さんが受け継いでジジカメラって展示やってたんだけど。あの粗い感じとか、フラッシュがバンッて出ちゃう感じとか、近いかもね。
そういう流行りの意図的な要素もあるかもしれないけど、よしえさんの遺志を継いでるのがジジカメラの一番の意志だしね。

S: 多分そうだと思います。ちなみに福岡って色んなライブ写真撮る方がいると思うんですけど、私は認識浅いけど知る範囲ではHBK!さんとか。
HBK!さんとかは凄くソリッドでカッコいい写真ってイメージがあります。
ちひろさんって、ジャンル関係なく遊びに行く幅が広いじゃないですか。だから見る写真毎に、その被写体に凄く近いというか。押さえる瞬間も、編集とかもそうだし、割とその人に寄せてるというか、引き出してるというか。
凄く個性の強い写真家の人よりも、そこがちひろさんの個性だなと思ってて。

C: ああー、そうかもねー。そんなに個性はない…(笑)

S: 違うんです違うんです(笑)個性で邪魔しないのに、凄いちひろさんの人間性が伝わるんですよ、写真から。そこが一番の個性だと私は思ってて。

C: あはは(笑)ありがとうー。まあ、女でもあるし、お母さんでもあるしね。

S: なんか写真って両極端で、写真家として個性的で「この人に撮ってもらいたい!」っていうアプローチもあると思うけど、全く逆で、撮る側が被写体を最大限に生かすみたいな、そういう撮り方もあって。ライブ写真ってアーティストがそもそも個性の塊じゃないですか。だから後者の方が、目的として理に適ってるなってのは思うんですけどね。
最近見た中では、サイキシミン(=大分県佐伯市のバンド)の写真がかなり良くて印象に残ってます。サイキシミンの持つ“パワー!”って感じと、あの友達みたいなチーム感が出ている写真があって。チンロックか、ベースのシュートさんが抜ける時だったかな?

C: サイキシミン好きやねー。コンセプトもわかりやすいし、ライブハウスの無い街で〜っていうあの活動も良いよね。

S: ちゃんと泥臭くて尖ってるんだけど、変なクセというか、聴き手を突っぱねるような感じが無いですもんね。ちゃんと解りやすくて。ラウンジサウンズはクセの強いバンド多いけど、初めて見た時に凄く良いバンドだなって思いました。

C: なんかコンセプトとか音楽はまた違うけど、the Campsが好きな気持ちとちょっと近いかな。オーソドックスなロックなんだけど、人柄出てて。

S: うん、わかります。ちなみに、一旦ライブ写真にフォーカスしての話ですけど、ライブ写真を撮る上でのこだわりってありますか?

C: 『カッコいい写真は撮りたいけど、カッコつけた写真は撮りたくない』、かな。(笑)
いわゆるお商売でしてる人の撮り方って、もちろん皆が皆ではないし、理由もあるんだろうけど、足元から広角でバシッと撮っちゃって、顔はあんまり写らない、みたいなの多いから。

S: ああー、なんかイメージできます。

C: 何かそれよりももっと…まあVooDooLoungeの距離感やけん私のレンズで間に合ってるんやけど、もっとグワーッて撮りたい。顔グワーッて(笑)

S: 顔グワーッって(笑)

C: でもHBK!さんみたいに、こう、もっとエグい写真とか撮りたいけど、できないんだよね(笑)良い意味のエグいね。エグいんだけどカッコいいっていう。で、それを良しってできるっていう。スタンスが半端なくて、ずっと憧れてる。
私だと「これ良いかな…本人が嫌がるかな…」とか思っちゃうんだよね。その辺が中途半端だなって。

S: でもその辺の感覚って、やっぱり女性だからっていうのもあるかもしれないですね。
私は仕事で写真を撮ってる訳じゃないけど、友達同士でスナップ撮る時にしても、何枚か撮って、「こっちの写真やったら嫌がるかなー」とか思っちゃうんですよ。それは多分、女の子は割とあると思います。

C: でも最近は、チンロックみたいに出演者と写真がたくさんある時に、自分が「これ良いな」って思った写真をボギーさんがSNSとかに使ってくれたりするから「ああ、やっぱこれ良いんだ」って、ちょっと自信が持てる。そして段々、その息が合ってきてる気がする(笑)
「これ絶対選んでくれるだろうな」ってわかってきて、その写真を確実に選んでくれたりするから。まだ狭い範囲ではあるけど、客観的に見てもああそうなんだって思えるし、嬉しいかな。

S: フェスみたいなイベントだと莫大な量になるんじゃないですか?

C: そー!もう修行よ(笑)

S:このままガンガン聞いちゃいますね。
一旦ライブ写真からは離れて写真自体の話ですけど、ちひろさんが写真で影響を受けた人とか手本にしてる人っています?

C: ラッパーのECDの奥さんかな。写真家の人で、写真というか本(日記)の方が有名なんだけど、私は本はあまり読めてなくて。写真の感じとか、子どもが居るのもね。

S: 同じように子育てする母親って、やっぱ気持ちとしてリンクするものありますよね。

C: そうそう。『写真創世記』で荒木さん(荒木経惟)の推薦を受けて入賞したんやったかな。最近はあまり追えてないんだけど、心の中にあるのはECDの奥さんのあの感じかなあ…
ところでしらたまちゃんは何の学校なの?

S: あ、音楽ですよ!一応。

C: 音楽なんだ!服飾系だと思ってた(笑)

S: 全然(笑)でもうち全く音楽家庭ではなくて。父親は中島みゆき、母親は井上陽水しか聞かないみたいな家庭で、音楽番組も見ないし、学校に行っても流行りの曲がわからなくて、それが引け目になっちゃって。で、中学の時に7つ歳上の彼氏ができて、その人が違法サイトから自分のお気に入りの曲をCDに落としてくれて(笑)音楽の興味はそっからかなあ。
インディーズの頃のケツメイシとか、モンパチとか…印象に残ってるのはその辺りかな。自分の好みとしてはグルーヴ系が好きで、DA PUMPとかは自主的に好きでしたけど。高校からは音楽好きの友達のお陰でちょっとずつ詳しくなって、学校サボってタワレコ行ったり。

C: えー!てか、歳上ー!社会人?バレなかったの?

S: バレてましたよ!塾講師だったし(笑)でもどー見たってわかるようなしらを切り通してました。「知らなーい」って(笑)

C: すごーい!大人の対応じゃん(笑)

S: やーでも、未熟なうちから歳上と付き合うととやっぱ拗らせますよ。その後の恋愛ことごとくうまくいってないです(笑)


◇pt.2に続く↓


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