ずっと恋愛ごっこだけしていたかった　１５

黒服の人

黒服の人が好きだったな
個人が好きなんじゃなくて黒服っていう存在が好きでした
どうやってそんなシチュエーションになったのかそこは憶えていませんが
黒服の人と何人か付き合いました

私が学生の時のこと
どうして付き合うようになったのかすら憶えていません
連絡とか約束とかどうしていたのかも
何にも憶えていません
でもその人とは家まで行って会っていました
家は何となく憶えています
場所も部屋が殺風景だったことも
そしてその人は名前を憶えています

東山社長みたいな見た目の人でした
誰が見てもカッコいいと思える人

いくつかエピソードがあってそれを憶えています
二人で歩いている時に小さな子供が転んで
彼はその子を抱き上げて起こしてあげて
大丈夫？と聞いていました
それだけでドキューンです
見た目が鋭い感じで仕事が黒服で
ちょっと悪い人？みたいな先入観があるので
それだけで印象も好感度も爆上がりです
優しくてストイックな人でした
でも黒服の人とお付き合いするというシチュエーション
私はそれだけでいいので
そこから先に進展する前にその話は無くなってしまいました
・・・と言ってもちょっとだけそうなってキスくらいは
連絡先を教えていないので
次の約束をしなければそこで終わりです
私のことどう思っているかなんて
その時点ではどうでもいいことでした

次に付き合ったは学生のバイトの黒服君
確か同い年だったと思います
その時私はもう会社勤めをしていました
こちらもどうして付き合うことになったのかすら憶えていません

黒服の人の用のロッカーに行ってそこでキスして
その子が帰るのを待ってバイクで家（の近く）まで送ってもらう
（私は家がバレない様にそこからタクシーで帰ってた）
昔なので家電か会社に電話してもらうしかなく
その子には会社の私の部署の電話番号を教えて
またお店に行ってロッカー室に入れてもらって
（でキスして）
待ち合わせしてバイクで送ってもらう
そんなことを繰り返しました

バイクで送ってもらうことに興味があっただけなんです
黒服のお兄さんとバイクにっていうシチュエーション
ミニスカートで大型バイクの後ろにまたがって
六本木の夜景は眩しくて美しい
風を切る私たちかっこいい！って

そしたらそれで私は満足してしまうので
家に行ったか（駅を憶えていますがこの方だったか分かりません）
昼デートもしたような感じでしたが
深い関係になる前に
怒られるのを覚悟で会社の先輩に
もう取り次がないで下さいとお願いしました
そこのディスコにはもう２度と行きませんでした
もうどこだかすら分かりません

ただ
黒服の人と付き合いたかったんです