東京都のデジタル人材育成支援事業に参加した話(ITインフラ実践コース)
◼︎最初に
この記事は、ネット上に東京都デジタル人材育成支援事業についての情報が少なかったので、これからこの事業に参加したい人に向けた情報提供と、自身の成長記録を兼ねて執筆しています。
参加した事業はワークポートが運営するITインフラ実践コースのハイエンドコースです。
次回の募集開始は9/2(月)らしいですね。
【公式】東京都 デジタル人材育成支援事業(ハイエンドコース)
記事の内容としては、2023年11月から第二新卒として無資格・未経験でIT業界へのキャリアチェンジを志した私の3か月の東京都のデジタル人材育成支援事業の訓練内容と、並行して行われた就職活動の記録、そして再就職し入社半年目の現在(2024年夏)の視点から本事業の感想をお伝えします。
私が参加したのはITインフラ実践コースなので、これからインフラエンジニアやネットワークエンジニアを目指したい方に特に役立てばいいなと思っています。
東京都デジタル人材育成支援事業とは
この事業は2ヶ月間のスタンダードコースと、3ヶ月のハイエンドコースがあり、私はハイエンドコースの「ITインフラ実践コース」を申し込みました。
個人的には3ヶ月でも資格取得と就活には短いと思ったので、特に理由がなければ3ヶ月のハイエンドコースがオススメです。
ハイエンドだからといって前提知識が要求されることもなく、講師の方に基礎から丁寧に教えていただけます。
私が参加した訓練では、講義や実習をKENスクールの講師の方々が担当され、就職支援は株式会社ワークポートという人材紹介事業会社にサポートしていただきました。
また、同時開催でアプリケーション開発コースも募集されていました。
本事業の特徴
・無料で深く学べる
3ヶ月の訓練では料金が一切かかりません。かと言って低質な内容ではなく、KENスクールというIT技術者育成スクールの30万円相当の講義を受けることができます。もちろん教材も無料で、PC等の機材も1人1台無料で貸し出されます。
特に実機を使った経験は入社してからのスタートダッシュでかなり有用でした。
・訓練+就職支援で一貫性のある就職活動ができる
IT業界は空前の人不足ですが、未経験無資格で飛び込めるほど甘い業界ではありません。しかし、本事業ではCCNA,LPIC,AWSなど最新のIT業界で実際に使用される需要の高い技術を学び、その技術を欲している企業とマッチングさせてくれます。その為、面接でも現在学んでいることをアピールしつつ、採用後はどういう仕事をしたいか、というようなキャリアプランに関する質問にも具体性を持って答えることができます。
・同じような境遇の人と知り合える
本事業に参加している人の年齢層は20代前半がほとんどで、男女比は2:1ぐらいです。そしてほぼ全員が未経験からエンジニアを目指している為仲良くしやすく、訓練を終えてそれぞれが就職したとしても、今後のキャリアや悩みなど相談できるコミュニティを作れることは心強いです。(平たく言えばみんな無職で居心地よい)訓練では5〜6人でチームを作り、就活状況や学習状況の不明点を互いにフォローし合えることも良かったです。
3か月の訓練内容を時系列でまとめてみる
次に、本事業に参加してから12月下旬までの訓練内容を時系列に沿ってまとめます。
カリキュラムとしてはこんな時系列でした。
1. ネットワーク基礎(2023/11/2~)
2. CCNA資格講座 (2023/11/7~)
3.コンピュータ基礎(2023/12/11~)
4. Linux (2023/12/13~)
5. Windowsサーバ構築(2024/1/12~)
6. 情報セキュリティ基礎(2024/1/19~)
7.システム運用(2024/1/23~)
8. AI入門(2024/1/25~)
9. IoT入門(2024/1/25~)
10.クラウド基礎(2024/1/26~)
・応募〜訓練初日まで
2023年。新卒で国家公務員として広島から東京に赴任したものの、7ヶ月で潰れ離職し、おめおめと地元に逃げ帰るのも悔しいので有給休暇を消化しながら次の道を考えている時に東京都デジタル人材育成支援事業を知りました。
11月開始の訓練に10月中旬に申し込むとすぐにWEB面談があり、エンジニアへの志望動機や都内に就職する意思があるかを問われました。その後合格の知らせを受け、11月1日から秋葉原駅近くのビルに通学することになりました。初日は顔合わせも兼ねてガイダンスやIT業界の現状に関する講義を受けました。受講生の方は年も近く、優しい方ばかりで良かったです。
・11月~12月初旬まで
1日目は簡単なガイダンス。2日目から早速ネットワークインフラについての講義が始まり、ipアドレス、無線接続の方式、セキュリティ、レイヤー2のスイッチングやレイヤー3のルーティングと、ネットワークに関わる広範な知識を学びます。講義ではCCNA試験の教材を基に、実際にスイッチやルーターを操作する実習も併せて行われます。内容としては、2台のPC間をルーターやスイッチ、ハブなどを用いたネットワークで接続し、OSPFルーティングの挙動を確認したり、ポートセキュリティの動作検証やインタフェースの復旧等を行います。席の近い2~3人でチームを組んで話し合いながら協力して実習を進めていきます。
また、2週間に1度ほど確認テスト(筆記)があります。このテストは自身が理解しているかの確認のためで、結果に関しては何も言われませんでした。
この実習で学んだことは就職してからの現在でもめちゃくちゃ役立っています。
・12月初旬~12月中旬まで
CCNAの講義は1か月ほどで終わり、その後コンピューター基礎及びネットワーク基礎の講義が1週間ほど行われます。関係する資格としては、基本情報技術者試験の内容にかなり近かったので、優秀な方は取得していました。
・12月中旬~1月初旬
12月中旬からLinuxの講義が始まります。内容はLPIC-1の教材を基に、Linuxの基礎から教えていただけます。
1人1台ずつ支給されたWindowsPC上から仮想化されたUbuntuやCentOSを用いて学習を進めていきます。
・1月初旬~訓練終わり
ここからは五月雨式に記載します。内容は広く浅くといった感じです。
Windowsサーバ構築(2024/1/12~)
・guiでWindowsサーバーをいじる
情報セキュリティ基礎(2024/1/19~)
・セキュリティの書籍を元に講義
システム運用(2024/1/23~)
・運用や保守に関して学ぶ
AI入門(2024/1/25~)
IoT入門(2024/1/25~)
クラウド基礎(2024/1/26~)
・ここらへんは風邪ひいて休んでました…
訓練課程卒業(2024/1/30)
そして2月1日から入社しました。
次項で就職活動についてまとめます。
3か月の就職活動時を時系列でまとめてみる
東京都デジタル人材育成支援事業は職業訓練に併せて就職支援を受けることができます。平たく言えば就活のサポートですね。
本事業では毎週水曜日を就職活動日として空けてあり、この時間を使って会社選びや採用面接に臨みます。
・11月前半
講義が始まって間もなく就職活動支援も始まります。キャリアカウンセラーとの個別面談を通して就職活動の指針や種々の疑問に関して話し合ったり、礼節や面接での受け答えを学べる研修に参加しました。
・11月後半
いよいよ企業への応募が始まります。WEB会社説明会が開催され、5社ほど会社説明を聞きました。説明会の参加特典として書類選考免除を設けている会社がいくつかあるので参加しておくと良いです。
説明会を開催できる会社は結構待遇や福利厚生等良い企業が多い印象でした。
・12月前半
11月後半に応募した会社からワークポートの転職サイト(マイナビみたいなやつ)経由でぽつぽつと応答が返ってきます。私は20社ほど応募して4社ほど書類選考段階で落ちたため、10数社ほどの面接を受けることになりました。
かなりキツいスケジュールが待ってそうだな…と身構えましたが、ワークポートのキャリアコンサルタントの方と面接日時を調整し、1日1社ずつ、主に講義の終わる16時以降からWEB面接の形式で実施しました。事前に届け出ればWEB面接を受ける部屋を借りれるので、貸し出されているPCを使って快適に面接を受けることができました。(自宅で受けるのが一番だけどね)
面接は1日1社、面接希望時間は主に午後を指定すれば講義も取りこぼさず精力的に就職活動ができると思います。
・12月後半
自分的には就職活動の大詰めを迎え、最終選考まで残った数社の内、1番志望度の高い会社の内定を承諾し、年内に就職活動を終わらせることができました。
入社半年後の今、デジタル人材育成支援事業を振り返る
この記事を書いているのは2024年8月で、本事業を卒業してから半年も経ちました。
時間が経つのは早いですね。
現在は都内の某社にて社内受託NEとしてNW詳細設計の工程を担当しています。ciscoのL2、L3スイッチやルーターを主に触っています。
入社半年後の今、デジタル人材育成支援事業を改めて振り返りたいと思います。
講義で意識したこと
本事業のITインフラ実践コースではインフラエンジニアとなるべく様々な講義を受講できますが、インフラエンジニアはネットワークやサーバー、データベースなどの分野に細分化できます。
私はネットワークエンジニアを志していたので、特にネットワークやCCNAの講義でCiscoスイッチやルーターを触る時は色々試行錯誤し、家ではping-tでCCNA試験問題を解くなど専門性を高めることを意識しました。
実際に終業後もインフラエンジニア全般の業務を行うこともなく、多くはネットワークもしくはサーバーに別れてそれっきりなので(会社にもよるが部署も違う)、自分の興味や理解しやすい志望職種の学習を重点的に行うのが良いかと思います。特に実機は家で勉強しようと思うと用意が大変なので、この機会を最大限活用すべきです。
汎用性を高めるのは入社後で十分です。
就活で意識したこと
・志望先の選択
第二新卒や既卒未経験では優良企業は受けられない。と考えていましたが、それでもまともな企業はありました。紹介される求人の他、キャリアサポートに問い合わせれば色々な求人をもらえますが、本事業を知っていて説明会を開いてくれる企業に応募する方が、社内に本事業出身の先輩もおり入社後ギャップが生じづらいと思います。
また業種はSESがほとんどですが、運用保守の案件だけでなく設計構築に携わることができる企業を選択することがキャリアを上げやすいと思います。その為にはネットワーク志望ならCCNA、サーバー志望ならLPIC-1やLinuCレベル1の取得や勉強の実績が必須です。
当然かもしれませんが上場している会社はコンプラや心理的安全性などが担保されている目安になります。前職の閉鎖的な公務員組織で地獄を見た私にとってはこれを1番重視しました。
・面接
インフラエンジニアのポジションで就活する上で資格の取得はかなりプラスの評価なのでできれば取っておきたいです。もし無資格で就活するなら、資格取得に向けて勉強している事やその意気込みをアピールすべきだと思います。私はping-tという資格勉強サイトでCCNAを勉強していて、今模擬テストで4割ぐらい正答率ある旨を伝えると面接においてそこそこ評価されました。ping-tは色々な企業で学習ツールとして評価されているサイトなのでオススメです。
総括
勇気を出してデジタル人材育成支援事業に参加して良かった、というのが率直な感想です。
専門的な職業訓練+特定業界への就職サポートはエンジニアへのキャリアチェンジを目指す上で大きな助けになったと思います。
一般に「とりあえず3年」と言って入社後3年は仕事に耐える風潮がありますが、3年経ったことで改めて良さが分かる会社もあれば、1秒でも在籍すべきでない会社や組織も現実には存在します。
また、未経験職種・業種への転職は若い方が確実に有利です。今回就活を共にした方々と戦績を共有するとそのことを如実に感じました。
就業先の将来性や人間関係に悩んでおられる方、IT業界に興味ある方のご参考になれば幸甚です。