【短編Tale】雨が舞っている
雨が降っている。
土砂降り。面白いくらいに。
耳の中に音が流れ込んでくる。
あたり一面を、覆い隠してしまうような、バケツをひっくり返した灰色の音。
皆々逃げている。もしくは諦めたように、とぼとぼ、濡鼠。
僕は見ている。唯ぼーっと。
何だか、愉快で。
まるで、舞ってるみたいだから。
ゴーッと降って、サーッと流れて、ピカーッと陽がさしたと思ったらゴロゴロピッシャーン。
「タクシー呼ぼうかな。」
「もう少し待ってたらやんでくれるだろうか。」
「えーい、ままよ!走って帰ってやる!」
僕は笑っている。唯じぃっと。何だかおかしくって。
まるで壮大な舞台演出に踊る役者たちを見ているみたいで。
だから、せっかくだから僕も、混ざってみようかなんて思ってしまう。