着実
とりあえずはまず一歩。よし、進めた。一歩進めたということは、もう一歩も踏み出せるってこと。
でも頭の中で、一歩進めたし良くない?っていう信号が発信。
いやいや待ち給えよ、どうせならもう一歩進んでも良いのではと、交渉。うまくいったらもう一歩。
10歩くらい進めた所で、あんまし景色も変わらないから、もうやめても良いんじゃない?ため息が聞こえる。そりゃ10歩で変わる景色なんて、ないて、と呆れて返す。
心の中身が殴り合い。大体は怠け心勝ったりする。ちょっと、後ろめたい気持ちがあるからもう一歩。
ここでは踏めてる一歩も、ちょっとだけ場所を変えたら、まるで断崖絶壁で目隠ししてるみたいにぷるぷる。進まなくなったりする。全く困ったものだ。
とりあえずもう一歩。でも気づいたら腰を下ろして別のこと。ちょっと休んだらもう一歩、行けばいいとうつらうつら。
はっとした時にはだーいぶ時間が進んでて、うがーとうなりながらもう一歩。今どれくらい進んだかしら。確認するより、もう一歩。
あんまし進んでないのにヘトヘトな気がする。難しいのは、へとへとではないけど、気がするという所。こいつ、一歩進まない言い訳見つけるのうますぎかっ!?なんて思ったりする。
難儀だなぁ~と思いながら、だましだましもう一歩。ところが、殺虫剤に耐性を持ち始めたゴキブリみたいに、うじゃうじゃと言い訳は生まれてくる。耐性持つ前に死滅させられないだろうか?
あ、むむむと考えているスキに止まっている。えいやと勇んでもう一歩。振り回されるな!進みゃー良いんだ!進みゃー!
そういや、なんで一歩進めてるんだっけ。理由なんてあったっけ。ふとした瞬間に不安になる。そんな時は怯えた一歩。歩幅は小さいけど、ずっと震えるのは怖いから。
何にもなくてももう一歩、なんとなくでも進めていたら、なんだか良いような気がするから。不思議だけど、一歩だけでも進めたら、気持ちが良かったりもするから。
あと一歩、もう一歩だけ、次の一歩は次に考えて、今はこの一歩だけ。
とんっ、とほらまた、もう一歩。
一歩進めたし、また一歩、進んでみようかな。