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【体験談】ライブ中気付けなかった後悔

私が初めてソロライブを行ったときのことです。ステージから客席を見渡していると、ひとりのファンの方が、楽しそうに見えない様子で座っているのが目に入りました。その方は、どこか不安げに体を小刻みに揺らしていて、その姿が気になって仕方がありませんでした。せっかく楽しんでもらおうと心を込めて準備したライブなのに、彼女を楽しませることができていないのだろうかと、胸に重たい不安が広がりました。

ライブが終わり、家に帰ってから、いただいたファンレターを一通一通読み返していたとき、その方からの手紙がありました。封を開けると、震えた字で「ありがとう。楽しかったよ。また会おうねうーみん」と書かれていました。その一言が、まるで時間が止まったかのように私の心に深く響きました。

後に知ったことですが、その方は体や心にハンディキャップを抱えておられました。大きな音が苦手で、時には恐怖で震えてしまうこともあるそうです。それでも、私の歌が好きだと言って、遠くから新幹線に乗ってまで会いに来てくれたのです。その姿勢、その勇気に、私は心から感動しました。

その時、私は自分の未熟さを痛感しました。なぜあの時、私は不安に思ってしまったのだろうと。むしろ、彼女がどれだけの勇気を持って私のライブに来てくれたのかを、もっと早く気づいてあげるべきだった。私が舞台の上で感じた不安が、どれほど浅はかで、自分本位なものだったかと深く反省しました。

今、私はこの経験を通じて、見た目だけでは決してわからない、それぞれの人が抱えている苦しみや困難にもっと心を寄せることの大切さを学びました。彼女は、私の歌を聴くために、自分の恐怖と向き合い、乗り越えてきてくれた。その事実に、私は言葉にできないほどの感謝を感じると同時に、彼女のためにもっとできることはなかったのかと自問しました。

私たちが日々の中で出会う人々の多くは、見た目にはわからない壁を抱えながら生きています。だからこそ、私はこれからも、そんな人々の気持ちを汲み取れるような人でありたいと思っています。彼女の勇気と優しさを無駄にしないためにも、私はもっと人の心に寄り添い、手を差し伸べられる存在になりたい。そう強く感じました。

彼女からの手紙を受け取ったあの日から、私は「ありがとう」という言葉の重みを改めて感じています。その言葉の裏には、計り知れない思いが込められていることを知りました。これからも、私はその思いを大切にしながら、心から感謝を込めて歌い続けたいと思います。

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