記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

初めてのときメモGS3〜灰かぶり王子・平健太編〜

とんでもない物語を見てしまったので、今緊急でこれを書いています。現場のシラナミです。

私はこの度、気まぐれにより「ルカコウいく前にタイラーいっとくか!」と実に気軽に始めてしまいました。

ですが、とんでもなく美しい物語に顔面を殴打されたので、それについての感想・考察をここに綴っていこうと思います


1年目


平健太、通称タイラーと出会うには条件が二つ。

一つ目は「第1週目のEDを迎えていること」
二つ目は「入学式で決してぼんやりしないこと」

それは、我々が周回する中で何十回と見ることになるこの入学式のモブ背景に彼は隠されているからです。

ここ↑


ここです。そう、平健太はモブ中のモブ。ヤンキーでも秀才でもスポーツ万能でもない、ごく平凡で個性など皆無に等しい無垢な男の子なのです。

完全なる背景と化している彼を入学式中2回タップして、平健太ルートはようやく開かれます。
美麗で秀麗で個性豊かなイケメンたちに見惚れていては、野に咲く健気な一輪の花に気づかないというわけです。

この仕掛けを、すでに入学式のイベントを見ていてスキップする人も多い2周目以降の我々に仕込むあたり、ゲームシステム的にも非常に小憎らしさがあって面白いですね。


この時点で「あ〜〜〜!!GS3の変態シナリオライターが好きそうなギミック〜〜〜ゥ!!!」と水素の音女のような声を上げている私。愛撫するようにねっとりと背景をタッチします。

すると現れてくれた平健太くん。なんとなく目が合って「なに?」となる教室あるある。
周りのモブたちが「そのとき平は彼女に恋をしてしまったのです」とナレーションを入れ囃し立てます。初手から赤面してくれる平くん可愛い。


至って普通の反応、普通の男の子


このときはまだただのクラスメイトの平くん。
好感度が普通状態でもバンビとフォークダンスを踊れるメイン攻略男子たちと違って、
平くんは順番が回ってこず踊れませんし、バンビが落とした髪飾りを拾ってあげるのが精一杯です。

このとき壊れてしまった髪飾り、後々重要になってくるので未プレイの方々はぜひ覚えてからこの先をお読みください。


担任にこれ言われるの嫌すぎる


平くんのイベントはいつでも会えるメイン男子たちと違って、それほど多いわけではありません。
次に会えるのは1年目の12月の期末テストです。

テストなのに筆記用具を忘れてしまったという平くんに、ペンを貸してあげるバンビ。
こういったどこの学校のどこの教室にもあるようなやりとりを経て、平くんはバンビと関係を深めていきます。

「(成績は)上過ぎても下過ぎても居心地悪いんだよね」
「(上も)ダメだよ。なんかムズムズして気持ち悪い……と思う」

と語る、勉強も運動もダメすぎず良すぎない、ザ・平凡な平くん。
学力やら流行やら、何かしらの特技があることが前提のメイン攻略男子とはまるで対極に位置します。

フラッシュバックする蓮見達也ルート……


“ちゃんと”真ん中をキープです


次に会えるのはバレンタインのイベント。
こちらも入学式と同じく、下駄箱の背景に完全に溶け込む平くんをタッチしなければイベントが起こらずフラグが折れてしまいます。

平くんルートはこの後も何度か「背景にいる彼に気づかないとフラグが折れてしまう」というギミックが仕込まれています。
本当にGS3製作陣は変態(褒め言葉)です。


ここ↑

これはきっと、こちらから気づいて声をかけないと、彼は背景に溶け込んだまま遠くからこちらを見つめるだけで終わってしまうという、
この恋の儚さと脆さを表しているのだと思います。

実際、こうして何度かこちらから話しかけないと、平くんは自分から話しかけようとしてくれません。
最初からバンビを諦めているような遠慮しているような、そんな空気を纏っているんですね。


話は戻って、バレンタインです。下駄箱を覗き込んでチョコが一つもないことに肩を落とす平くん。

メイン男子たち、当たり前のように沢山もらってホワイトデーのたびにため息吐いてますが、普通はこんなものですよね…

これもまた、平くんがいかに『普通』の男の子であり、メイン男子たちの対極に位置する存在かを示していると思います。


「?」とちゃうわ チョコあげろ


2年目


こうして特にロマンスは起こらないまま2年生に。
平くんも同じクラスになりました。

そして今年も一緒にフォークダンスできない平くん。
大迫先生がバンビに「ちょーっとだけタイラーと踊ってやるか?」とからかいを投げかけると、周囲のモブ男子が「大迫ちゃん、平だけなんてずるいよ」と言い返したのが印象的です。

1年目の入学式では「平は恋に落ちてしまったのです」とからかっていた彼らが「俺も小波と」と言い始めているんですよね。

この時点で、はじめは普通の可憐な女の子だったバンビが教室の華となりはじめていることが示唆されています。


台詞や態度が変わるのは
攻略男子だけではないということです


それは修学旅行でも同じで、勇気を出してバンビと一緒に写真を撮ろうとした平くんに
「おい平、自分だけずるいぞ。俺たちも入れろ」とモブたちが集まってくるんですよね。

結局ツーショットではなく集合写真のようになってしまった一枚ですが、
それだけ「ずるい」と言われ始めるほど綺麗になったバンビ。

ツーショットを申し出た平くんに、カレンが
「バンビとアンタ? うーん、写真くらいならいっか」
とやや冷たく吐き捨てるところに、その格差が表れているような気がして少し不穏です。


※陰キャ閲覧注意※


そんな状況に焦りを覚えたのか、秋も深まってくるとなんと初めて平くんの方から下校に誘ってくれるというイベントが。


「入学してから1年半。やっとだよ」
「君の周りにはいつもたくさん人がいるから。声掛けるの、結構大変なんだよ」

これ、私は非常にメタい発言だと思いました。
それには二つの意味がありまして、まず「バンビが乙女ゲームヒロインであること」を殊更に強調している点です。

入学時点では普通の女の子だったバンビになら、いくらでもこうして話しかける機会がありそうなものですが、それができなかった。なぜか。

やはり、桜井兄弟と幼馴染であったり、目立つ先輩と一緒にいたりと、
パラメーターが低くごく普通の女の子である状態においても、なぜかひと目を惹いて近寄りがたいからなんですね。

それは『バンビが乙女ゲーム主人公である』という生まれ持っての特別な性質のせいで、
平くんのようなモブ系男子を寄せつけなくなってしまっているというメタい事実
を示しています。


好感度に関わらず、確かに人は多いんですよ…


そしてもう一つは「パラメーターが高い女の子に普通の男の子が声をかけるのはハードルが高い」という点。
これは、裏返せば初期パラでメイン男子たちを下校に誘う私たちそのもののようです。

誘うには勇気がいりますし、断られる可能性も大いにある、まさに入学間もない私たちの下校イベントそのもの。

それをメイン攻略男子たちの目線で味わうことのできるこのイベントは、蓮見達也の小悪魔ルートと同じ『メタさ』があって非常に興味深かったです。


ヒロインのセリフ「バッチリ好印象」のパロディ…?


2年目も終わりに差し掛かると、全てのパラメーターが150を超えたバンビの噂が校内に轟き始め、ローズクイーン候補としての呼び声が高まります。

それで勝手に身を引いたり萎縮したりせず

「みんな思ってるよ。俺も君ならなれると思う」

と背中を押してくれるタイラーの爽やかさよ……
彼はずっとこうして、陰ながら持ち前の優しさとひたむきさでバンビを照らしてくれている気がします。


ここで箸休めに鉄オタシュポポな玉緒をお楽しみ下さい

3年目


無事3年間同じクラスになれたバンビと平くん。
3回目となる新年度の挨拶を交わしますが、平くんはいつもと違う様子。

「俺、今年は去年と同じじゃなくて、頑張ってみようと思うんだ」
「せっかく3年間、同じクラスになれたんだ。それに君はいつも、俺に声を掛けてくれるだろ」

「最後の1年だからさ、とにかく俺は頑張ってみようかなって」

2年間ひたむきに努力し続け、野に咲くたんぽぽからガラス瓶の薔薇へと変貌を遂げたバンビを間近で見て、彼なりに思うところがあったようです。
頬を赤らめながらもまっすぐにバンビを見つめて決意を示してくれる姿、きゅんです。

その平くんの言葉を受けて「来年は卒業、今年が最後か。わたしも後悔しないように頑張ろう」とバンビも決意を新たにします。
互いに作用しあっているようなこの関係性、とても美しく眩しいです。


お互いに良い影響を与え合ってます


それでも体育祭でフォークダンスは踊れない平くん。
フォークダンスはメイン攻略男子しか踊れない仕組みになっとんかこの学園は??理事長も参加できるんだぞ???


この理事長、すけべすぎる…!


その後しばらく平くんは現れませんが、我々がスキップしているコマンドの合間にも、おはようの挨拶をしたり「また明日」と言い合ったり、
そういったありきたりな「クラスメイトの関係」が続いていたのかなと想像すると、めちゃくちゃ微笑ましいです。

決して特別な能力や肩書やロマンチックなドラマがなくとも、自然と生まれる「どこにでもある青春」が何よりもくすぐったくて可愛くて、それでいて尊く見えますよね。


そんな中、高校最後の文化祭が近づいて、バンビは鈴木とかいう謎のモブ男子と学園演劇の主演を演ることに決定します。誰やお前。
王子や神童や生徒会長の影に隠れた、モブ界のイケメンというやつでしょうか。

自信がないというバンビの背中を押してくれる、クラスメイトの平くん。
気をてらった甘い台詞を吐かず「君ならできるよ」と言ってくれるこのまっすぐさが沁みる年です、私も。
クラスみんなで応援してくれることになりました。


あたたかい大迫学級


平くんルートはこんな風に、メイン男子たちを攻略していては気がつかない、大迫クラスの温かみというものが感じられてすごく微笑ましいですね。

高校を卒業して十年になる私ですが、王子たちのようにドラマティックな恋ではない分、ちょっとリアリティのある青春の香りを嗅げてすごく楽しかったです。


そうして準備を進める中、モブ界の王子こと鈴木が突然怪我をしてしまい出演不可能に。
クラスの中から代役を探さなくてはならなくなりましたが、なんと平くんが立候補。

「君のヒロイン役が見られなくなるなんて、俺、絶対いやだからさ」
「今年は頑張るって言っただろ」

タイラー………

「君と主演を演りたい」ではなく「君のヒロイン役が見たい」なのがすごく良いですよね。

自信のなかったバンビが懸命に練習しているのを彼はちゃんと見ていて、
その努力が報われないことを自分のことのように悔しく思ってくれたのでしょう。

そのピュアで熱い思いがとても嬉しい。二人は突貫で稽古することになりました。

「自分が主役だったら」と思いながら練習を見ていたという平くん、台詞を完璧に覚えています。

そこに彼の熱くて健気な想いが見え隠れして、
この言葉が適切かは分かりませんが「こういうのでいいんだよ」という気持ちになりました。

モデルとかお金持ちのお坊ちゃんとか、そういう華やかな彼との華やかな恋も素敵ですが、
こういう『人よりピュアで真っ直ぐだけど、どこにでもいる普通の男子高校生』と等身大の恋をするのは、
ロマンティックでドラマティックな彼らの恋路とはまた違った味わいがしていいもんです。

そういう素朴さが「こういうのでいいんだよ」なんですよ……
伝説の教会の前で練習する二人を見て王騎将軍(画像略)と化した私でありました。


青春すぎるやろ!!


時は流れて学園演劇当日。
本番前、台詞がこぼれ落ちていきそうと言う弱気なバンビに対して、少しおどけて励ましてくれる平くん。

『ありがとう、平くん。いつも気を遣ってくれて』

このモノローグで、バンビもかなり平くんに惹かれ始めていることがわかります。
陰ながら支えて、いつも笑いかけてくれる平くんにバンビはちゃんと気づいているんですよね。例えどれだけ背景に溶け込んでいたって。


そしてとうとう本番。演目はまさかの初代王子・葉月珪と同じ「シンデレラ」

これね〜〜〜〜〜〜!!!!!
来るかなと思ってましたがやっぱり来ました!!!!!
だってGS3のライターはドドドドド変態なので(大褒め言葉)!!!!!!

王子とは対極に位置する「普通」代表・平くんに、初代王子と同じ演目を演らせるって決めたとき、めちゃくちゃニチャついたでしょうね、ライター……


タイラーのライターいい加減にしろ

これはどうしてかというと、この物語における本当のシンデレラはバンビではなく平くんなんです。
その名の通り平凡に波風立たずに生きていた平くんが、偶然手に入れたチャンスを掴んで、
歴代の王子たちのように頭脳明晰でスポーツ万能なバンビと、束の間の夢である舞踏会を楽しむ……

単なるGS1のパロディに見えて、その実まるで逆の視点から物語を描いているギミックに痺れました。
下校イベント同様、私たちに攻略男子の目線を体験させつつ、平くんを通して初期パラメーターのバンビを見せてくるところに、大変な遊び心を感じます。


話は戻って本番の舞台。平くんは練習の甲斐あってか没入のおかげか、
非常に落ち着き払って堂々と王子を演じ切ります。

「なぜです。私は貴方と踊りたいだけ。貴方に触れたい、触れてもらいたいだけ」
「どうしてもというのなら、私にかけた恋の魔法を解いていってください」
「貴方を知らなかった頃の私に戻してから——」

恋の魔法。それは、平くんにかけられた魔法です。
ガラスの靴とドレスを手に入れたシンデレラのように、豪奢な衣装で見違えた姿になって、バンビと踊る平くんに——


魔法にかかっているのはシンデレラの方なのです


ですが、その魔法は間も無く解かれてしまいます。
演劇の後、ローズクイーンに選ばれたバンビ。
周囲から羨望と憧れの眼差しを向けられますが、モブたちの話題はあらぬ方向に向いてしまいます。

「あの子、学園演劇のヒロインだよね。やっぱりかわいいー」
「でも、王子様役はなんであの人だったのかな?」
「うん、王子様って感じじゃなかったなー。やっぱり、琉夏くんとかじゃないとヒロインには釣り合わないね」

メインヒーローを王子と呼ぶ伝統のあるときメモGSにおいて、これは文字通り以上の意味をもつ言葉です。

そう、平くんは王子ではない。とてもわかりにくい背景の仕掛けに気づかなければ出会えない隠しキャラ。ルカやコウとは作品内での立場が違います。

それを偶然立ち聞きしてしまい、魔法が解けるように現実に引き戻されてしまった平くん。

12時の鐘は鳴り、王子の衣装はただの制服へと姿を戻し、シンデレラは舞台から姿を消してしまいました。夢のようなお芝居は終演を迎えたのです。


平くんはその場を逃げ出し、バンビが後を追いかけます。


行"く"な"!!!!!

「俺、なんか出しゃばりすぎたみたいだな」
「ごめん、せっかくの演劇を台無しにしてしまって」

そんなこと言うな!!!!!!!!私があのモブ女ども●してくるから!!!!!!!!
そう叫びたいのをぐっと堪えて唇を噛んだら唇がなくなりました。


モブ女絶対●す


平くんはそれ以来バンビと話してくれなくなります。

男子高校生が演劇で王子役なんて恥ずかしいものを全力でやり切ったのにあんなことを言われたら、
現実なら不登校になってもおかしくないので、これは当然の反応だとお思います。

そんな中、バンビは大迫先生の言葉を聞いて「悩んでたってダメだよね」と思い直します。

自信がないときにいつだって背中を押して励ましてくれた平くんがいなくとも、自分の背中を自分で押せるようになったバンビです。

それもひとえに、平くんとの出会いがあったからなんですよね。


バンビ!タイラーを追いかけろ!


下駄箱で背景と化した平くんを見逃さず声をかけるバンビ。
彼女にはもう、平くんは単なる背景になんて見えないくらい、輝いて見えているはずなんです。

それなのに、平くんは自分を卑下し続けます

「俺、もうわかったから。君と一緒にいること自体が俺には不釣り合いなんだってこと」
「君は優しくて俺にも声をかけてくれるだろ。だから、俺、勝手に勘違いしてた。俺の方こそごめん」
「君は学園のヒロイン。俺なんかが近くに居たらおかしいって、わかったから——」

入学式の時は、確かに同じ目線で並んで笑い合っていたはずの二人です。
しかし三年近くの月日が経ち、いつからか努力し続けるバンビと平凡を望む平くんの間には見えない段差が生まれ、それが平くんを傷つけてしまいました。


泣きそう


このあたりで気がついたのですが、平くんが第1周目のエンディングを迎えないと攻略できない仕様になっているのは、ここに理由があるのだと思います。

メイン攻略男子と恋におち、好きな人のためにひたむきに努力するバンビの姿をプレイヤーの目に焼き付けさせることで、
その努力が逆に小さな恋の蕾を手折ってしまう結果になるというカタルシスをより深めている
のですね。

メイン男子たちの逆をいく平くんの特徴をより強調させるために、あえて先に彼らを攻略させるという狙いもあるのだと思います。

ともかく、こうして平くんはバンビから距離を置いて遠くに行ってしましました。
まるで、魔法が解けたシンデレラのように。


エンディング


それでも、王子様とシンデレラは再会する運命です。
卒業式当日、平くんは教会に来てくれました。

「俺、君を避けていたくせに、最後に君と会いたくて。君のことを考えていたら、ここに来てた」
「ここは君と演劇の練習をした、俺にとっては、一番の思い出の場所だから」

ウッ………タイラー………
君は本当に、バンビと二人でシンデレラの練習をしたあの時間が何よりの宝物だったんだね………

平くんは避けていたことをまず謝って、それから3年間を振り返ってお礼を言ってくれます。

「君みたいな人と友達になれて、夢みたいな3年間だった。ちょっと調子に乗りすぎて、痛い目にはあったけど……でも、全部良い思い出になった。ありがとう」

それに対して「私の方こそ、いつも近くにいて助けてくれて、ありがとう」と返すバンビ。

そうなんです。少し緊張していた入学式でも、自信がないと言っていたローズクイーン候補の話や学園演劇の主演のときでも、

平くんはいつでもバンビの近くにいて、励まして、助けてくれました。

そんな彼女に、平くんはそっと一つの贈り物を差し出します。
それは1年目の体育祭のとき、バンビが落として壊してしまった髪飾り。


「なかなか同じものが見つからなくて、やっと見つけたときにはもう3年になってて渡せなかった」

教会の告白シーンで贈り物を贈るのは王子キャラと決まっているGSシリーズにて、
隠しキャラでモブのように背景に溶け込んでいた平くんが贈り物をくれる。

この粋な計らいでもうかなりウルウルきていた私ですが、この後に続いた彼の言葉で完全に涙腺が決壊しました。

「君はどんどんキレイになって、あっという間に学園のヒロイン——だから、1年生の時につけていたものとか、もう要らないのかもって」

そんなことない……そんなことないよ……

バンビは確かに努力して綺麗になって、勉強も運動もできるようになりました。けれど、根っこは変わっていません。この髪飾りも、ずっと好きなままだと言います。

それでも、ずっと近くで見つめていた平くんだからこそ、遠くに行ってしまったような気持ちになってしまったのでしょう。

「俺、中等部の頃から、ううん、その前からずーっと運動も勉強もそこそこで、全部中途半端だった」
「でも、君と一緒にいた3年間は全力で君だった。こんなこと初めてだったんだ」

た、平くん………! もういらんことは語らないでおきます。
至高の告白台詞をお楽しみください。

「入学式のあと、初めて俺に声を掛けてくれただろ。あの時からずっと、君が大好きだった」
「あの日、他の誰かじゃなくて、俺に話しかけてくれて、触れてくれて、ありがとう」
「君を好きになって良かった」

……平くんはずっと遠くからバンビのことを想っていてくれたんですね。
ゲームシステム上、ローズクイーンに至るパラメーターがなければ彼と結ばれることはありませんが、
初期パラメーターの、どこにでもいる普通の女の子だった頃のバンビのことを平くんは好きになってくれていたんです。

パラメーターを上げなければ他の男子に好きになってもらうことのない我々バンビにとって、彼の言葉がどれほど嬉しく、眩いものであるか。

何より素晴らしいのは、全て真ん中なのが丁度良いと言い、堕落も努力もなく平坦な日々を過ごしていた平くんがバンビのひたむきな努力に感化され、一歩踏み出そうと思えたこと。

そんな彼の優しさと勇気に、実力に見合った自信を持ち合わせていなかったバンビが励まされたということ。

身分違いと思われた恋によって、素晴らしい相互作用が生まれたということです。

だからこそ飛び出した「君を好きになって良かった」という台詞……変わらない平坦な毎日を変えてくれたバンビへの、彼なりのお礼の言葉です。

これは告白ではありません。
好きになって良かったと言っただけで、「付き合ってほしい」とも「気持ちを聞かせてほしい」とも、彼は決して言いません。
ただ思いを告げるだけです。

だからこそ、バンビの方から王子よろしく手を差し伸べて「私も平くんのことが好き」と答えるのです。

「いつも私の近くにいて、助けてくれて、ありがとう。学園演劇、一緒にやってくれて本当にありがとう」
「平くんは私のこと変わったっていうけど、私は入学式の時から少しも変わってない。この髪留めだって、今も大好きだよ」

バンビはそう言って髪留めをつけました。

そうして二人はまるで出会ったばかりの1年生の頃のような姿になり、誓いのキスを交わして結ばれました。

3年間全力で追いかけた彼の恋の蕾は、こうして花開いたのです。


総評


も〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜なんも言えん。
語彙が尽きた私をひとおもいに●して下さい。

同じく隠しキャラの蓮見達也同様、非常にメタい要素や面白いギミックが随所に仕込まれていて、
長年のGSファンほどニヤニヤできる仕様になっているところも良いですし、

何より、キラキラしたメイン攻略男子たちとはまた一味違った、「こういうのでいい」青春を体験できて、いま私の胸は非常な満足感に満たされています。

背景と思っていた男の子に触れて始まった恋が
「触れてくれてありがとう」で終わるこの感動を味わいたい方、
今すぐGS3を起動 or 購入してください!チェキ!


蛇足

部屋の前にイメソン置いとくね…………

シンデレラ/サイダーガール

「灰かぶっても大丈夫 あなたがいるのなら」「魔法をモアエンモア」「些細なよろこびたちを育てていきませんか」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?