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建築生産の歴史と展望

※こちらの記事は株式会社白矩押山玲央株式会社大林組中村達也の個人研究として記載しています。

私たちは建築設計・建築生産の実務に携わるかたわら、建築生産の仕組みや歴史について独自に研究し、勉強会を開催しています。今回掲載する記事は、この一年ほどかけて調査し議論してきた内容を共同で執筆し、一つの論文としてまとめたものです。これから掲載する内容は「日本建築学会 第45回情報・システム・利用・技術シンポジウム」の投稿論文に応募したものを再構成・再編集したものです。投稿した論文はレビュアーによる査読の結果、不採用(reject)となりました。論文を応募した経緯や不採用となった理由に対する考察などは、別の記事にまとめる予定です。実態のつかみにくい「建築生産」に対する理解を深め、私たちと同じような実務上の問題に直面する方々の一助となれば幸いです。

BIMを活用した設計・生産設計の協業体制の素案

はじめに

我が国に本格的にBIMの概念と技術が紹介された2009年、いわゆる「BIM元年」から十数年が経過しました。しかし、官民・業種、様々な分野に渡って取り組みが続けられてきた現在でも、建築生産実務の現場においてBIMが活用される体制・手法が十分に確立・一般化されたとは言い難く、試行錯誤する状況が続いているように見えます。また、片務的な請負契約・長時間労働の是正・契約や意思決定プロセスの透明性確保など、建築業界が永年にわたって抱えてきた課題にも取り組んでいかなければなりません。これらは、生産される建築物の品質に直結するのみならず、建築業界全体の持続性にも関わる重要な課題です。BIM活用が十分に進まない現状と、建築業界が抱える永年の課題、一見するとそれぞれの議論に見えるこれらの問題の背景には、(海外と比較した場合の)日本の建築生産プロセスの特殊性と、業界の商習慣として受け継がれてきた特異な請負契約やプロジェクト運営の存在があると、私たちは考えています。
第一部では、大きく分けて次の2つの事項について、先行研究を踏まえた整理を行います。
①     海外と比較した際の我が国の建築生産プロセスの特殊性について。特に、日本のゼネコンにおける生産設計業務の位置づけについて、安藤正雄、古阪秀三らによる生産設計に関する先行研究をもとに論じます。
②     日本の建設業界における契約形態の特殊性について。とくに、発注者と受注者の二者によって成立する請負契約の在り方について、草柳俊二による先行研究をもとに論じます。
第二部では、第一部の整理を踏まえた日本の建築生産プロセスにおけるBIM活用について考察したうえで、先述した課題を解決していくための新たな建築生産制度を実現するワークフローの素案を提示したいと思います。

建築生産の歴史と展望
1.BIMを活用した設計・生産設計の協業体制の素案
第一部
1.建築生産の歴史と実情【その1】
2.建築生産の歴史と実情【その2】
3.生産設計とプロジェクトの透明性【その1】
第二部
1.日本におけるBIM活用について【その1】
2.日本におけるBIM活用について【その2】/あとがき
後日談
1.建築生産の歴史と展望(後日談)【その1】
2.建築生産の歴史と展望(後日談)【その2】
3.建築生産の歴史と展望(後日談)【その3】

著者略歴
押山玲央 / Reo OSHIYAMA
株式会社白矩 代表取締役、東洋大学非常勤講師

中村達也 / Tatsuya NAKAMURA
株式会社大林組 設計部所属、一級建築士

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