ドアを開けると広がる『ちいさな硝子の本の博物館』の世界とは
今回はスカイツリーから徒歩10分にある『ちいさな硝子の本の博物館』について、製造業で有名な墨田区の背景と実際にフィールドワークして感じたものと共に深く掘り下げていきたいと思う。
『ちいさな硝子の本の博物館』と私
江戸時代より『ものづくりのまち』として栄え、今もなおその技術が受け継がれている製造工場が多くある墨田。そこには30を超える博物館があり、『金庫と鍵の博物館』『名刺と紙製品の博物館』『ブレーキの博物館』などコアなものも多く見受けられる。それらを知ったことをきっかけに、≪墨田における博物館≫について非常に興味深く思い始めた。
ネットで墨田の博物館について調べているときに『ちいさな硝子の本の博物館』が目に留まった。硝子の美しさや独特の雰囲気に魅せられたのと、「硝子と本ってなんのつながりがあるのだろう」というふとした疑問がそこにはあった。ストリートビューで見た感じだと、ぱっと見大きな博物館でもないが、その中にはどんな世界が広がっているのだろうと興味を抱き、調査した。その結果を以下に記していきたいと思う。
『ちいさな硝子の本の博物館』について
「特別なひとときを」と「いつもの生活にプラスアルファの豊かさを」と掲げるこの博物館の展示物と概要について。
『ちいさな硝子の本の博物館』館内では、硝子に関する書籍が自由に閲覧できたり、デットストックの色ガラスの販売、またガラスに好きな絵や文字が掘れるリューター体験ができる。
すみだ3M運動公式サイトから詳細を引用すると、
当館は、年々国内外の手作りガラス生産工場が減っていく中で、手作りガラスの普及とより多くの方々にその魅力を知っていただくことを目的として、松徳硝子グループ運営施設として開館いたしました。
約850冊のガラス関連の書籍・資料の閲覧ができ、ガラス製造で使用する道具の展示もしています。
また、同工場かつて製造していた硝子食器の販売や、そのガラスの表面に絵や文字を掘ることができるリューター体験の開催もしています。(体験は要予約)
ちなみに、すみだ3M運動とは、一言で表すと、墨田区における産業PRとイメージアップ、地域活性化を図る事業だ。
「すみだ3M(スリーエム)運動」とは、1985(昭和60)年にスタートした、墨田区の産業PRとイメージアップ、地域活性化を図る事業です。
「小さな博物館」(Museum)。工房と店舗の機能を備えた、製造と販売が一体化した「工場ショップ」(Manufacturing shop)。付加価値の高い製品を作る技術者である「マイスター」(Meister)の3つの頭文字をとって「3M(スリーエム)運動」と呼んでいます。3つの運動を有機的につなぎ合わせ、墨田の優れた産業と生産品が「正当な評価」「より高い評価」を受けることを目指すとともに、モノづくりの素晴らしさや大切さをアピールするものです。
実は『ちいさな硝子の本の博物館』が、すみだ3Mものづくり探訪ガイドMAPや、また昨年11月に墨田区全域で開催された、一般の方が町工場を体験するイベントである、スミファー(すみだファクトリーめぐり)のガイドマップに掲載されている。(この二つのガイドマップを照らし合わせれば墨田ものしり検定中級くらいはとれるのではないだろうか...!(そのような検定は実在しません。))
少し話がそれてしまったが、これらすみだ3M運動やスミファーからも職人の技術や博物館が、墨田において非常に大切な存在であり『ちいさな硝子の本の博物館』もその一部であるといえるだろう。
『松徳硝子』と『ちいさな硝子の本の博物館』
先ほど、『ちいさな硝子の本の博物館』の概要を説明する際に『松徳硝子』という工場が紹介された。松徳硝子とは、
大正11年(1922年)、電球用硝子の生産工場として墨田区に創業。その後、時代の変化により、電球も職人による手吹きから機会による製造にとって代わり、主要製造品目をガラス器へ移行することとなりました。現在も職人による手仕事にこだわり、うすはりグラスなど、食器を中心に製造しています。(ちいさな硝子の本の博物館パンフレットより引用)
松徳硝子の登録商品として、「うすはり」というグラスがある。自分も実際に手に取ったことがあるが、驚くくらい軽く、とても薄い、そんな従来のガラス器の概念を超えるグラスであった。唇が触れたときの違和感のなさや、この薄さ故、飲み物の色味をそのまま映し出すことから、料亭やビールの広告など広く愛用されている。
小さな硝子の本の博物館では現在製造している商品であるうすはりなどの取り扱いはしておらず、かつて松徳硝子で製造されていたガラス器のみ販売されているため、「現品限り」の商品が立ち並んでいる。
ストリートビューでのぞいてみる
実は「ちいさな硝子の本の博物館」の館内をストリートビューでのぞくことができる。実際にのぞいてみよう。
館内にはずらりと本が並んでおり、一面にガラス器が置かれている。かつて松徳硝子で製造されていたガラス器や他の職人(アーティスト)さんの手によって作られたアクセサリー類や、オーナーである松徳さん自身が制作したアクセサリーやガラス器の彫刻も置かれていたりする。レジ前には墨田に関するあらゆるパンフレットや周りにあるレストランのカードなどがずらりと並んでいる。
様々なガラス器や本によってとても色鮮やかな空間であるがどこか落ち着くようなそんな雰囲気漂う館内であることが、このストリートビューからもうかがえる。
実際に訪問してみた
今年の初夏、実際に「ちいさな硝子の本の博物館」に訪問した。両国駅(「ちいさな硝子の本の博物館」の最寄りは本所吾妻端駅)から向かったのだが、途中にスカイツリーが目の前に大きく見えた。大通りからちょっと小道に入るとそこに「ちいさな硝子の本の博物館」の看板が。ドアを開けると、硝子と本でいっぱいの空間がそこには広がっていた。入り口横に足で踏むとアルコールが一吹きでてくる木でできたかわいらしいものが置いてあった、これはオーナーのご友人が制作されたものだそう。
館内の美しさに目を奪われていたその時、オーナーである松徳さんが私たちに声をかけて下さり、直接お話しする機会を頂いた。松徳さんは本当にフレンドリーな方で、この「ちいさな硝子の本の博物館」のことや、周辺のおすすめのお店、そして墨田について様々なことを教えて下さった。その内容をいくつか紹介したいと思う。
Q:この博物館を創業したきっかけとは?
A:家族が松徳硝子を営業しているため、「手作りガラスの魅力を知ってもらいたい」という思いがあった。
そこで、松徳硝子の廃盤になった製品を売ったり、ガラス関連書籍が自由に読めたりできるような環境をつくている。また、店内で販売している職人手作りガラスの表面に、ペン型の機械で自由に絵や文字などが掘れる体験も開催している。
Q:どのような本が置かれているのですか?
A:ガラス関連書籍が約850冊ほど。
日本語の書籍ももちろんあるが、古代ガラスや香水瓶の写真集、作家の写真集など、洋書もたくさんそろえている。読めなくても写真を見るだけで楽しめるようなそんな本も多い。
Q:なぜ墨田?
A:松徳硝子があるのが墨田だから。(近日墨田区外に移動予定)
墨田は高度な技術がたくさんあり、それらひとつひとつを大切にするためにすみだ3M運動が行われたりしている。ぜひ他の博物館も訪れてみてほしい。
Q:周辺でおすすめのランチスポットは?
A:バーガーを食べる気分だったらBuildersがおすすめ!
アメリカ産の肉を使用していて、ブロック型とひきにくを合わせることで食べ応えをつくっていて、デザートのブラウニーとかもとってもおいしい!他にも、雑多としていてローカル感漂うエスニック料理店や和食店もある。(実際この後バーが屋さんで食事しました。)
おわりに
実際に「ちいさな硝子の本の博物館」以外にもいくつかの博物館に訪問して、墨田には様々な規模の博物館が存在した。展示というかたちで成立しているものから、作業場(工場)が隣接しており、実際に制作の過程を拝見することができる博物館もあった。製造業が盛んな墨田だからこそ、技術輝くコアな展示も多く、それぞれの場所で職人の方々とお話しすることで、墨田の博物館の在り方や街の特徴と結び付け別の視点で墨田を見つめることができた。
ガラス器は私たちにとって身近な存在であるからこそ、「ちいさな硝子の本の博物館」に訪問することで見えてくる新たな世界があるに違いない。是非この記事を読んでいただいたあなたも一度訪れてみてほしいと思う。
参考文献
・ちいさな硝子の本の博物館 公式サイト
http://glass-book.jugem.jp/
・すみだ3M運動 公式サイト
https://sumida-3m.tokyo/