次郎が教えてくれたことシリーズ①これって愛?!
今日、次郎は、ショートステイに行っていて、私はひとりの時間を過ごしている。
こんな日は、次郎が可愛かった頃の写真なんか眺めて、そして、その頃の私はけっこういけてるんちゃうん?とか思ったりする。
ところが、いけてたはずの私は、3人の子どもの世話に忙しく、我が身を振り返る暇もなかった。写真の私は微笑んでいるが、実際の私は、怒ってばかりだった。
今でもそうだ、目の前に次郎が居れば、「歯を磨け!」だの、「お金はそんなに持ち歩いちゃダメ」だの、次郎の嫌がることを言っては喧嘩になる。
しまいには「夫婦だったら、離婚するレベルだ」なんて言って、次郎を困惑させている。なんのことはない、一緒に居る時間が長すぎるのだ。次郎だって、好きで私と一緒に居るわけではなかろう。
他に自由に暮らせて、必要なサポートが得られ、理解を得られれば、とっくに私の元には居ないだろう。次郎の行き場のなさに、私も行き場を失って、そのストレスから、ぶつかり合ってしまう。
そんな時に、月に数回ではあるけれど、次郎が喜んでいけるショートステイが見つかったのには、本当に救われた。
離れてみれば、次郎は本当にいいヤツで、さまざまなことを思い出す。
つい昨日もそうだ。
入浴介助のヘルパーさんが来て、次郎の入浴を手伝ってくださった。
次郎は、髪を洗えない。体をなぞってまんべんなく洗うということも出来ない。歯も、同じところばかり磨いて、全く磨けない部分がある。さらに、舌がうまく動かせず、歯に付着した食べかすを舌で取ることが出来ないから、歯磨き介助は重要だ。
そんな介助を必要とする次郎が、介助の終わったヘルパーさんの濡れたエプロンをビニール袋に入れた。ビニール袋は、うちの中を探して持っていった。ヘルパーさんは驚いて、「お母さん見て!次郎君が、濡れたエプロンをビニール袋に入れてくれた。へー気が利くねーびっくりした!!」と言った。
そうなのだ。次郎は気の利くヤツなのだ。自分のことは出来ないくせに。
少し前にはこんなことがあった。
上京した際に、2度目になるショートステイをお願いしたヘルパーさんから、メールをもらった。
「次郎君は、いつも楽しそうで、幸せそうで。。。。こんな人、僕、あまり見たことないです。」と。
そして、ショートステイを終えてからのメールには、「お母さん、次郎君のこと心配かもしれませんが、切符やバスの支払い、僕の方が教わったくらいです。パワーをもらいました。」と。
実はこの間にも、あの広い東京の空の下で、次郎を見かけたという知人からもメールをもらった。
「次郎君、楽しそうに歩いてました。」という報告の後、
「なんだかイキイキしている次郎君を見たら、落ち込んでる暇ないぞーって思いました!感謝!」
というメールだった。
歩いているだけで、感謝される次郎って・・・・すごいかも?!
どういうわけか、次郎は、ただそこに居るだけで、人を幸せにする力を持っているらしい。
私は、なぜ次郎にそんな力が備わっているのか?を考えてみた。
もしかしたら、次郎が人に対して、全幅の信頼を置いて生きているからかもしれないと思った。
私は自分を振り返っても、この人は信用できる人だろうか?信頼に足らない人かもしれない?などと、まずは、人を疑いの目で見ていると思う。
次郎ときたら、どんな人でも、すぐに仲良くなって、懐に入ってしまう。それは時々、距離が近すぎると指摘されるほどに、近いものだ。しかし、それは、次郎がそれだけ人を信頼している証拠だ。
人を見かけで判断することが多い中にあって、次郎には偏見が全くないのだ。
そんな次郎でも、人との関係で嫌なことがないわけではない。嫌なことをする人、嫌なことを言う人は居る。
ここからが、次郎の凄いところなのだが、次郎は、私を通じて、その人に『こういうことは嫌だった』ということを伝えるのだ。私は何度も次郎に、「それは伝えないといけないこと?」と聞く。次郎は『今すぐ、電話して伝えて』と言う。私は、電話口で必死に、「これは私が言っているのではありません、次郎が言っているのですが」と強調しながら、その内容を伝える。クレーマーな親だと思われたくないからだ。
私だったら、伝えずに、その人を嫌いになって終わりだ。そして、二度とその人には近づかない。
そんな調子で、次郎に「そんな嫌はことする人なんて、嫌だよね」と言うと、次郎はキョトンとして、『なんで?』と聞く。「なんでって、だって、嫌なことする人のことなんて、嫌じゃないの?」と私が言うと、『嫌なことはするけど、その人のことは嫌じゃない』と言う。「えーーーーっ!嫌いにならないの?」と聞くと、「うん」と言う。
次郎は、嫌だったことを伝えて、『わかってくれたら、いいんだ。』と、あっさりしている。
罪を憎んで人を憎まず!?!
こんなところに、こんなすごいことの出来る人が居た。私など、「罪を憎んで人を憎まず」と思っていたって、その人の言ったことや、したことを、その人から切り離して考えることなんて、出来ない。一緒くたにして、憎んでしまう。
すごい!凄すぎる!!真似しようとするが、その境地には到底なれそうにない!
次郎は、みんなが好き!!!!!!
これって愛だよね。
愛!!
おそらく次郎には、愛があるから、人を幸せにするのだ。
これが、次郎に教えてもらったことのひとつだ。
PS.アメブロにも、次郎のことを書いている過去記事があります。よかったら、読んでもらえたら、嬉しいです。↓この記事は、相模原障がい者殺傷事件のニュースが流れている時に書いたものです。
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