瑪瑙の一日
私はたいした悪事をなす器量もなく、
したがっていずれのゼネコンも賄賂を寄こしてないので、
質素に日々暮らしている。
そんな生活をしていても、
時たま精神の細胞核みたいなものが細胞壁から、
月見バーガーのベーコンのようにベンとはみ出して、
なんだか心がくさくさしてしまう時がある。
ロボトミー殺人事件を起こした男が、
「世界に名高いマニラ湾の夕日を見ているのに、俺の心には何の感動も湧いてこない。
もはや俺は人間ではないのだ。生きている資格はない。」
という一文を残したが、
このような感覚が顕現してしまうのではないかという不安がよぎる。
この不安を払拭するために、
日々の小さな感動や快楽をひとつびとつ丁寧に、
ミキプルーンの苗木のようにはぐくんでいくことが大切だと自分に言い聞かせ、
この休日も、
畑へ入って芋をほりちらしたり、
菜種がらの干してあるのへ火をつけたり、
百姓家の裏手につ吊るしてあるとんがらしをむしり取っていったりするなどして過ごした。