【ネタバレ】自己犠牲とは……2022中華街イベスト感想【アンゼロ】
中華街でチャイナ服イベという何の季節を捉えたのか判然としないテーマイベが始まり、私のツイッターTLには数多くの妄想・性癖公開ツイが流れていきましたが、イベスト後半の公開と同時にTLはお通夜ムードに一転しました。イベストを読んで死者が出たというわけです。
今回はテーマイベで、共通プロローグのあとは山神さん・春野さんルートに分岐。斗メイ・春メイの立ち上がり部分を描いた点では恋愛ストと言えるものの、信条部分が際立った「しんどい」内容でした。
自己犠牲を厭わない山神さん・春野さん(・メイメイ)に、本当にその生き方で良いのかを問う内容だったと思います。イベストを振り返っていきましょう。
※イベストネタバレに加え、山神さん、春野さん、結城さん、夏井さんのプロファイル情報もネタバレしています。情報を見たくない方はブラウザを閉じるか戻るかご対応願います。
※「~です」など言い切り口調で書いている部分もすべて私個人の感想です。すべての文末に「~と思います」と書くとあまりに読みにくいので……。
両ルート共通:どうしてこんなにしんどいのか?
この章はふせったーでツイートしたのと同内容になりますが、どちらもしんどかったですね……。これまでのイベストや東海林さん・風晴さんの個別ストと比較しても、群を抜くつらさがありました。
このしんどさの原因は、主人公(=読者の代理)が立ち入れない過去を見せられるからでないかと思っています。山神さんは雪原先生と、春野さんは結城さん・火村さんと過去を共有しており、主人公だけが知らないんです。
彼らが過去を踏まえた話をするとき、主人公は突然場外に放り出される。この疎外感……。
夏井さんやナイトさんなど若手組は、信条や最近のイベスト・カドストで過去の情報を小出しにしてくれて、彼らは彼らが望む範囲で主人公に情報を与えているんです。だから「仲良くなれたら彼らはもっと話してくれるだろうし、主人公が何かの助けになれるだろう」と思える。でも大人組はこの前提が全然違う。主人公に情報を与えようとして話しているわけではないんですね。
彼らは自分を知ってほしいと思って主人公に自分を打ち明けることはしません。春野さんの過去を知れるのは結城さんが喋るからだし、山神さんの過去を知れるのは雪原先生が喋るからなんです(逆も然りなんだろうね)。
この「主人公抜きで会話が進んでいく」ところに読者として無力さを感じ、しんどい読後感につながっているのだろうと思います。だからアンゼロが好きなんだよなあ。既に試合は終了して負けが確定してるんだけれど、本当に大事なのは次の一歩で、主人公との出会いによって精神的な勝利を掴んでほしいと願わずにはいられません。(試合に負けて勝負に勝つ物語が好きなんだよね)
……ここまでで感想文を終了した方が綺麗な気がしてきた。以降は蛇足かもしれないけれど、書いちゃったしもったいないので消さずに残しておきます。
山神さんルート
あらすじ
所長、火村、山神、七篠は銃の密売取引の情報を入手し、祭の警備を理由に中華街へ。春野、雪原と遭遇した山神、七篠だが、山神がある男性とぶつかり、龍のペンダントを落とした。同時に男性も似たようなペンダントを落とし、互いに取り違えることとなった。
ぶつかった男性は海外マフィア八星党のメンバーである張浩宇(チャン・ハンユー)で、彼は同胞に追われていた。ペンダントを持っていた山神が張の仲間だと誤解され、八星党の男たちに包囲されるが、張が現れて彼らを引きつけて去る。
去り際に張が落とした名刺には「ペンダントの持ち主 ホテルエヴリンの808号室 届けてくれ」と書いてあった。マフィアの一員である張と関わることに雪原は難色を示したが、七篠は悪人であればわざわざおとりになってマフィアから我々を守ることはしないと考え、依頼を引き受けることに。山神たちがホテルの部屋に向かうと、そこには……。
山神さんの戦い方
ハローも特対も文武両道が大勢いる中、山神さん(と雪原先生)は運動は苦手。腕力で対抗できない山神さんは、凶悪事件に遭遇したらどうするのか、かねてより気になっておりました。
山神さんが勝負をかけたのは、ホテルエヴリンの屋上。マフィアのメンバーに殴られ蹴られる張さんを単身で助けに向かう「道化師の一人舞台」が彼の勝負でした。
敵に「即効性の毒を打った」と言って注射器を見せ、解毒剤と引き換えに張さんを解放するよう要求。無事、取引は成立して張さんを逃がすことはできますが、毒を打ったというのが嘘であることはその後すぐにわかってしまうわけで……。
騙し打ちが成功したと見れば格好いい。このときの山神さん本当に格好良かったです。
でも、嘘だと相手に知られたら意味を成さない一か八かの手法を取ってるんですよね……。手先の器用さやお喋りといった彼の長所を活かした戦い方は、実弾一発しか込められていない銃のように危ういものでした。
彼は医師だからわざわざ人を傷つけることはしないし、傷ついた人を助ける難しさも知ってるんだけど、そうなる前に防ぐ術は持っていなくて……危険にさらされる人と場所を入れ替わって自分が危険を引き受ける方法で戦おうとするんだなあ……。
案の定、丸腰の山神さんに襲いかかろうとするマフィアたちに、山神さんは……。これはここには書けないです、イベストで読んでほしい。あなたがこの記事を読んでいる今、イベント期間が終了していたら……復刻を待ってくださいお願いします。
僕の星
そばに自分がいなくても、大切な人が幸福であればいいと言う山神さん。「手を取り合って寄り添うだけが愛の唯一解じゃない」と言ったのは痺れました……。とても現実的で大好きなセリフ。
(ただ、なんていうか、自カプがいちゃいちゃしてるところが見たいオタクには痛い言葉でした。すぐに手を取り合わせ、寄り添わせようとするもんね私)
そんな山神さんに対し、あなたが命を投げ捨てるならその腕に飛びついてこの世に引き戻すと言ったメイメイ。自ら袖を、袖を掴んで……。
えっと、プロポーズ、ですよね……?
初期実装のカドストにもあるとおり、山神さんは「僕に触れると穢れてしまう」と主人公以外の人も含めて触れ合いを忌避してきたので、斗メイルートのメイメイは山神さんが気になりつつも半年間距離を保ってきたのだと思います。命の取り合いという極限状態に置かれたことで、膠着を打開する推進力が生まれたのかなと感じました。
山神さんの、自分には喜ぶ権利がないと思っているから喜びの感情を認められない、もどかしい行動もねえ……。
弊所はまだ山神さんの親密度が12で何もわかってないのですが(ここまで書いておいて今更!)、そんな私から見ると、山神さんが自分の感情を優先できる日が早く来て欲しいと思います。メイメイに関西弁で喋りかけられる日が早く来てほしい。
春野さんルートでの山神さん
なぜか春野さんルートで山神さんと雪原先生の重要な絡みがあったのでここに書いておきますね。最後の戦闘に際し、自分は前に出るけどお前は後方だ、的なことを言った山神さんに対し、
雪原「肝心なときに俺に処置する権利も罪も分け与えなかった、あの頃と何も変わってないな」
おいー!!! なんで春野さんルートでやるんだー!!!
山神さんは1人で罪を背負い込んでいるし、雪原先生は許すことを許されない人がいるし、過去に何があったのかはわからんし……でも上記の一言で少し想像しやすくなったと思います。
春野さんルート
あらすじ
探偵事務所の面々とはぐれ、七篠は春野、雪原と行動することに。老舗マフィア黒蛇会のボス「紅龍(ホンロン)」と春野の外見が似ていたため、3人はチンピラ集団の蠍民に襲われる。
春野らを助けたのが、紅龍の実弟である星(シン)とその友人の劉(リュウ)。星は恋人である月子が昨日から姿を消しており、黒蛇会と蠍民の抗争に巻き込まれたのではないかと考えていることを明かす。
警察や探偵という身分を明かし、春野と七篠は月子の捜索に乗り出すが、抗争よりも恐ろしいことに巻き込まれた可能性が浮上し……?
自己犠牲を問う
春野さんは結城さんに負い目があるらしく、凄く自罰的な行動を取るんですね。毎朝のルーティンは戒めだとか、過去に縛られまくっている男なんです(親密度12だから何もわかってない、上げてもわからない説あるけど)。
大切な人が幸せであるためなら身を引くという春野さん。しかし星さんと劉さんは「自分が幸せでなければ、相手を幸せになんてできない」という考え方を示します。何かを犠牲にするのはマフィアのやり方だ、とまで言いました。
自分を後回しにするのもひとつの優しさだ、とメイメイは言いますが……。
いざ戦闘になったとき、春野さんを助けるために自分に向けられた銃を受け入れるメイメイ。
「君が傷つくのは見たくない」と命をかけて銃弾の軌道を逸らした春野さん。
アンゼロ名物、似た者同士来ました……。アンゼロの主人公は各カプのルートに応じて若干パーソナリティが変わっている(ように読める)ので、攻略対象のキャラとの類似点が強調され、似た者同士ゆえのすれ違いが発生します。
これがきっかけで「大事」であることを自覚するのですが、命のやり取りという極限状態(再放送)に陥らなければ自覚できない鈍さよ……。というか、劉さんがいなければ春メイはまだ両片思いすら自覚できていなかったかも。今回のイベスト、個別スト1章後半くらいの内容でしたよ。
「大事」を自覚する
アンゼロの男たちは恋愛に疎い天然さんが多く、中でも頭ひとつ飛び抜けて天然と思しいのが春野さんです。そんな春野さんが、メイメイのことを大事だと自覚するのも熱かったです。メイメイに言い寄る劉さんに対し、
「駄目だ」
「彼女は駄目だ」
春メイ~!!! 早く付き合ってくれ!!!
春メイは両片思いに至るまでも長そうなので、今回のイベストで前進したのが可愛くて可愛くて……。
想い合っていることに疎い春メイですが、劉さんのおかげで「大事な人を幸せにするとはどういうことなのか」を自問自答しただろうし、いざ危ない場面に直面して「自分を犠牲にすることは、自分を大事にしてくれる人を悲しませることだ」と理解できたのではないでしょうか。
いや本当に個別スト……。モブの人生観がメインキャラの考え方を変えるところに、風晴さんルートの2章前半が重なりました。これ個別ストで大丈夫です、これ以上の人件費はかけなくてまったく問題ないので、ぜひこのまま個別ストに実装してほしいです。
その後の戦闘のあと、身を賭すことにも意味があると暗示するような会話もあり、春メイの自己犠牲は部分的には肯定されたように思います。ですが、「自分が無事であること」が相手の幸せの絶対条件である価値観は揺るぎませんでした。
そしてラストシーン……最高でした! 涙が出ました!! 比喩でなく泣いたのは初めてかもしれない(今までは比喩でしたごめんなさい)。
ボロボロになって、手をつないで、甘いものが食べたいね、何食べに行こうか、って話すの。さっきまで命がけで戦っていた二人が、非日常からふっと日常に戻って、ありきたりな約束を交わすの。でも非日常のゾーンを通ったことで日常の輝きは増して、その約束はとても甘美なものになるのです。精神的勝利とはこのこと。
本件は試合にも勝っているので厳密には異なりますが、私が好きな「試合に負けて勝負に勝つ」の「勝負に勝つ」の部分はこういうことなんです。
春野さんの輝き
中華街で恐れられている紅龍に似ていることを活かし、春野さんは紅龍になりきることに。しかし警察官として「俺は紅龍だ」と身分を詐称することはできません(真面目!)。そこで、相手が勝手に勘違いすることを見越し、
「知不知道我是誰?(私が誰かわかるか?)」
という中国語を劉さんに教えてもらいました。
その後、なんやかんやあって事態はとんでもなく複雑なことになり、要約してここに記載するのを諦めたくらいですが、クライマックスの倉庫内での戦闘……春野さん格好良かった……。
壁際に追い詰められた所長を助けるため、春野さんは積み重なった荷箱を駆けあがってピストルの空砲を天に向かって撃ち、堂々と
「知不知道我是誰?」
春野マスター!!!
私は……今でもあなたの従者でありたい……(元ネタわかる人いたらツイッターか匿名のメッセージボックスで教えていただけません? 性癖一致してます)
ここ格好良すぎて泣きました。春野マスター大好きです。暗に「俺は紅龍だ」と言ったセリフですが、大事な人を守り自分も生き抜くという警察官・春野隆宏としての覚悟が決まった瞬間であったようにも思います。
そして、空砲とはいえ銃を撃った春野さん。トラウマの克服に一歩近づいた、というメタファーに感じられました。
結城さんの胸ぐらに掴みかかったのは……きっと、結城さんの過去に重なったんだろうなあ……。結城・春野の過去は「銃」がキーワードなのかね。
結城さんに幸せになってほしいと願う春野さんと、破滅に向かう結城さんは利害が完全に不一致なんだよな。でも春野さんを始めハロメンなど結城さんを想う人たちがいなかったら、結城さんは本当に破滅に向かって一直線なので、苦しいだろうけど春野さんのような存在は必要だと思います。ここからは結城怜二の信条……大いなる脱線……。
春野さんの過去
路地裏での聞き込み中、劉さんは春野さんに「ほんとにただの警察官?」と疑問を口にします。
彼が言うには、
修羅場慣れしてる
マフィアみたいな組織相手でも冷静
俺が知ってる警察とちょっと雰囲気が違う
もっとヤバイ匂いがする
とのこと。え、春野さんの経歴って……?
メイメイいわく、特対だから修羅場慣れしているというような意味ではないらしい。
劉さんに対して春野さんは、嘘は言っていないとしつつ、「今も昔も、『公共の安全と秩序を維持するため』国家に身を捧げたしがない公務員だ」と言いました。
おっと……この言い方はお巡りさん的な意味の警察官じゃねえな?
となると、結城さんとどこでキャリアが被ったのかも気になってきます。春野さんの情報が所長に波及し、所長の情報が春野さんに波及するというアンゼロ名物スパイラルでございます。
しかしモブのはずの劉さん、人生観が美しいし頭もいいしでモブにしておくのもったいないよ……。
山神さんルートでの結城さん・春野さん
なぜか山神さんルートで、
結城「お前はもう、囚われなくていいんじゃねーの?」
春野「……先輩がそれを言うんですか?」
結城「……はは、言うようになったじゃねーか」
というやり取りがありまして。
春野さんには自分の人生を生きてほしいと思う所長と、「一番囚われているのは結城さんなのに」と思っている春野さんが見えました……。
他にも、銃撃戦になりかけたときに「この場に先輩をいさせたくありません」とか、所長と春野さんの過去の記憶に重なるシーンだったのかな、とか……。
山神さんルート、とてもメインストらしかったんです。メインスト3章でいいんじゃない?(定期)
今後メインストに関連するかもしれない伏線
最後に、各ルートで小出しにされた伏線についてまとめておきます。書き手も隠す気がなさそうなので伏線というか事前情報だと思うけれども。
新興宗教団体とは?
山神さんルートで、暴対でもない春野さんが暴力団の事件になぜ首を突っ込むのか疑問を口にしたメイメイに対し、雪原先生は「永津組が懇意にしている新興宗教団体と、春野は何やら因縁があるらしい」と言っていました。なぜ、春野さんルートではなく山神さんルートで春野さん情報を……!
「この件はあなたには無関係です」と言う春野さんに対し、「そうでもねーんじゃねえの?」と返す所長。春野さんの無言の肯定……。春野さんにとっての「因縁」といえば、結城さんに関係ないはずがありません。
ついでに夏井さんハロウィンSSRのカドストのネタバレになるのですが、夏井さんも事情があって「ある新興宗教団体」を個人的に調査しています。別々の団体という可能性はありますが、ひとまず同じ団体と見て良いのではないかと思います。
夏井さんが個人的に調べるとしたら、流星くんが14歳のときのお父様の件。所長、春野さん、夏井さんがそれぞれ個人的に調べている件はおそらく1つにつながっており、ゼロ年代末期のテロ事件のことだと思われます。
他のストで新興宗教団体が出てきたかどうか今は思い出せないのですが、テロの主犯がここにいるということでしょうか。この組織が所長と夏井さんにとって何なのか気になるとともに、記憶を失う前のメイメイとの関係は……? と不穏な空気も感じております。
いつかメインストで「新興宗教団体」が出てくると思うので、ここに太字で記しておきます。
所長の過去とは?
春野さんルートで月子さんは闇取引に巻き込まれたようだ、とわかったあと、
結城「闇取引ねー……。因果なもんだな」
春野「……」
という会話のようなモノローグのようなセリフがありました。
これはつまり……春野さんが気にしている所長の過去の事件が闇取引に関するものだったということでしょうか?
今回のイベスト、所長と春野さんが絡んだためか過去の匂わせが非常に多く、私が拾えただけでも
新興宗教団体
闇取引
銃を構える若者
所長「覚悟もなく震えて銃構えてるような奴に俺は殺せねーよ?」
と、つながりそうでつながらないワードが多々ありました。何パターンかのストーリーは考えられますが、所長の過去についてわかっていることが少ないので、どれも不正解な気がするなあ。
さいごに
どこか端折られたのか設定の整合性が気になる部分はありましたが、今回はそこに言及するのは野暮な気がします。そういうのどうでもよくなっちゃいますね。
山神さんも春野さんも自分の残りの人生に期待していなくて、山神さんは寿命を縮めたがるし、春野さんは自分を罰し続けます。そんな二人だから、今回のイベストのような極限状態に置かれてようやく本心を自覚できたのかなと思います。彼らが「生ぎたいっ!!!!」と言える日は来るのでしょうか。
それから、改めてアンゼロのストが好きだと思いました。私は人間の強さよりも弱さを愛しているから、過ちだらけのキャラが大好きなんです。人間って本当に無力だもの。
これって実は凄いことだよねと思ってるのですが、身体能力抜群で頭の回転も速い主人公はある意味チートというやつだし、探偵も警察も医師もみんなその道では超人じゃないですか。そんな人たちでも人生の前には無力なんだなって思い知らされます。
それでも生きていかなければならないのが人生で、勝利が望めないからこそ私は「試合に負けて勝負に勝つ」みたいなお話が好きなんです。アンゼロは現実よりもハードな世界だからこそ説得力のある、力のあるフィクションだと思います。
つらつら書きましたが、いずれのルートもキャラの価値観に変化が読み取れるという意味で個別スト級の内容だったと思いますし、場面によってはメインストでもおかしくなかったかと。イベストの内容はどんどん良くなっているので、これを無料で読めるのは何かが間違っている気がします。
それでは皆さん、ご唱和ください。
ストに課金をさせてくれ~!!!!!!