[小説]迷光仕掛けのガールフレンド (1)
時は三〇二二年。ネット技術が発達し、世の中のありとあらゆるものがデジタル化した世界。仕事はオンライン、家事はロボットやAIが代行し、人々がそれぞれの時間を楽しむ明るくゆとりがある暮らし――そんなものを享受できるのは前世紀の最後にできた<新市街>に住む高収入の人々や金持ちぐらいだった。それ以外の多くの人々は<旧市街>に追い立てられ、狭い集合住宅の中で、息苦しい生活を強いられていた。その人の溢れ具合を証明するものが、<旧市街>のそのまた先にあるゴミ集積場だった。通称ジャンク置き場と呼ばれるここは、燃える燃えない問わず、さまざまなゴミで溢れかえっており、それらを掃除屋と呼ばれるロボットが仕分けしていた。仕分けられたゴミの多くは<新市街>を動かすエネルギーとして消費され、それ以外は、海に沈められるか、ジャンク屋と呼ばれる店で安めの値段で売られるかの二択しかなかった。
そんなジャンク置き場の朝は、生ゴミをあさりに来るカラスの声から始まる。かあ、かあというけたたましい声を背に、ゴミの山の中を、巨大な掃除機のような姿をしたロボットたちがゴミ山を漁っていた。それらを掃除屋と呼ばれるロボットが仕分けしていた。仕分けられたゴミの多くは<新市街>を動かすエネルギーとして消費され、それ以外は、海に沈められるか、ジャンク屋と呼ばれる店で安めの値段で売られるかの二択しかなかった。
そんなジャンク置き場の朝は、生ゴミをあさりに来るカラスの声から始まる。かあ、かあというけたたましい声を背に、ゴミの山の中を、巨大な掃除機のような姿をしたロボットたちがゴミ山を漁っていた。それらは薄汚れた巨体の側面からアームを出し、ゴミを細かく査察した後、下部にあるかごに入れるという作業を繰り返していた。そんなことをしている中で、数体いる中の一体がゴミの中に何か光るものを見つけた。拾い上げると、それは剥き出しのプリント基盤だった。しかも汚れひとつないきれいなものだ。ロボットは、首をかしげる――ような仕草を見せた。
何だろう、これは。ロボットはチラチラとそれを裏返したり、横から見たりとすみからすみまで見た。しばらくそうした後、これが役に立たないものだと認知したのか、あるいは飽きたのか、元あった場所に置いた後、そのまま立ち去った。
夕刻。オレンジ色に染まるジャンク場はまるで、墓場のように静かだった。日が完全に沈み切った頃、その静寂を破るかのように、今度は巨大なショベルカーとダンプカーがやってきた。ショベルカーは、黄色い巨体を揺らしながら、ゴミ山の間を縫うように走った。先程の基盤があった山の前で止まると他のゴミごと、それを掬い上げた。他のゴミと一緒にダンプの荷台に乗せられた基盤は、そのままどこかへ走り去っていった。
(続く)