ミュシャ展に行ったら筋肉爆盛り大道芸人のお兄さんに心打たれた話
昨日、実父と一緒に伊勢丹静岡店で開催されているミュシャ展に行ってきた。ミュシャ展自体の感想は「よかった」「今の写真や芸術に通じるものがここに」「正直グッズ買えたのに興奮しすぎて記憶がほとんどない」「0の桁の違うポストカード売れてる…」とか、展示自体は素晴らしいのに、行った私の中身がなさすぎてそんな詳しい話は書いてない。
来週までやってるみたいだから、とりあえず気になる人は行ってみて。大人1000円で絵画の美女の眼差しを浴びることができるから。
あと、中身のない話の後にメインにしたい話持ってくるのもあれだと思ったんだけど、腕の筋肉爆盛りのイケメン大道芸人さんから元気もらった話したいからこれ読んでくれてる人がいたら「パフォーマーTAKAYA」さんって検索かけて。そして元気のない人はこの真冬に半袖で体はってひたすらにイケイケトークかましてくれるお兄さんに出会ったら是非足を止めて見てほしい。正直私は大道芸とか素通りするタイプなんだけど、あの激熱トークに引かれて最後までサルの玩具みたいに手を叩きながら見てたから。まあ、最初に足を止めたのは実父だったんだけど。
先にミュシャ。ミュシャというと、それほど芸術に明るくない私は「あの、めちゃくちゃ線が細くてきれいな絵を描くすごい人」くらいの認識だった。久しぶりにちまちま収集を再開したポストカードの中にも何枚かある。もっと言うと壁に飾ってる。
あくまで綺麗なものを集めるのが好きなので、芸術家その人に興味があったわけではない。
だけど、ちょうどセルフポートレート撮影、創作としての作品撮りを目指している私としては構図の参考になるものは何でも吸収したかった。そんなわけで暇そうな上に私が結婚してから週一ペースで連絡してくる実父と共に未開の地、伊勢丹静岡店8階に足を踏み入れたのが始まり。
「先にグッズ買っていい?あとお金持ってくるの忘れたから貸していただけると…図録とポストカードは絶対ほしいんだけど」
「いや、まず見てからにしない?」
「チョコレートある!あっ、でも筋トレサボってるしな…せっかく徐倫になりたくて割ったのに今腹筋死んでるし…」
「後にするぞ、後に」
グッズがまず先にほしくなるあたり、悲しきオタクとしての習性が全面に出てしまう。これがミュージカル刀剣乱舞だったら私はまずグッズを先に買いに行く。いつもならそうするんだけど、今回は別にタオルも振り回さないし推しメンのあふれんばかりのイケメンオーラを撒き散らすデ缶バッジガチャを回すわけでも、推しカラーリボンがあるわけでもない。
思い直して実父の後に続いた。
「ご一緒ですか?」
「はい!」
ミリタリージャケットにハイウエストスキニーの私と、後ろに体格のいいおじさん。
2日に一回あんまんを食べる生活を送り、絶賛体積増量中のこのおじさんこそ私の父であり、運転手であり、かつてちょいちょい写真のコンペでよくわからん賞を受賞した過去を持ち、ちょっと前まで結婚式のスナップ写真撮影で生きてきたその人である。
我々は承太郎と徐倫より最悪な親子関係だったが、私の結婚を期にちょうどいい距離を保つことに成功した。
これは余談なので話を戻そう。
受付のお姉さんからチケットを受け取った白星父娘は、特に予備知識なく展示場へと進んだ。
「これは現代の美術に繋がるな。ポーズとかもそうだし、美人画って感じ。モデルと言うか、やっぱり背筋が伸びてるって言うか、姿勢がいい」
「モデルとかいたのかな」
「そりゃいただろ」
小声で会話しながら思ってたんだけど、ミュシャの絵って改めなくても普通に線がきれいなんだよね。滑らかでやわらかいけど、色を取り入れてこそ妖しく私たちを引き付けるというか。当然時代的にはアナログなわけで、レイヤーとか重ねられないし一発勝負だしアナログもデジタルも、そもそも絵が描けない私は泣いちゃうなって思った。一時期絵を描いてた時期もあったけど、毎回左右反転して泣きたくなったり、自分の解釈とできたものが違うと「そうじゃあないッ!だがしかし!何故、何故なんだ!何故成長しないッ!私はこんなにも!こんなにもッ…!」そんな気持ちを抱えたまま絵からはフェードアウトした。また話が逸れた。
塗り残しとかないんだろうな、プロだもんな。
あっ、これちょっと自撮りしたときの私に似てる。ビューティープラス仕様の。
生涯のハードルめちゃくちゃ高いけどすごい働いてる…信じられない……。私なんか100円くじ十枚買って「ッか~!1、2、3等全部当たらないかな!5兆ほしい!」とか考えてるのに。
芸術家はもう意識そのものが違うんだな。
もう本当にしょうもないことを考えながら展示を見ていた。多分、実父の方がそれらしい感想を口にしていた気がする。
特に何か試練を乗り越えるでも謎解きをするわけでもなく出口まで辿り着いた私たちは、図録やらポストカードやらポスターやらクリアファイルを買い漁り、私の財布の中身は500円硬貨一枚と100円玉一枚、それから10円と5円と「ぎりぎりスタバ行けるか?!」くらいの軽さになった。
「俺もクリアファイルほしいな。こっちとこっち、どっちがいいかな」
「二枚買っても1000円しないじゃん」
「そうだね、確かに」
「私もう財布の中600円くらいしかない」
「なんだそれ」
いやもう変な時に欲しくなると困るから、金がなくても勉強に使うものは惜しみなく買うんだよ。
「お父さん、やっぱりチョコレートほしいんで1400円貸してください」
「ああ、缶のやつね」
「中身は多分、今日明日でなくなるよ」
合計一万円に届かないくらいの買い物だった けど、本当に私の教材となるかは不明である。
しかし、私はこの直後「せめて3000円は残しておくべきだった」と後悔することになる。
「じゃあ、商店街で食べるところ探そうか」
伊勢丹から出てすぐ。
入る時にはなかった、ちょっとした人集りができている。横目で見て、ああ大道芸かと通りすぎようとした時、普段は素通りする父が足を止めた。
「マジックやってる」
「いや、大道芸だと思うよ」
そこには水晶玉を浮かす腕の筋肉爆盛りのイケメンがいた。この寒い中、半袖で(しかも傷がある)頑張ってる。私も寒いけど、その人はもっと寒そうだ。
実際にこにこしながら
「寒いですよね!でも、この場で一番寒そうなの誰だと思います?」
みたいな感じのことをフワッと笑いをとりながら言っていた。そりゃそうだと思って笑った。笑いながら、笑いすぎて泣いていた。
お兄さんのトークスキルが相当強烈だったのと、ここ一年や最近あった悩み事が全部落ちてくみたいだった。イケメン大道芸人さんは体を張っていた。
来月30歳を迎える私は25を越えた辺りからだんだん涙脆くなっていたのだけれど、普通に笑いながら泣いていた。この人なら私の消えた腹筋をバキバキにしてくれる気がした。それどころか、板チョコにして砕いてくれるかもしれないと思った。私の腹筋はダイヤモンドではないので簡単に砕けるだろうと思った。
本当はパフォーマンスもすごいんですよって伝えるべきなんだろうけど、私はとにかくTAKAYAお兄さんのトークをもっと聞いていたいと思った。
大道芸を生業とする人はやっぱりどの人もトークが上手いなとは感じるんだけど、でもこの筋肉爆盛りお兄さん兎に角人を元気にする才能がある。わざとらしさがないというか、申し訳ないことに実は最初は「どこまで演技でどこからメインなんだろう」とか思ってた。
けど、横から見てて「これは冗談抜きに命がけだ、この人、『覚悟して来てる人』だ……」
筋肉爆盛りニキのオーラに当てられていると、彼は言った。
「これ失敗して倒れてたことあるんですけど、怖いですね。皆、写真撮ってましたね!」
そうだね!!!!!私もそこまでがパフォーマンスだと思っちゃうかもしれないもん!!!!!!でもお兄さん、怖くてもこの仕事続けてるんだよね。私も本当に今年色々考えたんだけど、お兄さん見てると元気出てくる!!!!!!
めちゃくちゃ感動してたらお兄さんがナイフを出してきた。やばい、時を止められてナイフを投げられたらここは今この瞬間に承太郎を探さなければならないと思った。けれど、お兄さんはやっぱりアゲにアゲにアゲたトークをぶちかましてパフォーマンスをしてくれた。DIOじゃなくてよかった。そもそもDIOは日中外出れないしな、と思い直した。
お兄さん、兎に角最高の時間をくれてありがとうという気持ちでいっぱいだった。
もう具体的にミュシャの記憶を大道芸人のお兄さんが塗り替えてしまったんだけど、お兄さんのお陰で具合悪くてもご飯を食べて薬を飲もうという気持ちが湧いた。もう今日本当昼ごはん抜こうかと思ったんだけど、ロキソニンを飲むためにお兄さん食欲をくれてありがとうという二重の感謝でいっぱいだ。
初めて大道芸を見て「ああ、お金払いたいな」と思った。前もって財布は出してたけど中見たら本当に何回見ても600円しかなくてまた泣いた。
でも帰りにコーヒーくらいは買えるかなと思ったからフェルトハットにいれたら、普段はそういうパフォーマンスに一切お金を払わない父がお札をいれていて何より吃驚した。
次にどこかで筋肉爆盛りニキ、パフォーマーTAKAYAさんとお会いできたら普通にお札を入れたいのでそれまでにやりたいことを仕事にして軌道に乗せていけたらいいなと思う。
次はお父さんじゃなくて、旦那さんと一緒に見たい!
すごく素敵だったのでお名前載せてしまったけど、この記事を読んでくれた人が一人でもいるなら勝手ながら彼のことを知ってほしいなと思います。元気がほしいなら尚更。
踏み出したいことがあるなら是非、彼のトークとパフォーマンスを生で見てほしいと思います。
『パフォーマーTAKAYA』で出るみたいです!愛知から静岡に来てくれた、元気で明るいお兄さんです!