【安価小説②】明日は晴れると思うなよ【10月30日夜枠で作られた作品】
【タイトル】明日は晴れると思うなよ
【ジャンル】軍師
【世界観】三国志
【主人公】
〇名前=曹操
〇性別=男
〇年齢=17歳
〇種族=妖怪
〇髪型=辮髪
〇肌の色=緑
〇身長=150cm
〇体型=オーガ
【ヒロイン(ヒーロー)】
〇名前=中村
〇性別=男の娘
〇年齢=18歳
〇種族=インキュバス
〇髪型=ロン毛
〇肌の色=褐色
〇身長=150cm
〇体型=細身
戦乱の世、ありけり。
時は戦国。各国は崩壊した朝廷に従う事を辞め、多くの乱世の英雄を生み出していた。
民は明日の命さえ保証されぬ日々、肥え太る官僚、各地で暴れまわる野盗の軍団。
兵は人々を守るための職務を果たさず、ただただ、人々は毎日、その日、生きられるかどうかを心配しながら過ごしていた。
そんな戦乱の世を終わらせるべく、一人の英雄が立ち上がった。
曹操。字を孟徳。オーガの父を持つ、辮髪の妖怪である。
彼は、その巧みな話術を持ってして、多くの人々を魅了し、その小柄な体躯に似合わず、素晴らしい武勇を誇っていた。
そんな彼であったが、彼には悩みがあった。
それは、彼自信は優秀であり、何でもこなすことは出来たが、補佐してくれる存在がいなかったのである。
彼は、なまじ優秀であるがために、誰かに大事な仕事を割り振るという事を苦手としており、そのせいで、最近は睡眠不足がたたり、精細を欠いていた。
そんな彼のもとに、とある妖術師が現れた。
妖術師は言った。
「双方の利益がぶつかるとき、より欲深く、より主張がずさんな方が批難されます(安価①)」
妖術師の言葉を聴いた彼は、鼻で笑う。
「そのような事、この曹孟徳、言われずとも知っておるわ。何者だ、貴様」
「いえいえ、わたしなどは、単なる一介の妖術師でございます」
「そのような言葉、この曹孟徳が信じると思うてか。多くの番兵達の目を盗み、ここまでやってきたその手腕、貴様、どこの草の者だ」
曹操が腰に差していた剣を抜き、妖術師に突きつけると、妖術師は笑う。
「わたしの名前は劉備です。この度は、貴方さまに素晴らしい提案を持ってきたのです」
妖術師の言葉を聴かず、曹操はその首を落とすべく、剣を振り下ろした。
だが、しかし、妖術師の首は確かに落ちたのだが、その顔はにっこりと笑い、そのまま曹操へと語り掛ける。
「わたしが操るのは、次元を操る能力。例え首を墜とされようとも、生き延びることができるのです」
からからと笑うその妖術師の不気味な姿に、曹操は少し肝を冷やしながらも、剣を収めた。
これ以上、剣を向けていても意味がないと悟ったからだ。
「言いたい事があるのならば、早く言うがよい」
「その言葉を待っていました」
妖術師は語る。
彼の使う妖術を持ってして、曹操の求める人材をここに呼び寄せるというのだ。
曹操は、それを胡乱げな目で見ていたが、変なものが呼ばれたならば、切り捨てれば良いと判断し、斬っても死なぬ存在に何を言っても無駄だと思い、その言葉を受けれいれた。
「ほんにゃぱっぱー!!」
妖術師がそう叫ぶと、いつの間にか、床に書かれていた謎の陣が光り輝き、足元から、何かが生えるように現れた。
「アイエエエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ?!(安価②)」
曹操は驚き叫び、そして思わず、腰に戻していた剣を向けたが、妖術師は、それを見て聴いて、からからと笑う。
「確かにくの一のような露出の多さですが、なになに、彼はくの一ではありませぬ」
「なにぃ? ニンジャではないだと?」
「左様。確かに、露出が多く、なにやら色気にあふれ、正直、ちょっとぐっとくるところありますけど、普通に、男の娘です」
「そうか、そう……男の子?」
「はい。男の娘です」
お互いに微妙にすれ違いがある事に気づきつつも、曹操は釈然としない思いをしながら、その現れた人物へと再度目を戻す。
そこにいたのは、自身と同じくらいの背丈の、細身の褐色で髪の長い、少女であった。
「……男?」
曹操は、首をかしげる。
だが、そんな彼に構わず、少女(?)は曹操に言った。
「ドーモ、ソウソウ=サン。ナカムラデス。ハイクを詠め!!」
「アイエー!?」
やっぱりニンジャじゃないか! という叫びを言う間もなく、曹操の意識は闇へと落ちた。
曹操が目を覚ますと、そこは、寝室であった。
どうやら、死んだわけではないらしい。
「あのニンジャは一体……」
曹操は自身の首を確かに落としたと思った剣筋を思い出しながら、自身の首を触ると、何かの文様が浮かんでいるのが分かった。
「これは……?」
曹操が気味悪く思っていると、そこに先ほどの露出の多い少女(?)が現れた。
「それは、淫紋です。えっちなやつです」
「なんだそれは!?」
さらっと言われた事実に、曹操は驚いた。
そもそも、淫紋とはなんだ、と聞く前に、なんだか、目の前の少女がとても魅力的に思えてきてしまったのだ。
この曹操、実はこの17年間生きてきて、恋の一つも経験が無かった。
幼馴染の悪友は、結婚式会場に殴りこんだ際に、花嫁を攫ったりしたようだが。
なんてやつだ。あいつは最低だな。
どうでもいい事を思い出しながらも、目の前の少女から目が離せず、曹操は自身の胸の高鳴りを感じていた。
「わたしは、貴方が求めていたものを感じ取り、やってきました」
「嫁……ってコト!?」
「違いますが???」
一刀両断されたものの、曹操はめげなかった。
「じゃあ、現れ出たる義経公!(安価③)」
曹操のその言葉と共に現れたのは、源義経公であった。
その姿は、いと美しき。まるで天女のようであり、実際、天女であった。
地元では、天照大御神と書かれた長ランを着こみ、ブイブイ言わせている硬派な女子である。
「何奴!?」
少女(?)がそう言いながら飛び退ると、義経公は、挑発的な笑みを浮かべて言った。
「ここに、当代最強の軍師がいるときいてやってきたのだが。貴様のことか?」
その女傑のあふれ出る威圧感。恐ろしいまでの色香。
実はインキュバスであった少女、中村をもってしても、その魅力の前には、思わず膝をついてしまう。
「そうです。わたしが中村。当代最強と謡われる軍師でございます」
「そうか。今日から我に仕えよ」
義経公の言葉に、思わずうなずきそうになった中村であったが、そこに曹操が割って入る。
「あいや待たれよ。そこな御仁。この者は我が配下となった者。勝手に引き抜かれるわけにはいかぬ」
曹操の言葉に、義経公は、笑う。
「そのような事。愚かな事よ。真に仕えるべき主君を選ぶのは、この者。選ばれなかった時点で、その者に、主君たる資質がなかったというだけの事よ。先だの後だのと、小さい男だ」
「誰が小さいだ!!」
曹操は、自分の身長が低い事を気にしていた。
オーガ族の者たちは、多くが2mから3mの身長の者が多かったからだ。
この戦、負けるわけにはいかぬ。
曹操は、中村に言った。
「この曹操と共にくれば、共に天下を分かち、そなたに、世界の半分をくれてやろう!」
その言葉に、中村は「鳳凰は燕と空を語らず。されど空の青さを知る(安価④)」と返し、立ち上がると、義経公の手を取った。
「さようなら、我が君、ほんのひと時ではありましたが、貴方の部下になれた事、光栄でした」
「ま、待てい!! まってくれぇ!!」
曹操は慌てふためくが、既に中村の意志は固かった。
義経公に手を引かれた中村は、開いた次元の狭間へと消え去り、共に消えようとしていた義経公は、曹操を嘲るように笑うと、言った。
「貴様にとっての太陽は我が手に落ちた。明日は晴れると思うなよ」
その言葉を最後に、義経公は消えていく。
その姿を愕然とした表情で見送っていた曹操は、やがて我に返ると、叫んだ。
「誰かある!! 出陣の準備をせよ!!!」
時は戦国。ここは乱世。欲しい物があれば、奪う。それが世の常であった。
曹操は知った。
真にほしいものを。
それは軍師という存在であり、あのニンジャ(インキュバス)の心であった。
であれば、我が手に入らぬのであれば、奪い取るのみ。
曹操は稀代の英雄であるが、同時に、所詮、乱世の英雄でもあった。
彼は荒事に頼ることに何の忌避感も無く、馬上の人となったのだ。
後日、大軍の前へと立った彼は、言った。
「FF外から失礼するゾ〜(謝罪)(安価⑤)」
その言葉と共に、互いの時空は繋がりなど、あるはずもなかったというのに、時空の扉が開き、空に裂け目が出来た。
「おぉ……これが、殿の神通力。オーガ族に伝わるという、叫びによって、次元にすら響き渡るという声」
感動する兵達の前で、土下座をしていた曹操は立ち上がり、剣を掲げた。
「我が像を建てるな、いずれ倒される。我が名を冠するな、いずれ変えられる。我が偉業を歴史に記すな、いずれ書き換えられる。我が手法を真似るな、いずれ殺される。我が一族を滅ぼすな、いずれ滅亡する(安価⑥)」
一度も噛むことなく、すらすらとそう述べた曹操の姿は、神々しささえあったという。
後光と共に緑色に光るその姿は多くの者の目に写り、そして、記憶へと刻まれた。
像など建てるまでもない。歴史に記す必要もない。手法をまねることなどできない。彼のような偉大なる一族を滅ぼすことなどできるわけがない。
今この時、兵士の、そして民衆の目に、脳に、魂に、その存在が刻まれたのだから。
わざわざ、形として残す必要などあろうものか。
後世の歴史家たちは、この時の資料が一切ない事を悔しがるが、だがしかし、それでいいのだ。
この時、この時代の人間が感じた感動は、この場にいた人々のものであり、誰にも奪われてはいけないものなのだから。
「やっぱり推しはおせるときに推さないとね(安価7)」
曹操は、自信を拝むようにする兵へ、民衆へ、そう言って笑いかける。
皆、その場にいた人々は、その緑色に輝き、鋭くとがった牙で笑う小柄なオーガの姿に魅入られ、生涯の推しとすることを心に決めたのであった。
「行くぞ、皆の者!! 我等の遠征はこれからぞ!! 彼の義経公を名乗る女狐などに、我が至宝を奪われたままにしてなるものか!! 我が太陽は、我が元へ!! あの女の明日が、晴れることはないであろう!!」
曹操はそう叫び、我先と、その次元の狭間へと飛び込んで行った。
「義経公!! 貴様のほうこそ、明日は晴れると思うなよ!!」
~Fin~