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ククツミの軌跡《2》【交流創作企画#ガーデン・ドール】

アテンション

先にこっち。

《1》~《3》は、上記の《0》を読んだうえで「続きが気になった人」向け。
《2》は《1》を読んでから。
これまでの物語も長いからのんびり読んでいってね。
以下のアテンションは《0》と同様。

・ガーデン・ドールの世界は血なまぐさいゴア表現もあるよ
・ドールは死なないけど、『死』に類した表現もあるよ
・進めば進むほどネタバレが増えていくよ
・ククツミ軸でまとめてるから他のドールの軌跡は追いきれないよ
・企画者のトロメニカさんが作る世界は、基本的に『この世界に救いは無い』だよ

《1》を読んだ人の感想
「まだ受難が続くんですか?」
(続きます)


【ドール一覧】(2024/9/5現在)

いつもの一覧表と、作品タグの紹介。
X(旧Twitter)やnoteは#ガーデン・ドール作品
YouTubeは#ガーデンドール作品で検索検索ぅ

新規参加者募集の再開時期は未定だよ!

【ククツミの軌跡、続き】

軌跡《1》に書いた内容はみんなもう見たよね?ネタバレありで進めるよ!

ということで。

《1》を読み終えてここまで来てくださった方々、本当にありがとうございます。
長い道のりだったことでしょう。

おそらく皆さまは今、とても頭を抱えていると思われます。
だって、あの終わりからの続きですよ?








ここで皆さまに朗報です。
ククツミの物語は『ハッピーエンド』です!!!!!


「ここから入れる保険があるんですか?!」

あります。
茨の道でしたが勝ち取りました。

ただし

ククツミの受難はまだまだ続きます。


気を引き締めて、お覚悟くださいね。




さてさて。
あの日を終えて、ククツミはいったいどんな人格になったのでしょうか。

見た目は変わらないよ!

ドールの名前:ククツミ
性別:女性
年齢:17歳
一人称:私(わたくし)
口調:丁寧語、ですます口調
性格:キミは心配性で不安がちであり、自分で決断することに自信がない性格です。
優しい性格は変わりませんが常におどおどとしており、他者の目が気になっています。
自分が何をするにも不安に思ってしまうため、誰かに確認しなければ気が気でなりません。

好きなことは料理で以前と変わりませんが、お菓子作りのほうに興味があります。
苦手なものはガラスを引っ掻くような高い音です。
飼育委員と映写部はそのまま続けています。
コッペやバンクとの主従関係は今まで通りですが、映写画を撮ることに関しては特に興味がありません。

好きだったものが、
そこまで好きじゃなくなってたり。

つまり

とても臆病で、か弱い小動物

みたいな性格になりました。
おどおどしていて、怖がりで、誰かの陰に隠れて過ごしたい、不安症。

とても分かりやすい変化としては

丁寧な言葉遣いで、自身のことをわたくしと。
シャロンくんのことをシャロンさんと。

呼んでいることでしょうか。

あぁ、私(わたくし)は。
私(わたくし)は、昨日。何をしていたのでしょうか。

《中略》

あら。
それは、本当に。
私(わたくし)の言葉として、だったのでしょうか。
いえ、記録としては私(わたくし)の言葉です。

ですが。
あら。
どうしましょう。

あの時の私(わたくし)は、何を思っていたのでしょうか。

“ガーデン・○○でも○○ gardenでもGarden ○○でもないのは、なんでだろうね?”


私(わたくし)ククツミにとって、私(わたし)という過去の事象は覚えてはいるものの、その時の感情が理解できない『記録』となっています。

感じ取れない過去の記録であっても自身にとって大切なものだと認識していますが、それゆえにククツミは『過去の私(わたし)』を模倣し、縋ることを選んでしまいました。

「記録の通りに動けば、幸せだろうと。
過去を見返した私(わたくし)が嬉しいと思った記録に、縋ろうと」

断絶された、けれど大切だと思える過去。
それを『道標』にしてしまうククツミ。

「私(わたくし)は……過去の記録から私(わたくし)を形成しようとすると……私(わたし)に、なってしまうのです」

「おかしいですね。何故でしょう。何故でしょうか。
何故、私(わたくし)は……私(わたくし)を、信用できないのでしょうか。不安なのでしょうか。
私(わたくし)は……私(わたくし)は……」

そうか……この子は、この子なのに。
ボクの知っている"ククツミさん"ではなくても。

この子は……この子も、ククツミなのに。

……ボクは、どうしたらいいんだろう。

この世界に生まれたばかりのこの子は、まだ……
この子としての、記録が、記憶が、ないから。

自分の中に、自分を信用できるものが
何もないから。

昨日の記憶があれば、昨日のククツミがしたことを覚えていれば、こうはならなかったことでしょう。

シャロンくんは自分がしてしまった事の重大さを目の当たりにし、その罪の重さを感じながらも、真実を伝えられないまま今のククツミと接するようになります。

いうなれば、

『手をかけてしまった友人のフリをして過ごすアンドロイド』と接していかなければならない

と例えられるでしょうか。
いったい誰がこんな酷いシナリオを考えついたのでしょうね?

⏳「もうツミハさんのことはツミハさんと呼びません、白い悪魔って呼びます」
☘️「‪(   ॑꒳ ॑   )?」

やっぱり手先が器用なのは“ククツミさん”と変わらなくて、ボクよりも手際良く糸を輪っかに巻いていく。

「この色が良いでしょうか……それとも……」
真剣に、そして楽しそうに色合いを考えるきみに、ボクは。

「なんだか。今のきみは、ククツミちゃん、って呼びたいな」
そんな言葉が、こぼれていた。

「……私(わたくし)を、ですか?」
「うん。……きみを」

せめて、きみを……そう呼ばせてほしい。

あたらめて、まとめると。

前のククツミ→ククツミさん(わたし呼び)
今のククツミ→ククツミちゃん(わたくし呼び)
になりました。

そしてククツミちゃんはククツミさんのフリをして過ごすことを選びました。

それは、ククツミさんの記録を『道標』として選んでしまったから。

過去に奪われた大切なものを取り戻し、自分で道標を作り出し『未来を歩き始める』シャロンくんと。
大切な昨日の記憶を無くし、過去の自分を道標として縋り『過去に囚われる』ククツミと。

なんの因果か、正反対になってしまいました。

自己を形成するものが何もない、生まれたばかりの、か弱い人格は。
他者(過去の自分)の模倣という殻を纏って生きることを、選んでしまいました。



それでも。

約束は、何度でも。

『忘れてたら、叱ってね』

俺はその言葉を記憶おぼえている。
だから伝える。

「お前が忘れても、俺は憶えてる」
「だから、何度忘れても、何度お前が」
「俺の知ってるククツミじゃ…なくなっても、伝えてやる」

「これは、…俺の我儘だ」


ここで一度、リラさんの紹介を挟みましょう。

サムネと目つきが違う?それは追々。

名前:リラ
性別:女の子
年齢:18歳
一人称:私
クラス:クラスコード・イエロー
性格:キミは世話好きで笑顔を絶やさない性格のドールです。
人と話すのが好きで、困っている人を見かけたら放っておけません。
勉強は苦手ですが、興味のあることや誰かが知りたがっていること等を調べたりするのは得意です。
何かとぽんこつで、よく転んで小さな怪我をします。

自分より他ドールに価値があると思っているため、自分を犠牲にすることに迷いがありません。
来る者拒まず去るもの追わずで、先頭に立つより誰かの後ろで支えるタイプです。
苦手なものは狭い場所です。
キミは図書委員に入っていて、図書室の鍵を持ち出す許可が出ています。

ククツミよりもひとつ年上だよ。

リラさんは2期生のドールであり、ちょっと抜けているところもありますが、とても心優しい性格です。
面倒見が良く他者の機微によく気づき、献身的に誰かをサポートする彼女ですが。

ククツミと近しい、赤に塗れた『欠けたもの』がありました。
そのことを思い出した時、彼女の中にとある『感情』が生まれます。

最初はあやふやでしたが、後にリラさんの別人格となる◾️◾️という存在です。

自分の中の何かが“満たされる”感覚。
それと同時に分かる“足りない”感覚。

「……おれの、たいせつなもの」


ただの感情であった『彼』は、とあることや様々な交流で完全な人格を保ち、リラさんとは別の思考をするようになります。
とはいえ同じ『リラ』であるため、主人格と身体の主導権に折り合いをつけながら過ごしていきました。

時には、彼女は他者に贈り物をし。
時に、彼は彼女のために肩代わりをし。

「お前は、俺が護るよ」

ひとりはふたりになった。

https://note.com/gori_zomco/n/nad23c0a270fb

こうして、リラの中に『リラさん』と『彼』が混在する状態となりました。
いわゆる二重人格、というものでしょう。

そのことに唯一気がついて、彼に声をかけたのはククツミでした。
他のドールは、なんとなくいつもと雰囲気が違うと認識はしていましたが、深く聞くこともなく『リラさん』と思って過ごします。

ククツミは、似たような『欠けたもの』から生まれたにシンパシーを感じていました。

彼は『衝動』です。

彼は『感情』です。

けれど、それがたったひとつ、唯一の『◾️◾️』であることを、リラさん以外に知ったのはククツミだけでした。

「まぁ、今後俺になるのか、ワタシのままなのか、それともまた違う何かになるのか…
それにいち早く気付くのは、お前だろうな、とは思ってるよ」

「……ふふ、信頼されてるようで何よりだよ。
……ね。名前、あるの?」

「………◾️◾️、安直だろ?」

「…リラ以外に初めて伝えた」

けれど◾️◾️は、ただの感情です。

◾️◾️が護りたいと願う『リラさん』は、とあるドールのことが好きになりました。そのドールも、リラさんのことを想うようになりました。

『護りたい』という感情は、護りたい対象が『大切なドールを選んだ時』に役割を終え、存在を終えてしまうということを、よく理解していました。
護るという役割は、リラさんが選んだ大切なドールの役目になるのですから。

彼は、自身が消える定めであるということに不満はありませんでした。
そのための感情だったと。それまでのための衝動だったと。

けれど。
彼は。

似たもの同士』を見つけてしまって。

俺の役割存在する理由】を、望んで。

それが、ただの衝動で。我儘で。

それが、ただ「救いたかったから」だなんて。
本当にぶっきらぼうな、おひとよしですね。

思わず、途切れそうになる。
でもこれは、伝えると決めた言葉。
リラが何を思おうとも、何を言おうとも、これは俺の言葉。

「お前が、今後…全部、何もかも、すべてに耐えられなくなったら…俺のところに来て俺を呼べ」

これは誰にもさせない。
させたくない。
俺の我儘。

「俺が、お前を終わらせてやる」

「……きみは。そこに、居てくれるんだね」

ククツミがなんであれ、どうであれ、どう変わったとて、『欠けたもの』は変わりません。

凄惨な赤で塗り潰された『欠けたもの』はククツミにとっての衝動であり、どれほど親友が支えても、恋人が抱きしめても、消すことのできない唯一の感情殺人衝動です。

同じ衝動から生まれた彼は、ククツミが内に秘める感情を理解した上で約束を口にしました。

ククツミがこれまで何度も傷つけられ、奪われ、痛みに心を壊されたことを、知っていて。

例えば。いつかククツミが衝動を選ぶための場所に、◾️◾️は居てくれるのだと。
そこで、待っていてくれるのだと。

「……あはは。わたしたち、本当に。似たもの同士だ」

その言葉は、正真正銘俺たちの存在した証いきたあかし

消えゆく定めの感情と、
消えてしまったわたしの約束。

その約束は、救いであって、傲慢であって、身勝手であって、ただの我儘であって。

それでも、◾️◾️は。
この約束に、文字通り存在をかけると。
そう、約束してくれました。


それは、ククツミが変わっても同じで。

俺とおまえは約束する。
お前がお前ではない者になったとしても。

ついでにあいつの頭に手をおいて、釘を刺す。

「……俺が言える立場じゃないかも知れねぇけど、………一番はダメになっちまう前に吐き出すことだ」
「ま、駄目になりそうで、お前の相棒にも言えなさそうなら」

がしがしと乱雑に頭を撫でて

「俺を捌け口にするといい」

そう伝えて離した。
乱れた髪のまま、すこしぽかんとしたあと。
誰かの模倣ではない、自身の感情のままに笑って

からころ、と。音を立てるように。


◾️◾️は、ククツミを暴き。

ククツミと違う、ククツミを見つけて。

ククツミを、『似たもの同士』と繫ぎとめて。

安心できるようにと、笑って。

ククツミちゃんという『存在』を見つけてくれたのは、リラさんと◾️◾️でした。



ククツミちゃんが目を覚ましてから、数週間。

『ククツミさんの模倣』は、完璧と言えるものでした。
けれどやはり、その中にも『ククツミちゃんなりの行動』があり、それが少しずつ積み重なっていくことで、ククツミちゃんという人格が形成されていきます。

例えば、いたずら心よりも相手を心配する気持ちがの方が勝ったり。

ごめんね、"ククツミさん"。
忘れるわけじゃない。
忘れるわけがない。

だけど、少しの間だけ。
今のきみと向き合うために。

きっと、これから作るククツミとの思い出にも、きみはいる。

だから少しだけ、改めてさよならだ。

「…………またね」

https://youtu.be/F7efnrJhzsY?si=-siL0Cq31PIZmfVR


例えば、満月と十六夜のような関係であったり。

「もちろん、あたたかさもあったよ、“ククツミさん”にも。
ククツミちゃんにだって、きみにしかないあたたかさが。
……そして、今のきみには、"ククツミ"としてのあたたかさもあるんだ」

ゆっくりと、ボクは抱きしめる。

まだ生まれて間もない、小さな命を。

「まだ、ククツミちゃんが気づくのは……難しいかもしれないけど。ちゃんと。
……ちゃんと、ここにあるよ」

この鼓動に。
このコアに。
ちゃんと、あるんだ。

きみはもう少しワガママになりなよ、なんて。
満月に送った言葉を、もう一度。

「……きみも、もう少しワガママになっていいんだよ」

どちらも、夜道を照らすひかり。


例えば、アイススケートが好きになったり。

ひとつ、ふたつ、みっつと。
ククツミちゃんだけの『好きなもの』が増えていきます。

ククツミの慌てる姿を見て、ヤクノジは楽しそうに笑う。

「そ、それは……好き、かもです、けど……その……」

ククツミは急な来訪に驚いたせいで、とある行動を忘れていたことに気づいてしまった。
そのまま言い淀み、目を逸らそうとする。

しかしヤクノジは、自分の口元に立てた人差し指を添えて、何処か悪戯っぽく笑ってみせた。

「……こう見えて、俺は口が硬いんだぜ?
他に見てるやつもいないし、今くらい気を抜いて何してもいいだろ。
風紀委員が言うのもおかしい話だけど……俺は不真面目風紀委員なんでな」

フリをし損ねたククツミちゃんに
悪戯な笑顔を向けるヤクノジくん。

ククツミの軌跡《2》ですが、ククツミちゃん含めた登場キャラクターの説明が大半を占めて6000字を超えてしまいそうです。
そのため、ある程度進んだら《2.5》に分けたいと思っております。

まずはククツミちゃんと、その物語に今後深く関わる方々の紹介をさせてくださいまし。

こちらがヤクノジくん。
リラさん、◾️◾️、シャロンくんと同じく、今後とある『選択』にて重要な立ち位置となる、外見や中身も含めてイケメンで格好良いドールです。

ブルークラスは羽がついてるよ。飛ぶことはできないよ。

名前:ヤクノジ
性別:男
年齢:18歳
一人称:俺
クラスコード:ブルー
性格:キミは全体的にさっぱりした兄貴肌なドールです。
どこか諦めたようなところがあり、終わり良ければ全て良しという考え方をしています。
年下から何かを頼まれると断れない傾向があります。
好きなものは無害なものとコーヒーです。
嫌いなものは面倒事や何かしらの制限されることです。

木陰に座って花壇を眺めながらぼんやりと過ごす時間を好みます。
他ドールに危険が及ぶ事態が起きた場合は仲間を守るため自ら動きます。
キミは風紀委員で、朝は昇降口で生徒の身だしなみをチェックします。

所作のひとつひとつがかっこいいんだこれが。

ヤクノジくんは4期生、10月のハロウィンイベントあたりにやってきました。

持ち主の厄草屋さんはしらさやツミハの旧知の仲であり、こちらは厄草屋さんがガーデン・ドールに参加してくれるのを序盤から今か今かと待ち望んでいたのは秘密です。
とっても素敵な文字を綴るお方ですし、とっても素敵なイラストも描けるのですよ。

ヤクノジくんは面倒見は良いけれどどこか達観している、しかし決して他者を無碍にせず、自分なりの精一杯を返す仲間思いな兄貴肌です。

ククツミと出会ったのはカボチャゴーストを騎馬戦で退治したあたりから。
映写魔道具に興味を持ったヤクノジくんは、映写部の体験入部をしたりしました。

その後正式に入部したり、vsイベントでも交流したり。

そして彼は、リラさんの想い人であり。
彼も、リラさんのことが好きになりました。

きっかけになったのか分からないけれど、ひとつの気づきがあったのは迷子捜索のこと。

シャロンくんの迷子事件は、ククツミ以外の誰もが、(なんなら寮にいる活動的なドールのほぼ全員が)手を貸す大捜索となっていました。

from:ククツミの持ち主
to:全てのドールの持ち主の方々へ

【募集】
シャロンがガーデンに帰ってこないため、1/29(月)想定で捜索に参加してくれるメンバーを募集します。

各々のキャラクターがしたいことを提案してもらって、こちらが整合性をとれるようにまとめている形です。
それらを踏まえて「自分のキャラクターはシャロンに対してこういう行動をしたいと思っている!」と声をあげてくれる方々を募集します。

シャロンの行動は、今までシャロンがガーデンでたくさん、たくさん動いて抗って、まっすぐ進んだ結果です。そのシャロンに対して、どうかみなさま。何かをしたいと、思っていただけませんか。

この募集に、ぽんぽんと手が上がり、
一大イベントとなりました。すごかったね。

ククツミは冬エリア、秋エリアを探しましたが、箱庭はとても広いです。

リラさんは、夏エリア付近を。
ヤクノジくんは寮に残り、全員の動向を把握し伝達する司令塔を。

行方が分からなくなった仲間を探し、ガーデン全体に緊張が走っていた日の夕暮れ。

無事に発見した知らせに、自分の傍で良かったとボロボロ涙を流すドールがいた。
以前自分に栞をプレゼントしてくれたリラである。

その涙が此方の緊張感も溶かすようで、そんな状況でもないのに口元に笑みが浮かんだ。
余程安堵したのか腕にしがみついて泣く姿に、泣くのが下手な自分の分も泣いてもらっているようだった。

素直に泣くのは、難しい。
だからこそ、泣いてくれるのは有り難かった。

ちいさくほころぶ、花の色は。

ここからじんわりと、けれどしっかりとリラさんとヤクノジくんの仲は深まっていきます。

慣れない作業ということもあり本当に刃を収めるという機能しかないが、鞘というのはそれさえ出来ていればいい。

切るものに縁の遠い、結ぶもので飾られていたから不吉なのだ。
それを意図たっぷりに渡されてしまえば、心が揺らぐのは普通のことだろう。

物に対してもスパダリ対応なヤクノジくんは
必見だよ!ぜひ見てね!


ヤクノジくんの同期にはシキというドールも居ます。
ドール一覧を見ていただければ。
そして、《1》から出ているククツミの恋人、×××とも同期でした。

リラさんは、ククツミに。
ヤクノジくんは、×××に。

恋愛相談をして、ふたりは自覚をしました。
自分が抱える感情の、名前を知りました。



※ストーリーの重要要素、最終ミッションのネタバレを含みます。また、グロテスク表現も含みます。







そして、ふたりが選んだことは。
これもまぁ、いわゆるひとつのエンゲージ。

「私の小さな幸福はこにわの中で、一等傷付けたくなくて、誰にも渡したくない、あなたに」
「欠けたもののためじゃない。あなたに求められたから………私もあなたが欲しいと願うから」

最高の誓いの言葉だよね、これ。

ふたりにとって、『欠けたもの』は特に心惹かれるものではありませんでした。

けれど、ふたりはこの道を選びます。

大切な互いを求めて、大切な誓いを果たします。

意識が消えるその前に、美しいものを見ることが出来て良かったと。

心の底から、思った。

雪が降る。
雪が降り積もる。

白い世界に赤い花ひとつ。
秘密基地で密やかに笑う二人が咲かせた赤い花。
誰もいない校舎の屋上で、二人が咲かせた赤い花。

雪の季節に始まった二人の淡い恋は。
季節の終わりを告げるように。
美しい花を、咲かせた。

ケーキ入刀、エンゲージ交換。
こんなにも美しい赤色が、この世界にあるなんてね。










さて。

ククツミは、というと。

フリをすることの精神的ストレスが限界を迎え、ククツミさんの模倣ができなくなり、ククツミちゃんとしての言動を行うようになりました。

けれどそれまでにシャロンくんやリラさん、◾️◾️、ヤクノジくん、ロベルトくんたちと自分なりに過ごせていたため、かなり自分らしさや自己形成の意識が進み、落ち着いて過ごせるようになっています。

「きみはククツミであって、そしてきみはきみだよ」と何度も伝えてくれる親友に。

模倣を知りながら、それでも過ごしやすいようにと手を差し伸べてくれる優しさに。

模倣を暴き、しかし「お前がしたいことをしろ」と背中を押す似たもの同士に。

今までと違う自分の『好き』を受け入れ、それを綺麗だと笑う不真面目な風紀委員に。

たとえ変わってしまっても、先輩は先輩だと、自分がそう呼びたいから呼ぶと宣言する後輩に。


だから、ククツミちゃんは。

ひとつ決意し、行動することにしました。





ククツミちゃんの望みは、とても小さな小さな願いでした。

わたくしを見つけてほしい」

それだけでした。

ククツミさんのフリをして、ククツミさんではない部分を見つけてほしい。

それがククツミちゃんにとって初めての『自己を形成するなにか』になるから。

好きなこと、苦手なこと。
同じこと、違うこと。

自己紹介の文章を読めば、ククツミさんとククツミちゃんの違いは一目瞭然でしょう。

けれど、やはりどちらも『ククツミ』です。
同じであって、違っていて、同一である存在。
リラさんと◾️◾️の関係性とも違うもの。

だからこそ、どこまでが、どこからがどちらであるのかという境界が難しい。
そもそも境界なんてなくて、どちらもククツミでありながら。

どちらもそれぞれ、誰かにとって大切なドールです。

だからこそ、ククツミちゃんは。

×××さんは、私(わたくし)のことを見てくださるでしょうか。

私(わたし)と違う、私(わたくし)の好きなもの、苦手なものに興味を持ってくださるでしょうか。

私(わたくし)のことを知ろうと、愛そうとしてくださるでしょうか。

ククツミとして、でも、私(わたし)でもなく。

私(わたくし)という存在を。

好きになろうとしていただけるでしょうか。

ひとつの、願い。



そして。

ククツミちゃんは。

大切にしてほしいと、願っていた×××に。










とてもひどい方法で傷つけられ、
とてもひどい方法で、最終ミッションを達成させられました。










※とてつもなくえげつないゴアもあるし、精神的にもとてもしんどいよ。
※最終ミッションのネタバレもあるよ。

下スクロールしたところに結果だけ書いておくので本文がしんどい人はまるっと飛ばしてね!






結論。
×××はククツミちゃんを見ていませんでした。
そもそもククツミさんすら見ていたのかも定かではありません。

×××は『×××が愛するククツミ』というガワだけを見ていました。
その愛は、ククツミちゃんにとって到底受け取ることのできないものでした。
それは、自分を見ていないのですから。
『ククツミ』すら見ていないのですから。

その愛を拒絶したククツミちゃんを、×××は凄惨な形で心を傷つけ、人格コアを奪って最終ミッションを達成し、そして意識を失ったククツミちゃんにも無理やり最終ミッションを達成させます。

最終ミッション達成後の選択肢で、×××は「相手の人格コアを復元する」という報酬を選びました。
だって『×××が愛するククツミの中身』なんて、どれでも良いのですから。

しかし、×××はガーデンにより即時『廃棄処分』となります。
(こちらは×××の持ち主の意向(企画辞退の提案)によるものですので、運営に強制されたわけではありません)

これまでの物語も事前の相談の上、運営、持ち主両者共に首肯済みであるためご安心ください。


そして忘れてはならない事項がひとつ。

『コアを破壊されたドールは、その日の記憶を全て失います』

ということ。


つまりククツミちゃんは、明日。

恋人がいつの間にか廃棄処分となっていて。
自分がいつの間にか最終ミッション達成済みになっていて。
昨日の記憶が、全て無くて。

ククツミちゃんのまま、目を覚まします。


なにが凄いってこれ、決行した日がヤクノジくんとリラさんのエンゲージ交換と、日付も時刻も被りました。
事前打ち合わせはしていないです。
ほんとですよ。

ガーデン・ドール参加者にも読者にも「温度差で風邪をひく、情緒が狂う」と言われました。
なぜでしょうね。

投稿したタイミングで参加者の方々とボイスチャットを繋げていたのですが、読み進むたびに皆さまから「おぁ……」「ひぃ……」「あ、あぁ……」って声にならない悲鳴が聞こえてきました。
なぜでしょうね???


そして。

ヤクノジとリラが結ばれたということは。

終わりを迎えた◾️◾️は、どうなってしまったのでしょうね。




軌跡《0》からここまで読んできた皆様ならお気づきかと思われます。
そろそろ一区切りの予感だと。

なんと、この軌跡《2》は10800文字を超えてしまいました。
びっくりだね。

ククツミの人格は変わりません。
しかし『欠けたもの』を思い出したり、その代わりのように『昨日の記憶』をなくしてしまったりと、ククツミの傷はもっと増えています。

そして、ククツミの受難はまだ続くのです。

最終的にハッピーエンドにはなりますよ、それは保証いたします。
けれど軌跡《3》まで、まだまだ長い道のりが待っています。

それでも、ククツミの物語を今後も見ていただけるのであれば。

次の軌跡《2.5》を、心待ちにしていただければ。

そしてこれからも、ククツミの物語をどうぞよろしくお願いいたします。

しらさやツミハ



#ガーデン・ドール

【企画運営】
トロメニカ・ブルブロさん



軌跡《2.5》のチラ見せ。

「いやぁ〜〜清々しい朝だなぁ(棒)」

「朝からお手軽にとれる地獄の風景」

「ここに完成されたものがございます(地獄)」

次の日の朝の感想たち。

楽しみだね!(目逸らし)