生きてて良かった。
つい先日の事だ。
2023年11月5日、我らが阪神タイガースが
38年ぶりの日本一を成し遂げた。
大阪生まれ、盆地育ちの私は生粋の阪神ファンである。
2005年のリーグ優勝の時は小学校中学年くらいだった。
縦縞の背番号29とオレンジの背番号19がマウンドにいる時は
試合が早く終わっていたことをよく覚えている。
それから18年の歳月が経ち
悲願の「アレ」もとい、「リーグ優勝」を成し遂げた。
中野がフライを捕球した時
視界が滲んだ。
この瞬間を、阪神ファンはどれ程待ちわびたことか。
もう満足だった。これ以上何を望むのか。
満ち足りていた。
その後CSをストレート勝ちで突破し、日本シリーズに進出。
出来すぎだと、なにか悪いことの前触れではないかと
怖がる自分がいた。
2005年の惨劇。
2014年の後味の悪い終戦。
嫌な記憶ばかり蘇ってくる。
そして始まった日本シリーズ。
第一戦。
8ー0の圧勝劇。
2014年の時と同じだ。
あの時も第一戦は圧勝したのだ。
時代は繰り返されてしまうのだろうか。
それとも今年は、今年こそはやってくれるのか。
勢いそのままに迎えた第二戦。
0ー8の惨敗。
手も足もでなかった。
誰一人として宮城投手を攻略できなかった。
ドローになっただけと、ポジティブに捉える。無理矢理に。
甲子園に帰ればきっとこちらに分があると。
そう信じて挑んだ第三戦。
4ー5の惜敗。
あと一歩が遠かった。いや、先制していたのだ。
守りきれなかった。勝ちきれなかった。
9回平野投手。あまりにもホームベースが遠かった。
次負ければ王手を掛けられる。後がなくなる。
正直、2ー1の時点で後がないような感覚には陥っていた。
正念場、第四戦。
4ー3。虎の主砲のサヨナラ打。
きっと我々阪神ファンが後世に語り継ぐであろう
「湯浅の1球」
まだ分からない。どっちに転ぶのか。
期待よりも不安が大きかったが、それでも
信じ続けるしかないのだ。
今シーズン正真正銘最後の甲子園での試合。
そんな第五戦。
6ー2。奇跡の逆転勝ち。
試合の中で進化を続けていた田嶋投手。
あのまま投げきられていたら、恐らくは完封されていた。
山崎投手も宇田川投手も攻略できたわけではないと
何度見返してもそう感じる。
中野、森下の2エラーで流れは完全にオリックスだった。
きっと野球の神様がここまで頑張ってきた阪神に
僅かなチャンスをくれたのだと思う。
生かすも殺すも本人次第。
そんな綱渡りのようなチャンスを見事モノに出来たからこそ
生まれた逆転劇だったように感じた。
3ー2。王手を掛けた。
第一戦と同じ、エース対決で迎えた第六戦。
村上ならやれるはず。この1戦で決めてくれ。
その願いは無情にも届かなかった。
鮮やかに、華麗に。猛々しくエースが蘇った。
山本由伸、完投勝利。
1ー5。逆王手を掛けられた。
圧巻のピッチング。エースの風格を嫌と言うほど感じた。
泣いても笑っても、次で終わる。
2023年のプロ野球は11月5日を持って幕を閉じる。
開幕投手を務めた青柳で閉幕する。
運命の第七戦。
正直不安はあった。
今年の青柳は初回失点が多く
打線が援護してもすぐに吐き出してしまう印象が強かった。
でも、それは我々ファンよりも
本人が1番苦しんでいることだろう。
「信じ続けるしかないじゃないか」
勇ましく、力強く、気恐ろしくもエースが帰ってきた。
初回からギア全快のピッチング。
エースの意地を嫌と言うほど感じた。
第二戦、手も足もでなかった宮城投手を何とか打ち崩した。
ノイジーの3ランで流れを強引にも手繰り寄せた。
7ー1。島本、伊藤の継投も完璧だった。
38年ぶり、日本一を達成した。
正直始めてのことで実感は湧かなかった。
徐々に徐々に、「日本一になったんだな」と込み上げてきた。
リーグ優勝の時とは違う、現実味のない感覚。
まさに「夢現」と言う言葉がぴったりだった。
この日私は
フラワーカンパニーズの「深夜高速」を聴いた。
真っ先に聴いた。
まさに、そんな夜だった。
今まで人生丸ごと投げ捨てたいと思ったことなんて
何度もある。
それでもこうして、阪神日本一を見届けることができた。
あの時投げ出していたら。
この夜は迎えられていなかっただろう。
本当に、「生きててよかった」
そう思えた夜だった。
またいつか
「生きててよかった」と思える夜を迎えられるよう
これからも全力で阪神を応援していきたい。
私を含め、全国の阪神ファンの皆様
球団関係者の皆様
何より、監督、コーチ、選手の皆様
日本一本当におめでとうございます。
また、日本一の景色を私たちに見せてください。