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晴れて穏やかな日に歩く

小春日和の早春の日。
桜のつぼみは膨らみつつあるけれど、まだまだ黄緑色で、
開花まではもう少しかかりそうだ。

最近の週末はくだんの優しい彼と一緒に過ごす時間が増えた。
お互いに実家で暮らしているため、
どちらかの家で一日中一緒にいる、ということは難しい。
そのため、必然的に外出して、外で過ごすことが多くなる。
最近は外で公園の遊歩道などを歩き回ることが増えた。
というのも、彼は典型的なオジサン体型なのだ。
自転車に乗ったりするし、運動を全くしないというわけでもないのに、
若い頃に比べて食べる量も減ったというのに、
ぽちゃぽちゃっとした質感の、お腹が出ている体型。
色も白くて、色黒の私と並んで歩くと
まるで、大根とごぼうの散歩みたいなのだが、
何とか身長に対しての標準体重に戻してもらおうと、
時間がある時には外に連れ出して歩き回っている。

歩き回っている時に気を付けていることは、
いつもよりもたくさん話をする、ということだ。
風景の事でもいい。
目についたことでもいい。
とにかく何かしら話をしていると、
お互いにだんだん口も滑らかになって来るというものだ。
以前、相手に対する不満をお腹に抱え続けた挙句に
結局爆発して「覆水が盆に返らなかった」経験がある私。
何かを言って不機嫌になられるくらいなら。
何かを言ったところで聞く耳をもってくれないなら。
と、だんだん貝のように口を閉ざし、心も閉ざした自分を思い出す。
相手に何かを言うのが怖い。
不機嫌になられるのが怖い。
言い澱む私に、彼は
「何でも話して欲しい。ちゃんと話して解決しましょう。」
といつも穏やかに言ってくれる。
同僚となって数年が経つが、その間に見てきた彼は、
仕事中も、そうでない時も含めて、不機嫌だったり怒ったりしたところを見たことがない稀有な人だ。
男性と言うと、モラルハラスメント的な人間しか見てこなかった私にとって、こういう穏やかな人もいるのだと、新鮮な感動だ。
私の過去についても、負い目に感じている私に対して
「それだけ生きていたら何かしらあって当然。自分にだってあるのだから。
 それに、以前に結婚していたことがあるというのは、
 それだけ魅力的だからということでしょう。」
と笑ってくれる。

彼はちょっと不器用で、運転もあんまり上手じゃない。
でも、それが何だというのだ。
私だって完璧ではない。
運転は私の方が上手なら私が運転したっていい。
若い頃のように、
「して欲しい」「こうあるべき」と言う関係は不満がたまるだけなのだ。
相手よりも上手に出来る方が補い合って
足して「1」になればいいだけの話なのだ。

この歳になれば、多少、見た目に難があろうが、好みの見た目でなかろうが、中身がものを言う。
(大いに好みから外れていれば、それはまた別の話だが)
これから先の残された時間をともに歩いていくのだ。
実際に手は繋いで歩いてはいないけれど、手を取って穏やかな時間を歩いて行ければいい。







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