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この先を一緒に生きていきたいと言われた日

私の信念として。
もし、死が先にあるような重篤な病に罹ったとして。
その時は痛みや激しい体力の消耗を伴う治療はしたくない。
何も手を施さなければすぐに命がつきますよ、と言われたら
残された時間を燃焼しつくしてサヨナラしたい、と思っている。
最後に見た風景がどこかの天井だったなんて、
まっぴらごめんだからだ。

その話を、くだんの優しい彼に話した。
どうしてその話題になったのかは覚えていないが、
どちらも若くないから、
知り合いや身内の死は何度か経験してきた。
その話のつながりからだっただろうか。
私は
「治療はしない、命が燃え尽きるまで自分らしく生きることが願い」である
と、本当に何気なく思っているがままに話した。
それをその時、彼は黙って聞いていた。
特に表情を変えたようにも見えなかった。

その後、話が途切れてふとお互いに黙った時。
「さっきの話だけど」
と彼が唐突に切り出してきた。
「この先を一緒に生きていきたいと思う。
 だから、もし、病気になった時には元気になるために頑張って欲しい。
 自分もその時は一緒に頑張りたい。」
と静かに言ってくれた。

この先を
一緒に

そんなこと、誰かに言われる日が来るなんて。
そんなこと言われた日にゃ、女冥利に尽きるじゃないか。

誰かに願われてこれから先の時間を一緒に歩いていくこと。
思ってもみなかったことだ。
若い頃はただ今を一緒にいることだけを考えていた。
平均的な人生の折り返しを過ぎた彼と、ちょうど折り返す私。
しっとりと落ち着いてこの先のことを考えられるようになったことを考えると、歳を取ることもそうそう悪くないんじゃないかな、と思う。
彼にもいろいろあったことも
私の過去の出来事も
お互いにお互いの人生を受け止める。
お互いに傘をさしかけられるような時間になったらいい。




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