<代表インタビューvol.1>150年をかけて形成された貿易のカタチをアップデートする
Shippioは、「理想の物流体験を社会に実装する」をミッションに掲げ、日本初のデジタルフォワーダーとして国際物流分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)を牽引しているスタートアップです。創業から9期目に入り、社員数も70名を超えた今、これまで向き合ってきた課題や、今後の事業展開、そして目指している世界について、代表の佐藤へのインタビューを通じて紐解いていきます。
理想の物流体験を社会に実装する
Shippioは2016年に創業した国際物流DXを推進するスタートアップです。島国である日本において輸出入あるいは貿易は欠かせません。にも関わらずこの領域に山積する課題解決にデジタルで切り込むスタートアップは2016年の創業当時、ほぼありませんでした。
貿易は複数の国をまたぐ取引です。倉庫会社や海上輸送、航空輸送、陸上輸送を担う各企業や通関事業者などステークホルダーが非常に多い。これらのバランスを考慮しつつ業界の商習慣に照らした対応が求められるなど、非常に難易度の高い領域です。
しかもこの業界は重厚長大そのもの。アナログな世界が根強く残っており、イノベーションが起きにくい産業の一つです。だからこそDXを推し進めれば社会貢献のインパクトも大きい。挑戦しがいのある領域です。
Shippioのミッション「理想の物流体験を社会に実装する」は物流業界をテクノロジーの力でアップデートし、世の中に再実装しようという想いから生まれました。特に「実装する」が重要で、実際にその仕組みが使われている状況を作り切るまでを目指しています。
Shippioの提供サービスは3つあります。1つ目は『デジタルフォワーディング』です。輸出入に伴う各種オペレーション実務と自社開発のクラウドサービスをセットで提供するサービスです。Shippioは第一種・第二種の貨物利用運送事業者免許(*)を取得しておりフォワーディング実務も提供しています。Shippioのクラウドサービスでは見積発注、本船動静トラッキング、案件ごとの進捗管理、チャット機能等を提供し、お客様の貿易業務の効率化を実現します。フォワーディングとクラウドサービスをワンストップで提供している点が大きな特徴であり、Shippioは「日本初」のデジタルフォワーダーです。
(*貨物利用運送事業について)
2つ目は『Any Cargo』というSaaSサービス。『デジタルフォワーディング』からクラウドサービスのみを切り出しご提供しています。荷主企業様は、Shippio以外のフォワーダーを起用する案件でもAny Cargo上で一元管理が可能となります。
そして3つ目は2024年9月に開始した新たなサービスで、国際物流事業者向けのコミュニケーションプラットフォーム「Shippio Works(シッピオ ワークス)」です。
(*Shippio Worksについて)
理想の物流体験の先にある「貿易プラットフォーム」
ここまでは、現在展開している国際物流サービスについて説明してきましたが、我々が作ろうとしているのは、「貿易プラットフォーム」です。
それを語る上で、まずは貿易の定義から説明したいと思いますが、貿易とは元々「商流」「物流」「金流」の3つの要素で構成されています。
「商流」とはいわゆる物の売り買いを指し、「物流」は読んで字の如く物の流れです。そして「金流」とは「物の動きに紐づくお金の流れ」のことです。
この3つの“流れ”に、AIやDX推進によって新たに加わると言われているのが「情報の流れ」です。
近代貿易の要となる「商流」「物流」「金流」に「情報の流れ」が追加された世界はどのようになるのか。
我々は、この世界の理想を描き、実現していこうとしています。
では、理想を実現するために作る「貿易プラットフォーム」とはどのようなものか。
4つの“流れ”に対してテクノロジーを活用することで、今まで以上になめらかにつながっていくようなものを想定しています。
簡単に整理すると、貿易(特に物流)に関する業務のデジタル化を行い、そこで得られる情報を活用した戦略的な業務の支援(サプライチェーンや物流コストの最適化)を行う。最終的には代金決済もこのプラットフォームで行えるような世界観を実現したいと思っています。
まず前提として、貿易に関わる全てのステークホルダー(製造業や商社などの荷主、通関事業者、フォワーダー、税関、船会社/航空会社、配送会社など)が、Shippioの貿易プラットフォームを活用し、貿易に関わる全ての業務がこの上で行われている状態を作りたいと思っています。
貿易に関わるすべてのステークホルダーが1日中Shippioを通して仕事をしている世界
貿易に関わる全てのステークホルダーが、朝Shippioを開いて業務を開始。関係者から届いているメッセージを確認して返信したり、現在の貨物の所在・ステータスをみて、必要に応じてShippio上でそのままメッセージを送ったり書類をやり取りしたりする。
皆さんが普段、Googleを開いてカレンダーで一日のスケジュールを確認したり、メールを確認したり、書類やプレゼンテーション資料を作ったり、それを共有してレビューをしてもらったり。
そんな風に、Shippioの貿易プラットフォーム上で仕事が行われているような状態をイメージしています。
これまで国際物流に関わるステークホルダー間のコミュニケーションや情報のやりとりは、電話やメール、FAXだったので、データが構造化されていませんでした。しかし、Shippioのプラットフォーム上で業務が行われると、データとして蓄積されていきますので、ここをソフトウェアで読み取れるようにします。
さらにこのデータを荷主の基幹システムと連携させることで、いつでも取り出せる状態にする。どの船会社が当初の予定どおりに貨物を運べているか、どの船会社が全体のコスト増に対してどんなアプローチをしているか。
データが貯まることで、荷主は一目瞭然でデータを分析し管理できるようになります。これも荷主のUXに磨きをかけてくれます。データが増えれば増えるほど、使い続けてもらえるようになるという仕組みです。
(参考:Shippio APIについて)
図にするとこんなイメージです。
ここまで書いてきた内容は、現在提供しているサービスを磨いていくことによって実現していきます。
さらにその先に、「金流」に対するサービスへの展開を見据えています。貿易に必要不可欠な金融領域のサービスをShippioのプラットフォームで行えるようにしていきたいと考えています。
背景にあるのはこの業界のファイナンスニーズの大きさです。国際物流は発注から納品までのリードタイムが長くなりがちで、商品発送から入金までの期間が長くなります。この運転資金ギャップは荷主だけではなく、国際貨物を取り扱う物流事業者も輸送における費用等の支払いにより、キャッシュフローが悪化しやすい構造になっています。これらのギャップを解消し、産業全体のキャッシュフローを良くしたい。
Shippioのプラットフォーム上では、物の流れがスムーズになり、データの可視化・活用が進み、資金繰りも楽になる。
ここまで来ると、顧客にとっては貿易を行う上でなくてはならない存在になれると考えています。
ITスタートアップでありながら物流の実業を提供しているという独自性
このプラットフォームを作っていく上での当社の独自性は、プラットフォームを作ろうとしているITスタートアップでありながら、フォワーディング実務を提供する物流ドメインのプレイヤーでもあるというところです。
先ほどもご説明した通り、『デジタルフォワーディング』というサービスでは私たち自身がフォワーダーとして物流サービスを提供しています。また、2022年にM&Aでグループ会社になった協和海運は、通関サービスを提供する事業者です。
(*協和海運のM&Aについて)
自分たち自身が実業で経験したこともヒントに最適なDXサービスを開発していく。そして、それを他の物流事業者にもベストプラクティスとして展開しています。
つまり物流ドメインのプレイヤーである自分たちが「使いたい」と思える貿易プラットフォームを、自分たちで作っているということです。
この部分は、プラットフォームやSaaSのみを提供している存在とは一線を画すのでは無いでしょうか。
貿易DXではなく貿易IX
最近ではDXからさらに概念を発展させて「IX(Industry Transformation)」という概念が提唱されています。
業務や個別の事業を変革させていくことに留まらず、産業そのものを変革させていくというものです。
お話してきたようなサービスの方向性や実現したい世界観は、現在の国際物流や貿易というドメインをまさにIXしていく取り組みです。
我々の向き合っている「貿易」という産業は、非常にスケールが大きい。そのため、DXでは尺が合いません。産業そのものを全く新しいレベルで大きく転換する。産業の転換点をつくる、とはこの発想からきています。
近代史において貿易が始まったのは1859年と言われています。1858年に米国と締結した日米修好通商条約を皮切りに、オランダ・ロシア・イギリス・フランスとも通商条約を結び、横浜・長崎・箱館の3つの港での貿易が始まりました。150年以上続く歴史の中で、現在の貿易のあり方は形作られてきました。
「昨日と同じように、今日も物が届く。」これは先人の弛まぬ努力の結晶です。この当たり前に敬意を払いながら、新しい当たり前を作っていく。産業のあり方そのものを自分たちで定義し、実現していく。
150年で出来上がった当たり前を、私たちがアップデートしていきたいと考えています。
でも、このビジョンに対する挑戦はまだまだ始まったばかり。足元でコツコツとやるべきことは山ほどあります。
そして、Shippioはまだ70名前後の小さな組織です。つまりどれほどのチャンスが埋まっているか?想像してみてほしいと思います。
ー Vol.2では、創業からこれまでを振り返りながら、どんな会社にしていきたいのか、どんな人と一緒に働きたいのかについて深掘りしていきます。
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