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医療介入(医原性)が母子関係に与える影響 〜母親になるプロセスを大切に〜
赤ちゃんを迎えるとき、お母さんにとっても赤ちゃんにとっても、出産は人生の大きな節目です。そして現代医学は、この出産をより安全で負担の少ないものにするために多くの選択肢を提供してくれます。無痛分娩や帝王切開は、その素晴らしい例です。しかし、その一方で、こうした「医原性」の介入が、母子関係や母性の形成にどのような影響を与えるのかについても、考える必要があります。
赤ちゃんと距離を取るお母さんとの出会い
先日、30代後半の新米ママさんとお話する機会がありました。生後1か月の赤ちゃんを持つそのお母さんは、「赤ちゃんが隣にいると眠れない」「寝不足が辛い」と話されていました。完全計画無痛分娩で出産され、母乳育児をやめ、夫に赤ちゃんを任せて別室で眠ることを選択されているとのことです。
「赤ちゃんとすぐ隣に一緒にいたいという気持ちはありませんか?」と尋ねると、「隣にいると落ち着かなくて眠れないから、いないほうがいい」とおっしゃいました。そのお言葉に、少し驚きを感じると同時に、こうした現代的な育児スタイルが「医原性」と関係している可能性を考えさせられました。
出産のプロセスが母性に与える影響
動物の世界では、母性や育児行動は出産時のホルモン分泌によって引き出されます。例えば、猫やウサギは、出産時のホルモンが不足していると、子どもを放置したり育児を放棄することがあります。これと同じように、人間の母親も出産時のホルモン(オキシトシンなど)が愛着形成や母性を育む重要な役割を果たします。
無痛分娩や計画分娩、そして帝王切開のような医学的介入は、お母さんの体に負担を減らし、安全な出産を実現するための素晴らしい方法です。しかし、こうした介入が自然なホルモン分泌を抑えることがある点は見逃せません。その結果、母性の芽生えや赤ちゃんとの愛着形成が自然に進まないケースが生まれることがあります。
私自身の経験から
私自身も、母との関係において、心理的な距離を感じたことがあります。私の母は妊娠中に劇痛の腹痛を経験し、理解しないまま緊急帝王切開で私を出産しました。その後、1か月以上の母子分離を余儀なくされました。今振り返ると、母との間にはどこか見えない壁があるような感覚があり、触れ合いや抱きしめられた記憶があまりありません。
このような経験からも、医原性の介入によって母子関係がどのように影響を受けるか、またそれをどのように補っていくべきかを考える必要性を強く感じます。
母親になるためのプロセスを支えるために
母親となるためには、時間とプロセスが必要です。そして、そのプロセスを支えるのが赤ちゃんとのスキンシップです。お母さんの触れる手やぬくもりは、赤ちゃんにとって何よりの安心のプレゼントです。スキンシップを通じて、お母さんと赤ちゃんは少しずつ絆を深めていきます。
今回お話をしたお母さんも、これからの育児を通じて、赤ちゃんの自然な求めに応じることができるよう成長されていくことでしょう。このようなケースでは、心理的な距離が無意識のうちに形成されることもありますが、それを乗り越える方法は必ずあります。
最後に
現代医学の進歩は、お母さんと赤ちゃんに多くの恩恵をもたらしました。しかし、それと同時に、医学的介入が母子関係や母性形成に及ぼす影響についても注意を払う必要があります。出産後のお母さんが赤ちゃんとの愛着形成を促進できるよう、助産師や家族、専門家が一丸となって支えていくことが大切です。
育児は挑戦の連続ですが、その中でお母さんも赤ちゃんも少しずつ成長していきます。赤ちゃんとの時間を大切にしながら、母親としてのプロセスを楽しんでいただければと心から願っています。